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今、世界を席巻しているイマーシブアート体験。東京・日本橋三井ホールでは、『クリムト・アライブ 東京展』が開催中です。黄金とエロスの巨匠の作品が巨大なスクリーンで躍動。光、色、音、香りが体を包み込み、ドラマティックにイマジネーションを刺激します。
誰もが魅せられてしまうからだろう、世界最強の資産とも称されるゴールド。その金を使って、女性たちを官能的に描き、没後、100年以上経った今でも私たちを魅了し続けているのが、オーストリア最大の画家であるグスタフ・クリムト。エゴン・シーレの師匠でもある。
現在、東京・日本橋三井ホールでは、黄金とエロスの巨匠の作品世界を旅する没入型展覧会「クリムト・アライブ」を開催中。注目のイマーシブアートシリーズの第3弾で、昨年、日本各地を巡回した「ゴッホ・アライブ」(第1弾)は、世界100都市以上、900万人超を魅了し、話題をさらった。続く、『モネ&フレンズ・アライブ 東京展』(第2弾)は今回と同じく日本橋三井ホールで開催された。
イマーシブアートとは「没入型アート体験」とも訳され、映像・音・空間演出を駆使した新しいアートの楽しみ方。「クリムト・アライブ」は「ゴッホ・アライブ」「モネ&フレンズ・アライブ」を手がけたオーストラリアの企画会社Grande Experiencesグランデ・エクスペリエンセズが企画・制作した新作であり、東京が世界初開催となる。
ローブで身体を包み込むように男性と女性がしっかりと抱擁し合い、親密な様子が伺える、クリムトの最高傑作と言われる「接吻(キス)」。
エピソードも有名な「アデーレ・ブロッホ=バウアーの肖像 I」。アデーレ・ブロッホ=バウアーの夫であるフェルディナンド・ブロッホ=バウアーの依頼で、クリムトが制作したものだが、戦時中、ナチスに盗まれ、2006年にようやくフェルディナンドの姪、マリア・アルトマンに返還された。『黄金のアデーレ 名画の帰還』(2015)はヘレン・ミレン主演で映画化されている。
同じくアデーレ・ブロッホ=バウアーがモデル。恍惚の表情の女性が男性の生首を持つ姿が衝撃的な「ユディト Ⅰ」。
背景を金色から灰色に変え、クリムト自身の老いと死への意識を感じさせる「死と生」。ウィーンのレオポルド美術館で気候変動問題に抗議する環境保護団体ラスト・ジェネレーションの活動家が黒い油性の液体をかけてニュースになった、こちらも曰く付きの作品だ。
これらの代表作を中心としたクリムトの作品群を、会場では光、色、音、香りの中で、全身で体感できる仕掛けになっている。名画の数々を縦横無尽、さまざまな角度から、浴びるように鑑賞する画期的な時間は全く新しいエンターテインメント。館内には7メートルの空間に巨大スクリーンを設置。鳴り響くクラシックの名曲と最新のイマーシブ技術を組み合わせ、芸術をより身近に楽しめる不思議な空間が作り上げられている。美術館では味わえない恍惚は保守的な時代にセンセーショナルな作品を提供し続けたクリムト自身がまさに追い求めていたものではないだろうか。
映像は彼の生まれ故郷であるウィーンの街から始まる。クリムトに多大なる影響を与えたジャポニズムなど、テーマによって分けられた展開はクリムトのバックグランドを理解しやすく、大きなスクリーンで見るからこそ、それぞれの作品によって違う筆の迫力、繊細さなど、肉眼での絵画鑑賞では気付けないような楽しみ方ができる。
金箔を多用した「黄金様式」はクリムトを象徴する表現様式。金細工師の父を持ち、ウイーン万博で日本から出品された尾形光琳の金屏風の「紅白梅図屏風」に強い衝撃を受けたというクリムト。彼の黄金時代の絵に私たちが惹きつけられてしまうのはもはや細胞レベルで組み込まれているものかもしれない。「ゴールドフェーズ」の作品は煌めく金が降り注ぎ、神々しいほど、輝いて見える。
風景画も興味深い。描かれた花や緑、水辺は絢爛豪華な人物画とは異なり、とても静かで穏やかな印象。ゆらめく水面の流れるような水、夢のように咲き誇る花。映像がフォーカスし、動き出すことにより、想像の限界を超え、より豊かなイメージが送り込まれる。
室内はすべて写真・動画の撮影が可能。映像の部屋のほかに「生命の樹」「接吻エリア」があり、フォトスポットも充実。「クリムトさんでAR」では会場内に設置されているQRコードを読み取って、URLをタップすると、愛らしいクリムトさんを観察できる仕掛けになっている。猫好きだったクリムトをフィーチャーし、猫を抱いている姿というのも抜け目ない。
余韻に浸りたい人にはミュージアム・グッズが充実している。トートバッグ、クリアファイルなど、クリムトの絵画の一部をクローズアップしたデザインは本展ならでは。名古屋発「カフェタナカ」のオリジナル黄金缶に入った「ビジュー・ド・ビスキュイ~KLIMT黄金缶~」も気になるが、立体的な猫のソープは想像力を刺激する展覧会にふさわしい迫力。アクリルキーホルダーとポーチのカプセルトイもある。
さらに「バー松 日本橋」では金箔を散りばめた、コラボオリジナルカクテルが登場。COREDO室町の飲食店舗では「クリムト・アライブ」の世界観をテーマにしたオリジナルメニューを提供。創作意欲が刺激された人には「能作 COREDO室町テラス店」とのコラボワークショップという意外な取り組みも。
「美しい」だけではない、「楽しい」「可愛い」が詰め込まれた匠もびっくりの新感覚の芸術鑑賞。体の外から中から金を取り入れて、運気上昇も期待できそう。
会期:2025年7月18日(金)〜10月5日(日)
開館時間:10:00〜18:00 ※最終入場は閉館の60分前まで
場所:日本橋三井ホール 東京都中央区日本橋室町 2-2-1 COREDO 室町1・4F
https://klimtalive.jp/tokyo/
MOVIE WRITER
髙山亜紀
フリーライター。現在は、ELLE digital、花人日和、JBPPRESSにて映画レビュー、映画コラムを連載中。単館からシネコン系まで幅広いジャンルの映画、日本、アジアのドラマをカバー。別名「日本橋の母」。
STAFF
Movie Writer: Aki Takayama
Editor & Composition: Kyoko Seko
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