夕顔と生ハムのゼリーがけ

食のお宝探し vol.02

夕顔はウリ科の野菜。調理後は見た目も味も冬瓜に似ているが、生の夕顔は淡い黄緑色で縦に長いひょうたん型。熟すると1mにもなるものもあり、よい低音が響く楽器にでもなりそうな風体。 富山県・五箇山では、夕顔を独特のイントネーションで「ゆうご」と呼ぶ。水分が多く、火が通りやすいので手軽に調理でき、味噌汁やあんかけにして食べることが多い。

LIFESTYLE Dec 10,2021
夕顔と生ハムのゼリーがけ

富山県・五箇山。合掌造り集落にある築200年の宿「庄七」で料理を作り続けてきた、きよさんの料理は、郷土料理の極みのような存在。五箇山で秋に行われる法要、「報恩講」という、一年で最も大事な行事の際、各家庭で、自宅に集まる大勢の親戚に、旬の収穫物を中心とした食材で、心を込めて振る舞われる精進料理「報恩講料理」。きよさんは、この伝承のレシピをもとにした料理を宿泊客に提供し、これまで国内外の数多くの人が、その味に舌鼓を打ってきた。

そんなきよさんに教わった定番料理を、まだ夏の日差しが残る、日本の初秋に合いそうな透明なゼリーにアレンジしてみた。夕顔は厚めに皮をむき、ワタを取り除いて食べやすい大きさに。鍋にたっぷりの水と塩を入れ、夕顔を加え、沸騰したら3分ほど煮る。水を替え、再びひたひたの水に、出汁、醬油、みりんを2:1:1の割合で加え、生ハムを3、4枚入れ、3分ほどゆでる。あら熱をとり、水でふやかしたゼラチンを加え、冷蔵庫で冷やし固めたら、スプーンですくって器に盛り、仕上げに生ハムとすりおろした青柚子の皮をちらす。生ハムの塩味と旨味が、さっぱりとした夕顔ゼリーと合わさり、青柚子が香る爽やかな一品。お料理では「あんまり難しいことはしない」というきよさん、私のこのゼリーバージョンは、お口に合いますか?

KAORU×おばあちゃんの食の往復書簡

こちらは、きよさんが教えてくれた、本家本元の「ゆうごのあんかけ」。夕顔は皮をむき、ワタを取り除き、食べやすい大きさに切って、大きな鍋で水からゆでる。しばらくすると、やわらかくなるので、ここに鶏肉または豚肉、醬油、出汁など、普段の好みの調味料で味をつける(きよさんの言うところの「味をつける」という表現には、鶏肉や豚肉自体の風味も含まれるようだ)。最後に片栗粉でとろみをつけたら、ひと煮立ちさせ、鍋ごと冷やしてできあがり。

PROFILE
フードディレクター
KAORU

広告や雑誌などでフードスタイリングを手がける。写真の上に食品をのせ、撮影するシリーズ作品「Food On A Photograph」プロジェクトではN.Y.と東京の2都市で展示を開催した。

初出:2021年9月25日発行『AdvancedTime』09号。掲載内容は原則的に初出時のものです。

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