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英国の名門パブリックスクール、ハロウスクールの系列校が岩手県の安比高原に開校する――そのニュースは、年間900万円以上という学費と共に、驚きをもって伝えられた。『ハロウインターナショナルスクール安比ジャパン』(以下『ハロウ安比校』)は2022年8月の開校から3年が経ち、現在、27か国から310名の生徒がフルボーディング(全寮制)で学んでいる。2025年4月、ハロウスクール理事会のデイビット・イートン理事長が来日。ハロウ安比校のスティーブン・トン校長、ハロウ安比校Year10(日本では中学3年生)に在学する日本人生徒のナナツさんを交え、ハロウ安比校の3年間と、今後の日本でのハロウスクールの展望について、限られたメディアにだけ語ってくれた。
『ハロウスクール本校』は、1572年、ロンドン郊外に創立された。450年以上の歴史を有し、英国の名門パブリックスクール9校からなる“ザ・ナイン”の1校としても知られている。卒業生には、英国の元首相ウィンストン・チャーチル氏やインド初代首相ジャワーハルラール・ネルー氏、ノーベル物理学賞を受賞したジョン・ウィリアム・ストラット氏など、世界的に活躍する人物を多数、輩出。フルボーディングで、ハロウスクールが教育の根幹としている4つの価値観・勇気、名誉、謙虚、友情を体得していく。
名門『ハロウスクール本校』の系列校を運営しているのが、ハロウインターナショナルスクールだ。アジアで25年以上の実績があり、現在、12校を運営している。2022年8月には、岩手県八幡平市に10校目として、『ハロウ安比校』を開校した。Year7~Year13(11歳~18歳)の生徒を、世界中から受け入れている。東京ドーム2個分・約9万㎡の敷地内には、男女3つずつのハウス(寮)を有する、フルボーディングスクール。隣接している36ホールのゴルフ場と、パウダースノーで有名な安比高原スキー場を活用でき、スイスのボーディングスクールを想わせる自然環境だ。授業料と寮費、食費を含め、年間900万円以上という高額な学費ばかりが注目されたが、3年目をむかえ、ハロウスクールの伝統をどのように継承しているか、イートン理事長、トン校長、日本人生徒ナナツさんが、それぞれの視点で語ってくれた。
まずは、多くの質問が寄せられているという、『ハロウスクール本校』と『ハロウ安比校』の繋がりについて、イートン理事長から説明がなされた。
「系列校を開校する際には、ハロウスクールの伝統と価値観を大事にしてくれる土地を選んでいます。英国と日本は、思いやりの精神や伝統を重んじる点、質の高い教育への強い関心といった価値観が似ていると感じます。ハロウスクールの教育が目指しているところと、日本の文化や教育が大事にしていることには、親和性があると思いました。日本社会のグローバル化が加速し、国際教育のニーズが高まっているタイミングで開校できたことは、喜ばしいですね。
『ハロウスクール本校』と『ハロウ安比校』では、生徒の交流がオンラインでもオフラインでも活発に行われています。運営面では、年に2度、ハロウスクール理事会のメンバーが全ての系列校に視察に訪れ、ハロウスクールの全人教育が提供されているか査定し、足りていない部分があればサポートしています。また、系列校の教師のリクルートは、英国で行っています。日本の安比高原で暮らすということを理解してもらい、ミスマッチが起きないようにしています。安比高原ならではの環境に惹かれ、エントリーしてくる教師も多いですよ」
こうしたサポート体制の整った環境で、日本で初めてのハロウスクールの系列校として開校した『ハロウ安比校』。トン校長は、開校からの3年間を以下のように語る。
「ハロウスクールの4つの価値観・勇気、名誉、謙虚、友情を『ハロウ安比校』に根付かせることを重視してきました。また、ホリスティックエデュケーション(全人教育)を実現するために、質の高いアカデミックプログラムだけではなく、子供たちの視野を広げ、才能を伸ばすように意識してきました。そして、フルボーディングスクールだからこそ提供できるパストラルケアで、子供たちひとりひとりをケアしてきました。
予想より早く生徒の多様化が進み、『ハロウ安比校』での公用語の英語の重要性がいっそう高まったので、全員の英語力を上げることに注力しました。英語でのコミュニケーションを十分にとれるようになったことによって、4つの価値観、全人教育、パストラルケアを、学習と生活の中に浸透させることができました。また、八幡平市の自然豊かな環境は、ハロウ安比校ならではの経験をもたらしてくれていると感じています」
インターナショナルスクールに通っていたナナツさんは、ハロウ安比校開校時に入学。「12歳で入学した当時は、英国のリーディングレベルのテストで8歳相当でしたが、24時間英語に触れることで、14歳の今は、テストでも15歳相当まで英語力を伸ばすことができました。大変な時もありましたが、日本語も話せる教師がケアしてくれる環境なので、安心感がありました」と流暢な英語で答えてくれた。
「3年間で一番印象に残っているのは、ハウス(寮)対抗のイベントで、ダンス部門のリーダーを務め、15人のメンバーを率いたことです。舞台に立つのは緊張しましましたが、勇気を出して挑戦することができました。また、ハウスは縦割りになっているので、学年をまたいで交流する機会も多く、友情を深めることができたと思います」と充実した表情で語った。
生徒にフルボーディングの生活で、どう成長できたかヒアリングすると、「困難に直面することもあるけれども、挑戦をサポートしてくれる環境があり、自立心が育まれた、友人と一緒に乗り越えることで一生ものの強い友情が育まれた」という回答が返ってくると、目を細めるトン校長。
「フルボーディングでの教育は、学校との繋がりが強くなります。強固な基盤の中で学習と生活をすることで、自分の強みに気付けるのです。もちろん、友情も深まるでしょう」とイートン氏が同調すると、ナナツさんは「ハロウ安比校では、スキーやスノーボードなどのアクティビティを通じ、授業やハウスが違う友人とも触れ合え、友情を育むことができていると感じます。友人に教えてもらって、スノーボードでは360度回転もできるようになったんですよ」と嬉しそうに話してくれた。
AUTHOR
慶應義塾大学を卒業後、ラグジュアリーブランドに総合職として入社。『東京カレンダーWEB』にてライター・デビュー。エッセイスト&オーナーバーマンの島地勝彦氏に師事し、ウイスキーに魅了され、蒸留所の立ち上げに参画。ウイスキープロフェッショナルを保有し、酒類コンペティションの審査員も務める。公社)日本観光振興協会 日本酒蔵ツーリズム推進協議会 会員。
STAFF
Writer: Arisa Magoshi
Editor: Atsuyuki Kamiyama
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