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いま注目されている「フォレスティエール」が大きくフィーチャーされた“ベルルッティ”の2026年春夏コレクション。ブランドのヘリテージを進化させるその姿勢は、先日リリースされたスニーカー「ステラー」からも感じられる。
先日のパリファッションウィークにて、プレゼンテーション形式で発表された“ベルルッティ”の2026年春夏コレクション。会場となったのはモンソー公園に面したシモーネ&チーノ・デル・ドゥーカ財団の建物。近年村上春樹がその名を冠した文学賞を受賞したことでも知られるチーノ・デル・ドゥーカは、イタリア出身でフランスとイタリアのメディア業界で大きな成功を収めた人物。彼の没後その遺産をもとに、妻のシモーネが財団を設立して、人文科学や芸術分野においてさまざまな支援を行い、現在に至っている。
昨年に続き、格式を感じさせる空間で展開されていたのは、サヴォアフェール(職人性)と“ベルルッティ”との連関を印象づける展示だった。オーダーメイドの際に使われた採寸やフットプリントのシートとともにディスプレイされた巨大な足の模型は、パリのシュールムジュール(注文靴)の靴店から始まった“ベルルッティ”が、いまなお顧客の足の快適性を第一とした靴づくりを追求していることを象徴している。
また、“ベルルッティ”のものづくりに欠かせない革のクリッキング(切り出し)の部屋をモチーフとした「コルドバの間」には、バッグや靴の素材であるフルグレインカーフとともに、その革を色鮮やかにパティーヌし、ブーツやバッグ状に切り出した無数のカラーサンプルがグラフィカルに配置されていた。そうした色へのアプローチは、次の部屋の、色とりどりのキャンディとともにディスプレイされた新作ポーチ「アンジュール・ドゥ・ポッシュ」につながっている。ブリーフケース「トゥジュール」の特徴でもある、ヴェネチアレザーと前面のジップポケット、そして独特な形状のレザー引き手が採用されたこのポーチは、「トゥジュール」同様に高い人気を博しそうだ。
そしてウエアで大きくフィーチャーされていたのが、2025年秋冬コレクションでも多く見られた「フォレスティエール」である。もともとパリ左岸のタイユール(テーラー)“アルニス”が狩猟地で働く人の服装から着想したジャケットは、「forestière(森林管理人)」と名付けられ、建築家ル・コルビュジエがオーダーしたことにより、その存在は広く知られるところとなった。その後“アルニス”は“ベルルッティ”の傘下となり、フォレスティエールはヘリテージとして、“ベルルッティ”において展開されることになった。
ところで、ここ数年の間、このフォレスティエールに近いスタイルの服が、世界各国のテーラーやデザイナーによっていくつも手がけられ、人気を博してきた。エフォートレスな装いが求められる風潮において、ジャケットやスーツのようなかしこまった雰囲気ではない、カジュアルかつエレガントなアウターとして、スタンドカラーでボタンフライ、芯材やパッドなどをあまり使わないこの種のアイテムが、注目されたといえる。もちろんフォレスティエールの存在とストーリーが、このトレンドに大きく作用していることも確かだ。
そんな状況での、“ベルルッティ”によるフォレスティエールの充実は、まさに満を持した趣がある。しかもそのシルエットやデザインなどは、適度なバランスにモダナイズされている。カラー(襟)部分や、ボタン周りの意匠などは、よりシンプルになり、さまざまな着こなしに対応できそうだ。2026年春夏コレクションでは、鮮やかなライラックカラーのリネンや、カシミヤ・ウール・コットン・シルク・リネンをミックスしたサマーツイードといった個性的な素材を使ったフォレスティエールが登場していた。
また、フォレスティエールを含む秋冬コレクションの本格展開に先駆けて、“ベルルッティ”から登場したのは、2019年に発表されたスニーカー「ステラー」のアップデート版。クリス・ヴァン・アッシュが“ベルルッティ”のアーティスティック・ディレクターを務めていた際にリリースされた「ステラー」は、スクエアトウの斬新なフォルムで注目された。今回のアップデート版では、スクエアトウは丸みある形状にモディファイされているものの、変わらず個性的な存在感を備えている。
大きく変化したのは、その着用感。より軽量になった一方で、かかとやつま先などにクッション性のあるパッドを配して、快適性を増している。さらに厚みあるソールも、かかと部が高密度になり、衝撃吸収力が向上することで、スムーズな歩行性に繋がっている。
アッパーはこげ茶の「マローネ・インテンソ」、深いブルーの「アビッソ」、そして「アイアン・グレー」の3色展開。いずれのカラーも“ベルルッティ”独自のパティーヌにより、独特な陰影が生まれている。この革の表情により、デニムからスーツまで幅広く着こなすことができる存在感が備わっている。この「ステラー」も、“ベルルッティ”のヘリテージや個性が、現代のライフスタイルを踏まえて進化した結果といえるだろう。
STAFF
Writer: Yukihiro Sugawara
Editor: Atsuyuki Kamiyama
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