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ロイヤルワラント――王室御用達を意味する認定制度で、とりわけ、英国王室御用達は日本人にも馴染み深いことだろう。英国王室御用達のルーツは、1155年にヘンリー2世が織物会社に与えた国王勅許状まで遡るといわれている。現在の制度では、英国王室に少なくとも5年間、商品やサービスを提供した企業のみロイヤル・ワラント・ホルダーズ・アソシエーションに申請することができ、その中から卓越した品質が認められた企業にロイヤルワラントが与えられている。チャールズ3世の即位後の2025年においては、高級ブランドから日用品まで600弱の企業や個人に対して付与されており、スコッチウイスキーも選ばれている。2025年7月には、チャールズ3世がウィリアム皇太子とキャサリン妃をロイヤルワラント授与者に任命し、注目度が高まっている。英国王室が愛したスコッチウイスキーを飲むという贅沢を味わってみよう。
「ロイヤルワラントのウイスキー」そう聞いて、まっ先に『ラフロイグ』を思い浮かべるウイスキー好きな方お多いのではないだろうか。チャールズ3世は、皇太子だった1994年に初めてラフロイグ蒸溜所を訪れ、その際にロイヤルワラントを付与した。『ラフロイグ』は皇太子時代のチャールズ3世から唯一、ロイヤルワラントを与えられたスコッチウイスキーなのだ。その後も、数回、スコットランドのアイラ島にある蒸溜所を訪れているというから、『ラフロイグ』の豊かな香味に魅了されているのだろう。新製品誕生時には、必ずご試飲いただくことが慣例となっていた。
チャールズ3世は、皇太子時代に、私邸であるハイグローヴ邸を冠したブランド『ハイグローブ』を設立。オーガニック食品や、ハイグローブ邸の庭園からインスピレーションを得たアロマ製品などオリジナルアイテムを展開し、収益はチャリティ財団に寄付されている。『ハイグローブ』からは、自ら買い付けた『ラフロイグ』を幾度かリリース。ボトルで1,000本もオーダーされた年もあるそうだ。
皇太子時代の紋章は、ダチョウの羽を3本あしらった、別名“平和の楯”と呼ばれる紋章で、『ラフロイグ』のボトルだけでなく、蒸溜所の建物の白い外壁にも掲げられている。“ラフロイグ”とは、ゲール語で“広い入り江の美しい窪地”を意味し、アイラ島の南部の海辺に佇む蒸溜所からは、きらめくさざ波と、心地よい潮風が愉しめるという。
『ラフロイグ』のフレーバーの特長は、薬品を思わせるヨード様のスモーキーな香りと、海藻を想わせるミネラル感が織りなすハーモニー。それには、いまでは数少なくなった伝統的なフロアモルティング製法と、アイラ島の1/4を覆うピート層を浸透してきた仕込み水が寄与している。
原料の大麦麦芽は、15%を蒸溜所でのフロアモルティングによりまかなっている。まず、大麦にピート層を浸透してきた水をたっぷりと含ませ、職人が8時間おきにすき返して発芽を促す。ほどよく発芽したところで、『ラフロイグ』専用ピートを12時間焚き、乾燥させて発芽を止める。ピートはアイラ空港近くの湿原にある専用ピートボグ(採掘場)から掘り出しており、ヒースとコケ類、海藻が含まれ、水分量が多いのが特長だ。次に18時間、ピートの熱とともに入り江から吹き込む潮風も取り込み、甘みを含んだ燻煙で『ラフロイグ』独自の大麦麦芽をつくりあげていく。
こうしてできた大麦麦芽は40~45ppm。力強いピート香を存分に味わうには、『ラフロイグ10年』がおすすめだ。熟成樽は、ほとんどが1stフィルのバーボン樽。ストレートで飲むと、バーボン樽由来の甘いバニラ、クリームのような滑らかさが感じられ、余韻のスモーキーさが引き立つ。爽やかにスモーキーさを味わいたいならハイボールで。立ちのぼるスモーキーな香りと、しっかりとしたミネラル感を味わえる。国王が愛したシングルモルトは、かくも懐が深いのだ。
ジョン・ウォーカーズ&サンズ社は、1934年に、英国王ジョージ5世からロイヤルワラントを賜り、以降、90年以上にわたりロイヤルワラントを保持し続けている。ジョン・ウォーカーズ&サンズ社のブレンデッドウイスキーとして、世界180か国以上で愛されているのが『ジョニーウォーカー』だ。1966年には、英国王室より『ジョニーウォーカー』輸出の功績を称えられ、『Queen’s Award for Export Achievement』を受賞。近年では、世界で1番売れているスコッチウイスキーとしても知られている。
ブレンデッドウイスキーというと、複数の蒸留所のモルトウイスキーやグレーンウイスキーをブレンドして造られるタイプが多いが、『ジョニーウォーカー グリーンラベル 15年』は、複数の蒸留所のモルトウイスキーだけをブレンドして造られている。世界的にも珍しいタイプのブレンデッドウイスキーで、ブレンデッドモルトウイスキーとカテゴライズされることもある。飲みごたえがあるのが特徴で、アルコール度数も43%と高めにしているのがこだわりだ。
『ジョニーウォーカー グリーンラベル 15年』のキーモルトとして、4角形のボトルにちなみ、スコットランド各地にある4つの蒸留所があげられている。スカイ島の『タリスカー』はスパイシーなスモーキーさを、スペイサイド地方の『リンクウッド』は瑞々しさを、同じくスペイサイド地方の『クラガンモア』は重厚な麦の甘さを、アイラ島の『カリラ』はミネラル感あふれるピート香を与えている。
『ジョニーウォーカー グリーンラベル 15年』には、ロイヤルワラントを賜っているシングルモルト『ロイヤルロッホナガー』も用いられている。ロッホナガー蒸留所は1845年にハイランド地方で創業。英国王室の夏の休暇地として使用されるバラモラル城から1.5kmの距離にある。1848年にヴィクトリア女王を蒸留所に招待すると、ロイヤルワラントを授与されたのだ。この僥倖から3年後、ロッホナガー蒸溜所はロイヤルを冠し、『ロイヤルロッホナガー』としてモルトウイスキーを生産してきた。上品な甘みとスパイシーさのバランスが秀逸な『ロイヤルロッホナガー』は、『ジョニーウォーカー』の原酒として重用されている。
個性豊かなシングルモルトをブレンドした『ジョニーウォーカー グリーンラベル 15年』は、爽やかな草の香りとウッディな深い香りのハーモニーが印象的。味わいは、フレッシュな青リンゴの甘みからスモーキーな余韻へと展開していき、深い森で焚火をしているような気分にしてくれる。複層的で力強い味わいは、ロックで飲むのもおすすめだ。
エリザベス2世がバルモラル城でご逝去され、新たにチャールズ3世からロイヤルワラントを授与されたジョン・ウォーカーズ&サンズ社。『ジョニーウォーカー』は、ロイヤルワラント共に、歩み続ける。
ジョン・デュワー&サンズ社は、1893年にヴィクトリア女王からロイヤルワラントを賜り、以降、約130年にわたりロイヤルワラントを保持し続けてきた。ジョン・デュワー&サンズ社のブレンデッドウイスキー『デュワーズ』といえば、“ダブルエイジ製法”によってもたらされる、なめらかなテクスチャーが特徴だ。初代マスターブレンダーであるA・J・キャメロン氏が1890年に考案した製法で、それぞれに樽で熟成したモルトウイスキーとグレーンウイスキーをブレンドした後、そのブレンデッドウイスキーを再び樽で熟成している。時間と手間がかかる製法だが、効率よりも味わいを重視し、130年以上にわたり継承し続けているのだ。
『デュワーズ』は、伝統を守り続けながらも新しいおいしさを追求しており、2006年に、7代目マスターブレンダーにステファニー・マクラウド氏を任命。『デュワーズ』史上、初の女性マスターブレンダーが誕生した。『デュワーズ 15年』は、ステファニー氏が初めて手がけた製品。印象的なのは、柔らかくもリッチな甘さ。これは、『デュワーズ』の5つのキーモルトのひとつである、『アバフェルディ』がもたらすフレーバーだ。『アバフェルディ』は蜂蜜のような甘いフレーバーが特徴のハイランド地方のシングルモルト。『デュワーズ 15年』には、15年かけてじっくりと熟成した『アバフェルディ』を贅沢にブレンドしており、熟した桃やココナッツのようなジュワっとした甘みが感じられる。
そこに、奥行きを出しているのが、『デュワーズ』の5つのキーモルトのひとつである、『ロイヤルブラックラ』だ。ブラックラ蒸溜所は、1812年に、インドの駐在武官をリタイアしたキャプテン・ウィリアム・フレイザー氏によってハイランド地方で創業した。シェイクスピアの戯曲『マクベス』の舞台として知られる、コーダー城の敷地内にある。1835年には、軍人として活躍したウィリアム4世によりロイヤルワラントを賜り、スコッチウイスキーとして初めて英国王室御用達の栄誉に輝いた。以後、ブラックラ蒸溜所はロイヤルを冠し、『ロイヤルブラックラ』としてモルトウイスキーを生産してきた。戦争やウイスキー不況などで稼動を停止していた時期も多いが、華やかなフレーバーが特徴の佳酒だ。
2022年9月のエリザベス2世のご逝去にあたり、エリザベス2世の紋章が掲げられた製品も、現在の流通分のみとなった『デュワーズ』。数年後には、エリザベス2世が統治した時代を偲びながら飲むことができる、貴重なボトルになっているだろう。
東京ステーションホテル The Tokyo Station Hotel
1915年に東京駅丸の内駅舎の中に開業し、壮麗な建築と当時最先端の設備で、国内外の多くの賓客から愛されてきた。東京で現存するホテルとして2番目の歴史をほこる。2003年に駅舎が国指定重要文化財となり、「重要文化財の中に宿泊できるホテル」に。2012年にリニューアルした際は、英国のデザインファーム・リッチモンドインターナショナルが内装を手掛けるなど、英国との繋がりも深い。2025年に開業110周年を迎え、創業150周年のLIBERTYとのコラボレーションを実施している。バーは、バー&カフェ『カメリア』と、オーセンティックなバー『オーク』があり、宿泊客以外も利用できる。
東京都千代田区丸の内1-9-1
03-5220-1111
https://www.tokyostationhotel.jp/
ウェッジウッド
1766年には英国王室に陶器を納入していた記録があり、英国王室御用達のテーブルウェアブランドの『ウェッジウッド』。
左/2025年7月、新コレクション『シグネット』を発表。ボウルをぐるっと囲むオーバル模様は、ウェッジウッドの伝統的なジャスパーカメオをイメージしたもので、シグネット(印章)を押したようなデザイン。『シグネット タンブラー』は細身のシルエットで、女性も持ちやすい。希望小売価格16,500円
右/『ネオ』コレクションは、ウェッジウッドの代名詞ともいえるストーンウェア『ジャスパー』へ正確な凹凸模様を施すために使われる“クヌーリング技法”をイメージした、モダンなライン模様が印象的。『ネオ タンブラー』は、ロックでウイスキーを飲む際におすすめ。希望小売価格11,000円
フィスカースジャパン株式会社
0120-973-826
https://www.wedgwood.jp/
●掲載商品の価格はすべて、税込み価格です。
AUTHOR
慶應義塾大学を卒業後、ラグジュアリーブランドに総合職として入社。『東京カレンダーWEB』にてライター・デビュー。エッセイスト&オーナーバーマンの島地勝彦氏に師事し、ウイスキーに魅了され、蒸留所の立ち上げに参画。ウイスキープロフェッショナルを保有し、酒類コンペティションの審査員も務める。公社)日本観光振興協会 日本酒蔵ツーリズム推進協議会 会員。
STAFF
Photos: Ayako Yokota
Writer: Arisa Magoshi
Editor: Atsuyuki Kamiyama
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