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今年、多くのブランドでラインアップに追加されたのが小振りサイズのモデルだ。従来モデルからサイズダウンさせ、装着感を向上させてドレス指向の高まりを感じさせた。
腕時計はサイズがたった数ミリ違うだけで、見た目の印象と装着感がガラリと変わってくるもの。そのためケースサイズは、時計選びの重要なポイントだ。
今年は従来モデルをサイズダウンさせた小径のバリエーションが多くのブランドから登場。ジェンダーレスを意識したケース径36mmあたりを狙ったサイズ感は、見た目もドレッシーで装着性にも優れる。40mmオーバーの大きな時計を着け慣れた男性でも新鮮な感覚を覚えるはずだ。
技術力の高いブランドは、小径のケースサイズに合わせて小さく、そして薄いムーブメントを搭載する。単にケースを小さくした小径モデルを追加というだけでなく、本腰を入れて開発してきたというのがわかる。
まずは、昨秋に発表したばかりの新コレクションに早くもひと回り小さいサイズの新作を追加したパテック フィリップから見ていこう。
2024年の秋、久しぶりの新コレクションとしてスクエアウォッチの「CUBITUS」を発表したパテック フィリップ。登場した3モデルはケースの直径が45mm(10-4時位置)にもかかわらず、SSモデルやSSXゴールドのコンビモデルにおいては8.3mmという薄さで大きさを感じさせないフィット感が特徴であった。その発表からわずか半年後に直径40mmのニューモデルが追加された。
新たに加わったのは、3針仕様のホワイトゴールド×ブルーグレー・ソレイユ文字盤とローズゴールド×ブラウン・ソレイユ文字盤の2種類。45mmバージョンのラインナップになかったゴールドケース&ブレスレットのモデルを40mm径で拡充させた。
この最新作は45mm径から5mmもサイズダウンしながらも、特徴的なスクエアフォルムにポリッシュとサテンの仕上げを使い分け、2ピース構造のケースの優美なプロポーションはそのままだ。搭載されるムーブメントは、5821/1AR,5821/1Aモデルと同じ自動巻きのCal.26-330 S Cを採用し、薄さもほぼ同じでスリムケースが腕によく馴染む。コンパクトになったことでより幅広い層から歓迎されそうだ。これ以上サイズダウンすると競合モデルも出てくるし凡庸になるので、40mmサイズで踏みとどまるのはパテック フィリップの慧眼といえよう。
リリースによるとミディアムサイズとのことだが、Ref.7128というリファレンス番号をみるとレディスモデルに属しているとも読み取れる。そういう意味からもジェンダーレスな一本ともいえそうだ。
アラビア数字にレイルウェイ・ミニッツトラックのオーセンティックなデザインを持つ1815シリーズに、ケース径34mmのコンパクトなモデルが加わった。
「1815」とは、創業者のアドルフ・ランゲの生まれた年に由来し、今年で210年目となる。38.5mmが現行モデルにラインアップされるが、今回新た追加された34mmと一緒にカタログに並ぶことになる。この34mmモデルはA.ランゲ&ゾーネでは史上最小のサイズとなるという。
スモールモデル愛好家に人気のリトル・ランゲ1ですら、ケースサイズは36.8mmだから大胆なサイズダウンだ。しかもレディスモデルというわけではなく、試着した男性たちから好意的に受け止められていた。34mmの小径モデルも男性に十分受け入れられることを証明するモデルとなるかもしれない。といっても、A,ランゲ&ゾーネが復興の間もない1995年に初出の「1815」が、ケース径35.9mmであったことを考えるとそれほど不思議ではない。
「1815」シリーズの3針仕様は、これまでケース径を35.9mm、40mm、38.5mmというサイズの変遷をたどってきたが、どの時代もデザインは不変でバランスがとてもいい。それはA.ランゲ&ゾーネが1モデル1キャリバーの原則に則っているからだ。この最新モデルでも、小径化のために新開発されたCal.152.1を搭載する。コンパクトになっても、4分の3プレート、青焼きのビス、ゴールドシャトン、ストライプの仕上げ、彫金が施されたテンプ受けなど、グラスヒュッテの伝統をしっかりと受け継いでいる。38.5mmモデルと比べ、ムーブメントをコンパクトにしながら、パワーリザーブが55時間から72時間へとスペックを向上させたのは、高い技術力を誇るA.ランゲ&ゾーネの真骨頂だ。
IWCの「インヂュニア」は2023年にフルモデルチェンジが行われ、巨匠ジェラルド・ジェンタが手掛けた第2世代の「インヂュニアSL」のデザインに回帰して話題を呼んだ。それを受けて、サイズ、素材、複雑機構の搭載へとバリエーションを追加した。
中でも注目なのが、新サイズだ。「インヂュニア」とは技術者を意味し、耐磁性能を有した時計として誕生したツールウォッチ。そのため厚く、大きいサイズのケースで展開してきた。しかし新作では前年の40mmサイズからケース径35mm、厚さも9.4mmというコンパクトな設計にまとまっている。実はIWCはジェンタデザインのインヂュニアをマイナーチェンジし続けて、1993年にはジャガー・ルクルト製ムーブメントを搭載した34mmサイズも発表している。そんなことを知っているといっそう興味深い1本だ。
35mmの新作は一体型ブレスレットやグリッド・パターン文字盤の従来のディテールを踏襲。しかし単純に小型化だけでは腕に載せたときの重心がずれて、必ずしも装着感は良くならない。そのためにデザイン性は損なわないようにすべてのディテールを見直して優れた装着感を追求した。
搭載されるムーブメントは自社製自動巻きのCal.47110。パワーリザーブは約42時間と現代ではやや物足りないが、スタイリッシュな薄型と35mmというサイズ感は手巻き時計にも似たずっと腕に着けておきたくなる魅力を備えている。
2025年はベル&ロスを一躍人気ブランドへと押し上げた「BR-01」シリーズの20周年目。コックピットに備わった計器類からインスパイアされた、スクエアケースに円形の文字盤を与えたデザインを基本に、「BR-03」、「BR-05」のシリーズへとコレクションの幅を広げてきた。
最新作では、ケース&ブレスレット一体型の「BR-05」に、従来の40mmからサイズダウンして36mmのケースサイズが登場。「BR-01」が46mmからスタートしたことを考えると隔世の感があるが、その変容は今なおトレンドの最前線にいることを意味している。
ケース小型化に合わせてブレスレットの幅も見直し、全体のプロポーションも再設計した。ブレスレットは幅が狭くなっても、程よくテーパードされ、ケースの厚みも8.5mmまで薄く抑えられているので、腕に乗せたときのフィット感は良好だ。小型化しても視認性だけは決して妥協しないベル&ロスらしく、時分針、数字やインデックスにはスーパールミノバが塗布され、暗闇での視認性を高めている。
ムーブメントには54時間パワーリザーブの新キャリバーを採用。ひと目でわかるデザインを保ちつつ、単なる縮小版ではないところがベル&ロスらしいところ。薄いケースで良好な装着感に仕上げているので、ジェンダーを問わず支持が広がりそうだ。
モンブランのダイバーズは、ケース内を無酸素状態にすることで、酸化を促す湿気を排除してパーツの劣化を防ぐとともに精度を維持する技術が採用されている。真空という訳でなく、不活性ガスで満たされており、その証明書まで付属される。
これまでケース径40mmオーバーをラインアップしていたが、今年は初めて38mmサイズが登場。ひと回りサイズダウンしたことで、女性にもアクセスしやすい新しい選択肢が加わった。
このモデルに個性を与えているのが、氷河を思わせる文字盤のグレーシャー模様だ。これはモンブラン山塊の氷河であるメール・ド・グラス(氷の海)からインスピレーションを得ていて、「グラッテボワゼ」と呼ばれる技法で氷の結晶のような直線的な模様を塗装で施した。新作ではシリーズ初のカラーリングとなるピュアホワイトが採用された。サイズダウンしてもISO6425規格に準拠したダイバーズとしての機能性を満たしている。
ステンレススティール製のブレスレットと文字盤カラーに合わせたホワイトのラバーストラップと選択が可能となっている。
レイモンド ウェイルの「ミレジム」は、時計界のアカデミー賞とも称されるジュネーブ・ウォッチメイキング・グランプリで2023年チャレンジ賞を受賞している。その特徴はヴィンテージテイストのデザインで、アワーマーカーで区切られたような文字盤は、1930年代に流行したセクターダイヤルで表現されている。
39.5mmで展開していたが、今年は35mmサイズが登場。34mmサイズが主流であったヴィンテージウォッチのサイズ感を強く意識した直径35mmのスモールセコンド、センターセコンド・モデルが多数登場。文字盤カラーもサーモンピンクやセージグリーンなどヴィンテージテイストが色濃い。デザインやカラーに加え、サイズ感まで再現性を高めて、レトロ感を演出する。
35mmモデルは、スモールセコンド仕様にカーフストラップを合わせた4種、センターセコンド仕様のブレスレットの2種が新作として追加される。
STAFF
Writer: Katsumi Takahashi
Editor: Atsuyuki Kamiyama
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