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格式高い名門も含め1500ものシャトーが ひしめく銘醸地。ワイン愛好家にとって垂涎の地、 「メドック」はその伝統と名声に甘んじることなく、躍進し続けている。
フランスの南西部ボルドーで、ジロンド河左岸の下流域に広がるワイン産地、 メドック。堆積した砂利や粘土石灰質の土壌でカベルネ・ソーヴィニヨンやメルロ、カベルネ・フラン、プティ・ヴェルドなどが栽培され、アッサンブラージュ (ブレンド)により長期熟成タイプのワインを造る。サン・テステフ、ポイヤック、 サン・ジュリアン、マルゴー、リストラック・メドック、ムーリス、オー・メドック、 メドック、の8つのAOC=アペラシオンのそれぞれに特徴がある。
ボルドーのメドック地区を訪れて美しく手入れされたブドウ畑や瀟洒なシャトーを眺め、そのテロワールの放つオーラに震えた経験をもつ人は少なくないだろう。 “水の中心”が語源である「メドック」 は、シャトー・ラフィット・ロートシルトやシャトー・マルゴーなどの1級格付けをはじめとした名門シャトーが立ち並ぶ、世界に名だたる銘 醸地。大西洋とジロンド河に挟まれて温暖に保たれる恵まれた気象条件のもとで、堆積した砂利の丘や石灰混じりの粘土質などブドウ栽培に適した稀有な土壌から珠玉のワインが生み出されてきた。
1855年に制定された格付け以来、高級ワイン産地の名声をほしいままにしてきたメドック。だがその真価は、伝統を礎にしながらも立ち止まることなく、最高品質のワイン造りを目指し新たな挑戦をし続ける気運にある。近年、メドック全域で目覚ましいのは、環境にも人にも負荷をかけない、サステイナブルなワイン造り。海洋性気候であるボルドーは降雨量も少なくなく、病害のリスクも高いこと から有機栽培は難しいとされてきた。しかし今、生物多様性を重視することで除草剤や化学肥料に頼らない栽培を行い、輸送に至るまでのあらゆる工程で温暖化ガス発生の抑制に努めるシャトーが急増している。
そんな果敢な造り手の筆頭が、格付け5級の「シャトー・ポンテ・カネ」だ。卓越したカベルネ・ソーヴィニヨンの産地として知られるポイヤック村でビオディナミ栽培をベースとしたワイン造りを始め、2010年に格付けシャトーとして初の認証を取得。天体の動きに合わせて農作業を行い、土に微生物が宿るよう、馬で耕作。選果や除梗は手作業、自 社畑の土を使ったアンフォラや発酵 槽は電子制御による温度管理を行わず、電気を使用しない醸造に挑む。 もちろん、いずれのプロセスにも大変な労力を要する。「このテロワールとそこから生まれるブドウに敬意を払い、そのポテンシャルを最大限に発揮するため」。父が始めた偉大なチャレンジを引き継ぎ、CEOとしてシャトーを統括するジャスティン・テスロンの言葉は軽やかだ。天と地の産物であるワイン、それを創り出すのは“人の手”にほかならない。
醸造責任者ジャン・ミッシェル・コムが推進したビオディナミ栽培を、天候不順や病害の困難に見舞われつつも貫き通し、飛躍的に品質が向上。自家製ハーブティーや牛糞を詰めた牛の角などを肥料とするため農園や牧場も有し、醸造所の建材も全て自社製。地熱を使用し自家発電で必要な電力をまかない、シャトーはひとつのコミュニティとして存在している。
33 250 Pauillac France tel: +(33)5 56 59 04 04
http://www.pontet-canet.com/fr/
醸造担当のオーロラ、栽培を担うレティシア、PR係のイワーナ、ラベルやパッケージをデザインするアーティストの友人ポリーヌ。メドック地区の北端にあるシャトー・ボワ・ド・ロックは女性たちだけでワイン造りを行う家族経営のワイナリー。「大抵のことは皆で話し合って決めていく。だから皆が納得のいく味わいに仕上がるのよ」。
33340 Saint Yzans de Médoc tel: +(33)5 56 09 09 79
https://www.chateau-boisderoc.com
メドックでもっとも知られた女性醸造家であり当主、カロリーヌ・フレイ。ボルドー大学の故ドゥニ・デュブルデュ教授に師事した才媛で、ローヌやブルゴーニュ、スイスのワイナリーをも統括するスーパーウーマンの活躍ぶりは華やかだ。一児の母でもある彼女はこうも語る。「次の世代にこのテロワールを財産として残したいから」。気負いのない笑顔は、娘と畑に向けられている。
33290 Ludon Médoc tel: +(33)5 57 88 82 77
http://www.chateau-lalagune.com
STAFF
Photos: Hiroki Taguma
Coordinate: Conseil des Vins du Médoc
Editor: Hiromi Tani
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