
タブロイドマガジンAdvancedTimeをお手元に
サマータイヤとスタッドレスタイヤの性能を両立し、1セットで1年を過ごせるタイヤとして開発された「オールシーズンタイヤ」。その一方で冬タイヤとしては“凍結路に弱い”とか、サマータイヤとしては“乗り心地が悪い”など、いくつかのネガを抱え『完全なるマルチプレーヤー』と呼ぶには、役不足な存在とも言えた。それ故「降雪が年に1~2度の都市部に居住する人たちのもの」のように捉えられていた。そんなところに登場したのがダンロップ(住友ゴム工業)の「シンクロウェザー」と名付けられたオールシーズンタイヤ。その名の由来どおり「天候や路面状態の変化にシンクロして対応する」という画期的な技術を搭載したタイヤであり、1年を安心に過ごせると自信を示している。これが事実ならば、まさに理想の存在なのだが、果たしてどんなパフォーマンスを披露してくれるのか? その実力を探るために注意報レベルの降雪が続く、国道17号線の三国峠越えに挑戦した。
まだまだミニマリストに傾倒するほどの信念も決意もないが、都合のいい部分だけ“Simple is best”を気取りたい。そんな思いに至ったのは冬用タイヤの選択で悩んでいるときだ。本来ならば雪のない春から秋にかけてのシーズンは夏タイヤと呼ばれる「ノーマルタイヤ」を装着し、冬場は雪道や凍結路で本領を発揮する「スタッドレスタイヤ」に交換するのが最良だ。車のポテンシャルを安全に、そして最大限に発揮できる手段でもある。
ところが首都圏や中京都市圏、さらに大阪都市圏や九州南部など、冬場でもめったに雪の降らない地域に住むドライバーにとって、スタッドレスタイヤに交換することは色々な意味で負担になる。例えば夏タイヤ以外にもう1セット購入し、そのタイヤの保管、さらに秋と春にはタイヤ交換をしなければいけない。そうした負担を考えれば、ウインタースポーツにも行かず、めったに降雪地帯にも出掛けず、雪が降ったら車移動を諦める、といった決断ができれば、夏タイヤのままでも過ごせるかもしれない。
ただ、ここで覚えておきたいことがある。それは雪道や凍結路を、滑り止めを装着せず、ノーマルタイヤのままで走行することは「沖縄県を除く46都道府県の条例」に反する行為となり、道路交通法違反だ。当然ながら外出先で突然の降雪によって路面に雪が積もれば、チェーンを装着するか、そのまま車を置いて帰宅せざるを得なくなる。
そうした色々な懸念に対処する事を考えると、「高速道路冬用タイヤ規制」でも走行可能であることを示す「スリーピークマウンテン・スノーフレークマーク(以下、スノーフレークマーク)が与えられている「オールシーズンタイヤ」の存在が浮上してくる。冬専用のスタッドレスに比べればウエット性能は高く、ブレーキも効くし、ステアリング操作に対するレスポンスもいい。もちろん夏タイヤでは走れない圧雪路なども走行可能であり、1年を通して1セットのタイヤで過ごせる。冒頭のミニマリストを気取るならばオールシーズン一択が最善の選択かもしれないが、事はそれほど単純ではない。あのマイナンバーカードのように、利便性の陰には、同じだけの不都合が潜んでいる。
確かにオールシーズンならばタイヤ交換などいったストレスから解放される。ところが夏タイヤとしては、乗り心地が少し硬かったり、ロードノイズが高かったり……。一方で冬タイヤとしてのパフォーマンスをみれば「圧雪路はいいが、凍結路には弱い」というネガを抱えている。JAFによるツルツルの氷盤路での制動力テストでは「夏タイヤより少しマシ程度」という結果も出ている。その結果、凍結路では「推奨しない」とか「走行NG」といった評価が与えられている状況。もちろんタイヤのメーカーや銘柄によっても性能は異なり、必ずしもオールシーズンタイヤが劣っているということではないが、本格的な降雪や凍結路が日常の「雪国での使用には不向き」という認識が一般的だ。
そうしたオールシーズンタイヤの評価の中に登場したのが「天候や路面状態の変化にシンクロして対応する」という、画期的な技術を搭載したダンロップの「シンクロウェザー」だ。夏タイヤとしての操作性やブレーキ性能、快適性を備えつつ、冬になれば「凍結路でも使える」という、まさにオールマイティな性能を備えたオールシーズンタイヤだ。
投打二刀流で活躍するドジャースの大谷翔平選手をCMに起用して話題となっているダンロップの「シンクロウェザー」。オールシーズンタイヤの弱点を「アクティブトレッド」という新技術を搭載して克服。もしそれが事実であれば、まさに「二刀流」を実現したオールマイティな存在ということになる。ではいかにして“弱点克服”を成し得たのか?
ポイントはタイヤのゴム素材に「水スイッチ」と「温度スイッチ」という、ふたつのスイッチを組み込んだこと。といっても物理的なスイッチを入れたということではなく、ゴムの性質が「ある条件になると科学的に変わる」ことをメーカーは「スイッチ」と表現している。
例えば「水スイッチ」だが、トレッド面(路面と接する部分)が水に触れるとスイッチが入り、ゴム表面が柔らかくなる。それによって濡れた路面でのグリップ性能が向上。逆に乾燥するとポリマー同士が再結合してゴムの剛性が復活してサマータイヤと同レベルの剛性に戻り、ドライ路面では快適な乗り味を実現する。同時にそれは、一般的なスタッドレスタイヤが苦手としていた「ウエット路面でのブレーキング」や「剛性感の無さ」、「ノイズの大きさ」などといったドライ路面での弱点も克服したことになる。
つぎに「温度スイッチ」。夏タイヤは路面温度や外気温が下がるとゴムが硬くなり、路面とのグリップ力が低下する。ところがシンクロウェザーのゴムは低温になるとスイッチが入り、柔軟性を保ちながら雪上や氷上路面でも柔軟性を保ちながら路面をグリップする。これまで「圧雪路はいいが氷上性能は夏タイヤ並み」などと言われてきたオールシーズンタイヤだが、その“弱点克服”を成し遂げ、氷上での性能を大きく向上させたことになる。結果として「高速道路冬用タイヤ規制」でも走行可能な「スノーフレークマーク」だけでなく、氷上性能の基準を満たすことを示す「アイスグリップシンボル」も取得した。メーカーによればその氷上性能は「ひと世代前のスタッドレス以上」とも。もちろん常温になれば、一般的なサマータイヤと同レベルの快適な走りを保ちます。
このように水の有無や温度の変化に瞬時に対応できる新技術は「アクティブトレッド」と名付けられたのだ。さらにこのふたつのスイッチに加え、静粛性と排水性・排雪性を高いレベルで両立した新しいトレッドパタンを採用。二刀流どころかマルチプレーヤーとして、ドライ路面からウエット路面、そして圧雪路や凍結路までこなす、レスポンスのいいオールシーズンタイヤが実現した。ではその実力は? 2010年式MINIクーパー・クラブマン(前輪駆動)に装着されていたスタッドレスタイヤ(7分山ほど)を外し、「シンクロウェザー」の175/65R15サイズを装着。注意報レベルの降雪に見舞われた新潟を目指した。
AUTHOR
男性週刊誌、ライフスタイル誌、夕刊紙など一般誌を中心に、2輪から4輪まで“いかに乗り物のある生活を楽しむか”をテーマに、多くの情報を発信・提案を行う自動車ライター。著書「クルマ界歴史の証人」(講談社刊)。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。
STAFF
Editor: Atsuyuki Kamiyama
『AdvancedTime』は、自由でしなやかに生きるハイエンドな大人達におくる、スペシャルイシュー満載のメディア。
高感度なファッション、カルチャーに溺愛、未知の幅広い教養を求め、今までの人生で積んだ経験、知見を余裕をもって楽しみながら、進化するソーシャルに寄り添いたい。
何かに縛られていた時間から解き放たれつつある世代のライフスタイルを豊かに彩る『AdvancedTime』が発信する情報をさらに充実し、より速やかに、活用できる「AdvancedClub」会員組織を設けました。
「AdvancedClub」会員に登録すると、プレゼント応募情報の一覧、プレミアムな会員限定イベント、ブランドのエクスクルーシブアイテムの紹介など、特別なコンテンツ情報をメールマガジンでお届け致します。更に『AdvancedTime』のタブロイドマガジンのご案内もあり、送付手数料のみをご負担いただくことでお手元で『AdvancedTime』をお楽しみいただけます。
登録は無料です。
一緒に『AdvancedTime』を楽しみましょう!
vol.025
vol.024
vol.023
Special Issue.AdvancedTime×ROLEX
vol.022
Special Issue.AdvancedTime×ROLEX
vol.021
Special Issue.AdvancedTime×ROLEX
vol.020
Special Issue.AdvancedTime×ROLEX
vol.019
Special Issue.AdvancedTime×ROLEX
vol.018
vol.017
vol.016
vol.015
vol.014
vol.013
Special Issue.AdvancedTime×HARRY WINSTON
vol.012
vol.011
vol.010
Special Issue.AdvancedTime×GRAFF
vol.009
vol.008
vol.007
vol.006
vol.005
vol.004
vol.003
vol.002
Special Issue.01
vol.001
vol.000