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ファッション業界では、“くすみカラー”や“ニュアンスカラー”というグレーかがった中間色のアイテムがコーディネートによく取り入れられている。その流れは時計業界にも及んできたようで、今年の新作では多くのニュアンスカラー文字盤を持つモデルを見ることができた。腕に着けるだけでお洒落に見えるカラー文字盤の最前線を見ていく。
ベージュ、エクリュ、グレージュ、トープ。これらは少し前からファッション誌ではお馴染みのニュアンスカラーと呼ばれる色合いだ。明度が低く、複数の色を混ぜたような、少しグレーがかった色調が特徴。女性ファッション誌では、「くすみカラー」とも「ミュートカラー」とも呼ばれ、ビビッドカラーとは対照的に、こなれ感のでる色合いとして着こなしの特集がよく組まれている。こうしたニュアンスカラー、いわゆる中間色を時計の文字盤に採用したブランドが今年は多く登場した。
時代によってトレンドはあるが、時計の文字盤カラーはシルバー、ブラック、ブルーあたりが定番だ。2,3年前のグリーン文字盤の流行が記憶に新しいところだが、主張のない色合いであるニュアンスカラーが今年は注目だ。これまでミッションウォッチを例に挙げるまでもなく、腕時計は時刻を読み取る視認性が重要で、文字盤と針のカラーでコントラストが出るはっきりとした色合いが好まれてきた。また一般的には文字盤やケースに光沢があると高級感を演出できるが、明度の低いくすんだカラーにはそもそも光沢がなく、高級感を出しづらい。しかし主張のある色合いや光沢感よりも、抑制の効いたニュアンスカラーはかえって上品に映え、スタイリングの相性が良いというも気づいたわけである。とりわけドレスウォッチにはうってつけの色合いといえる。
ただ、ニュアンスカラーはぼんやりした色合いなので、適度に引き締めるカラーと組み合わせたり、シルエットにメリハリを作ることが肝要だ。その点、ポリッシュやローレット加工されたベゼルでしっかりとメリハリを出すなど、各社はニュアンスカラーの特性を理解しているようだ。またニュアンスカラーは光沢のないマットな表情が基本なので、文字盤をさまざまな仕上げで質感を追求しているところも見どころとなっている。
時計業界でニュアンスカラーを積極的に取り入れているパルミジャーニ・フルリエ。独自のGMTウォッチにも、新たに淡いグリーン文字盤が追加された。このグリーンは、スイス・ティチーノ州にあるヴェルツァスカ渓谷に流れる川を表現したもの。抑制のきいた色合いは、本当にいいものを自分自身のための楽しみとして大切にするという、ブランドの「プライベート・ラグジュアリー」という考え方に通底する。
このGMT機能は、8時位置のプッシュボタンで重なっていたホワイトゴールドの時針が進み、ローカルタイムとホームタイムを同時に表示するというもの。ローカルタイムが必要なければ、3時位置のリューズと一体化したプッシュボタンを押せば、ローズゴールドのホームタイムの針と重なるために瞬時に戻るようになっている。この仕掛けから、仏語で「追いかける」の意味を持つ「ラトラパンテ」というモデル名が付いている。
グリーンの文字盤にはバーリコーン模様と呼ばれる繊細なギョーシェ模様が彫り込まれ、マットな質感に仕上げが印象的。ケース素材はステンレススティールだが、ベゼルはローレット加工が施されたプラチナ製だ。シルバー系の同じ色合いの高級素材をさりげなく組み合わせるところが、パルミジャーニ・フルリエらしさだ。
ロレックスの名声を築いた、初の防水腕時計、初代オイスターの直系である「オイスター パーペチュアル」。サイズ、文字盤カラーともバリエーションが豊富で、3針の王道モデルといえる時計だ。
今年は文字盤カラーにこれまでにない新色が追加された。ピスタチオ(グリーン)、ベージュ(イエロー)、ラベンダー(パープル)といったニュアンスカラーのカラーパレットが新たに加わった。これらのカラーは、6層のラッカーを塗り重ねているが、ややくすんだ色合いに見えるのは、マットな仕上げが施されているから。このおかげで落ち着いたトーンに仕上がっている。意外にもこのようなマットな文字盤は今までなかったという。
またサイズバリエーションのうち、41mmサイズはバランスが見直され、オイスターケースとオイスタークラスプがスリムになっている。
長年パテック フィリップで時計師として在籍していたローラン・フェリエが息子とともに立ち上げた実力派ブランド。古典的なスタイルにモダンなエッセンスを加えた時計作りが絶妙だ。ホライズンブルーと名付けられたライトブルーの新作もそのひとつ。パステルトーンに近い中間色はトレンドのニュアンスカラーといえる色合いだ。
2023年に同じようなライトブルー(アイスブルーと名付けられていた)の文字盤を持つ3針モデルの「クラシック・マイクロローター」という時計もあったから混同してしまうかもしれない。新作のホライゾンブルーの3針モデルは「クラシック・オート」から発表されている。
両モデルは、ケースフォルム、スモールセコンドの3針、ライトブルーの文字盤カラー、マイクロローター式自動巻きの採用で、見た目はほぼ同じ。異なるのは搭載するキャリバーで、ナチュラル脱進機を採用するCal.FBN229.01の「クラシック・マイクロローター」と、スイスレバー脱進機を採用するCal.LF270.01の新作の「クラシック・オート」で棲み分けができている。脱進機とは規則正しい往復運動するための時計の基本パーツだが、スイスレバー脱進機は一般的に採用されるタイプで、ナチュラル脱進機は摩擦を抑えることができより効率的に動力を伝達できる上位タイプといえる。
ホライゾンブルーの色調は、文字盤にブルーラッカーを重ねて仕上げたもので、はっきりとしたヘアライン仕上げと、スモールセコンドには何重にも円を描くサーキュラーグレイン仕上げが施されている。ローラン・フェリエの特徴でもある長槍を模した繊細なアセガイ針とドロップ型のインデックスの意匠で、シンプルながら個性的なデザインに仕上げた。スロープが設けられた日付の表示窓も独創的だ。
多くのブランドの文字盤カラーは、塗装など着色で色合いが表現されている。しかし今年H.モーザーは、素材そのものに色が付いた天然石を文字盤にしたコレクションを発表。ビルマ翡翠、トルコ石、珊瑚、ピンクオパール、ラピスラズリ、レモンクリソプレーズといった天然の色合いを持つ素材を文字盤に使用してポップに仕上げた。これらの素材はダイヤモンドなどの透明な宝石と比べ、不透明のハードストーンと呼ばれるもの。天然素材ゆえに個体差もあるが、H.モーザーは色の濃さや透明度を厳選して文字盤に採用した。
これらのなかでビルマ翡翠を採用した文字盤は、ニュアンスカラーといって差し支えないだろう。よく見ると天然石の風合いがあり、ユニークピースであることがわかる。スモールセコンド部分には象嵌で組み合わせたピンクオパールがはめ込まれ、コントラストをきかせたデザインに仕上げた。天然石を薄くスライスして、段差を付けた2枚を組み合わせるのは高い技術力も必要だ。ロゴやインデックスが一切ないコンセプト仕様で、時分秒の針だけのミニマルデザインの文字盤は、一見してH.モーザーとわかるのは時計通だけだが、上質さは誰にでも伝わるはずだ。
STAFF
Writer: Katsumi Takahashi
Editor: Atsuyuki Kamiyama
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