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通常であれば群馬県と新潟県との行き来は関越自動車道の約10kmある「関越トンエル」を抜ける。国道17号線を走り、新三国トンネルを抜けての三国峠越えは一般的に利用頻度が低い。一方で、コーナーやアップダウンが連続するワインディングは1年を通して走行テストで重宝するルート。とくに今回のような雪道テストでは、標高差があり、温度や路面状態の変化が大きいため、恰好の試乗ルートとなる。
都内の一般路を走り、関越自動車道の練馬インターを抜け、群馬県の月夜野インターチェンジを目指す。この間に、ドライ路面でのフィールをチェック。市街地でも高速走行でも、全体として路面への当たりがソフトで、ドライ性能でいえば「満足度はかなり高い」。夏タイヤでもそれなりショックと音が発生する橋梁部の繋ぎ目も衝撃は少なく、スーッと駆け抜ける。夏タイヤとして3シーズン使用しているピレリ・チンチュラートP6と同等のレスポンス、乗り心地を実現していた。ただ1点、「約100kmは必要」と言われる“慣らし”が終わるまで気になるロードノイズはあったものの、しばらくすると自然消滅。それ以降の高速走行は快適そのものだった。
また、少々勿体ないと感じつつも外してしまったスタッドレスタイヤと比較すると、ブレーキングやコーナリングでの頼りなさもほぼ感じることはなかった。市街地から高速までの走行でストレスはない状態で快適な走行が続いた。ここまでの印象は“よくできたコンフォートタイヤ”といったところである。気が付くと周囲の景色は完全に冬景色、路肩にも雪が現れ、いよいよ国道17号線に降りて雪道である。
練馬インターチェンジから約130km、月夜野インターチェンジの標高は360mほど。路肩にも雪はあるものの、まだ路面はドライ状態。しかし気温はマイナス3度ほどと、陽の当たらないコーナーなどで凍結路が現れても不思議ではない。そして標高600mほどにある猿ヶ京温泉を過ぎると周囲は完全に冬景色へ。
標高約1000mの新三国トンネルに向けていくつものコーナーを抜けるに従い路面はウエットからシャーベット状へ、そしてあっと言う間に凍結路へと変化。しかしそうした路面状況の変化に対しても安定性とステアリング操作への反応もしっかりと維持されていて自然で、キッチリと“舵(かじ)が効く感覚”がある。もっとも気になる凍結状態の路面でも安心感はかなり高い。ブレーキングでもABSは時折作動するものの車の姿勢が乱れるようなことはなかった。
新三国トンネルを抜けると雪はさらに激しくなり、路面は完全な圧雪路へ。苗場スキー場から国道を下り、目的地の湯沢までのルートには新潟というか、豪雪地域と言われる魚沼地方の冬の路面が次々に現れる。ベチャベチャのシャーベット路から圧雪路、そして峠付近の凍結路、そして脇道の深雪などが波状的に出現するような状態。それでも「シンクロウェザー」はスタッドレス並に使えたのだ。少々気になったのはシャーベット状態でのコーナーで前輪が外側に少し滑る感覚(アンダーステア)があったが、それは速度域が高かったことが原因かもしれないが、それとてコントロールの範囲内だった。
また北海道や長野県などでよく見られる“ツルツルの氷盤路”、つまり「ミラーバーン」のような、摩擦が小さい路面でのテストまでは適わなかったが、「シンクロウェザー」は雪国新潟の圧雪路や凍結路で想像以上の適応力と実力を示した。もちろん、レジャーや仕事で雪国へ頻繁に出掛けるという雪道のヘビーユーザーにとって、夏タイヤとスタッドレスとの使い分けがいまも最善だと思う。しかし仮に、そうした人が「シンクロウェザーを選びたい」といっても「雪国の日常でも使えるレベル」にまでトータルバランスが引き揚げられているため、決定的な懸念材料が見つからない。「飛ばしすぎないで」というありきたりのアドバイスとともに、その選択を支持することになりそうだ。
AUTHOR
男性週刊誌、ライフスタイル誌、夕刊紙など一般誌を中心に、2輪から4輪まで“いかに乗り物のある生活を楽しむか”をテーマに、多くの情報を発信・提案を行う自動車ライター。著書「クルマ界歴史の証人」(講談社刊)。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。
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