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先日開催されたミラノメンズファッションウィーク。2026年秋冬シーズンに向けて発表された各メンズコレクションの中から、現代におけるテーラリングの可能性を追求する、ふたつのブランドを紹介する。
今年は6月20日よりスタートした、ミラノメンズファッションウィーク。先駆けてフィレンツェで開催されたピッティイマジネウォモ、ミラノ後のパリファッションウィークとともに、2026年春夏のメンズファッションのムードをひと足先に感じられる機会である。とくにミラノにおいては、モダンライフスタイルを踏まえたテーラードクロージングのチューニングが常にどこかから示されていて、興味深い。
“ブリオーニ”は長年「イタリア仕立て」の代表格として語られてきたが、同時に現代におけるテーラリングの最新形を提示し続けているブランドといえる。そんな“ブリオーニ”が標榜しているのが、「ソフト」というワード。そのソフトへの追求は、柔らかさ、軽さ、しなやかさ、そして快適さとして、各アイテムにおいて、卓越したテーラリング技術により具体化されている。
ミラノファッションウィークにて、プレゼンテーション形式で発表された“ブリオーニ”2026年春夏コレクションは、「ノンシャラン」という単語も引き合いに、ソフトの感覚を発展させた控えめで静かなエレガンスを表現している。ベージュ、サンド、ライトグリーン、 ブルー、ピンクといった彩度を抑えたナチュラルトーンが基調のコレクションは、イタリアの画家ジョルジョ・モランディが描いた穏やかな色彩の静物画に通じるものがある。
際立っていたのは、インナーのシャツとジャケット、さらにはトラウザーズまでが、先述のナチュラルトーンの色あいで揃ったスタイリング。ジャケットは幅広なラペルのダブルブレステッドとクラシックなスタイルながら、ダブルスプリッタブル仕立てなどを取り入れて、見るからに軽く柔らかな風合いを実現している。
このダブルスプリッタブル仕立てはシャツジャケットやコートといったアウターウエアでも展開されている。タイやスカーフなどをあえて使わない着こなしは、どこか微風を感じさせるような質感があり、“ブリオーニ”ならではの洗練を強く印象づける。
“ブリオーニ”がイタリアンテーラリングの現在を表現するブランドとするならば、英国における同様の存在は、“ダンヒル”といえるだろう。先般のミラノファッションウィークにおいて、ファッションショー形式で発表された同ブランドのコレクションは、場所や演出も含めてクラシックなエレガンスを打ち出しつつも、どこかリラックスしたムードを感じさせて、その巧妙なバランスから、現代的で新鮮なセンスが感じられる。
2025年春夏コレクションと同じく、ポルディ・ペッツォーリ美術館のプライベートガーデンにて開催された“ダンヒル”2026年春夏コレクションのショー。冒頭に登場したのは、“ダンヒル”の核ともいえる「モートリティーズ」、クルマに関連したアイテムを盛り込んだスタイル。ドライビンググローブやドライビングシューズがスーツやジャケットと組み合わされ、スエードやコットンシルク生地を使ったカーコートが登場した。
毎回巧みなレイヤードルックやアクセサリーづかいが“ダンヒル”の特徴だが、今回は従来にもまして、アイテムの組み合わせの妙味が際立っていた。ウィンドーペーンにギンガムチェック、タッターソール、そしてストライプ。クラシックな柄同士のコーディネートは、色あいやトーンを似た感じで揃えることで、絶妙な調和を見せていた。ちなみにチェック柄を組み合わせるスタイルは、ウィンザー公が好んだ着こなしでもあった。
またタイドアップスタイルも多く提案されていたが、ネクタイの多くがストライプ柄であったことも注目だ。英国にはもともとレジメンタルタイがあるが、ここでのストライプ柄は、所属などの意味をもたせたものではなく、他のアイテムの柄と組み合わせて、グラフィカルな効果を狙う感じになっている。ストライプ柄のスーツやシャツなどとの組み合わせは、柄の横溢が、タイドアップスタイルながら、どこか無造作で肩の力が抜けた雰囲気につながっている。
また、シャーベットカラーのブリーチドコットンデニムを使ったスリーピースや、18世紀調のフラワープリントが配されたウエストコートなど、オーセンティックなスタイルにカジュアル感を配剤したアイテムは、現代的なテーラードウエアのあり方として、多くの人にとって納得できるものではないだろうか。オーセンティックなメンズウエアのスタイルは決して退屈なものではない、“ダンヒル”のクリエイティブ・ディレクターを務めるサイモン・ホロウェイのそんな声が聞こえるようなコレクションだった。
STAFF
Writer: Yukihiro Sugawara
Editor: Atsuyuki Kamiyama
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