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前編ではアートからスポーツまで、今のニューヨーク市を表現しているさまざまな場所を巡った。後編ではこの街の奥行きを感じさせる場所を訪ねる一方で、さまざまなアクティヴィティにも挑戦。意外な、それでいてより新鮮なニューヨークの魅力を追求していく。

ニューヨーク滞在2日目はアクティヴィティの体験からスタート。現在ニューヨーカーの間で流行しているというピックルボールの施設「CITY PICKLE in Times Square」が、ホテルから数分のところにあるという。アクティブウエアに着替えて、3月下旬はまだ肌寒いのでアウターを羽織り、徒歩で移動。クラシカルなエントランスのビルを上がると、ウェアハウス風な内装の広々としたフロアに、コートが複数設けられていた。
ピックルボールは、プラスティック製の中空のボールを、硬いパドルで打ち合う競技。卓球とバドミントン、テニスを元に1960年代にアメリカで考案され、コロナ禍の自粛期間中にSNSを通じて広がったといわれる。ルールの多くはテニスに準じているが、ボールスピードが緩やかで、強い打撃などが必要ないため、幅広い世代で楽しむことができる。ストレッチ後、施設側の簡単なレクチャーを受けて、早速実戦に。プレイそのものはすぐに馴染めるが、うまくポイントを取るのはなかなか難しい。気がつくと1時間が経っていた。そのゲーム性の高さと、適度なフィットネス感から、人気の理由がよく理解できた。(CITY PICKLE in Times Square)


その後、「Eataly SoHo」にて軽めのランチ。日本でもお馴染みのイータリーだが、ニューヨークでも定着していて、特にこのソーホーの店はゆったりとした空間が魅力で、気軽に、イタリア本場の味を楽しむことができる。中でもジェラートがとりわけ印象に残った。そして徒歩でソーホーの「Jackie Robinson Museum」へ。ひとりの野球選手を扱った博物館ということで、当初は意外な印象を受けたが、中の展示を見て納得した。ジャッキー・ロビンソンは初のアフリカ系アメリカ人のメジャーリーガーとして、4月15日の「ジャッキー・ロビンソン・デー」には全メジャーリーガーが彼の背番号42を付けて試合をするほどリスペクトされているが、野球選手の前には陸上競技やバスケットボール、フットボールなど多彩な競技でアスリートとして活躍し、ブルックリン・ドジャース退団後は公民権運動に参加し、アフリカ系アメリカ人の地位向上のために積極的に活動を行った。彼の軌跡全てが、アフリカ系アメリカ人、ひいてはアメリカの近代史において英雄的存在であり、現在のアメリカ社会の基盤形成に重要な役割を担ったのだ。このミュージアムはそのことを雄弁に表現している。とりわけ印象に残ったのは、ブルックリンにかつてあった「エベッツ・フィールド」を壁面いっぱいに描いた展示。ニューヨーカーの今なお衰えない(ブルックリン・)ドジャース愛を感じさせると同時に、現状への反骨心も垣間見える。それはまたジャッキー・ロビンソンが体現していたたゆまぬ挑戦の姿勢にもつながるように感じられた。(Eataly SoHo)(Jackie Robinson Museum)

ミュージアム観覧後は、ちょっと早めの夕食に。というのも、夜にはブロードウェイミュージカルの鑑賞が控えていたからだ。ブロードウェイから程近い「Gui Steakhouse&Prime Rib」は、ステーキハウス激戦地のニューヨークで注目されている、2025年オープンの比較的新しい店。韓国出身で、すでに自身の店でミシュランの星を得ていたシェフ、シム・ソンチョルが、満を持してオープンしたステーキハウスという。1階のバーからエレベーターで2階に上がると、照明を抑えた店内は広々と落ち着いた雰囲気。各所には韓国的な意匠も見られる。この日はスターターとしてサーモンタルタルとキャビアを乗せた牛カツサンド、そしてエイジングビーフのTボーンステーキとガルビ(カルビ)のショートリブをいただいた。ドライエイジングで風味を高めた肉を丁寧にグリルしたTボーンは、どこか繊細さを感じさせる。そして甘みのあるソースに漬けて焼いたガルビは、柔らかさと味わいがまさに韓国焼肉とアメリカンステーキの邂逅といえるものだった。それは日本人の舌には、新しくもうれしい味わいだった。(Gui Steakhouse&Prime Rib)

ワインとともにゆっくりステーキを味わいたいところを我慢して、ブロードウェイへ。この日観覧したのはThe Broadway Collectionでの公演『MJ:ザ・ミュージカル』。そのタイトルが示す通り、マイケル・ジャクソンについて描いたミュージカルだ。折しも映画『マイケル』が日本でも公開を控えて話題となっているが、こちらは1992年の「デンジャラス・ツアー」前のマイケルの様子を軸として、その半生をフラッシュバック的に回想する形になっている。マイケル・ジャクソンという存在が、歌と踊りで表現するミュージカルにうってつけなのは開演前からわかっていたことだったが、それでも目の前で繰り広げられるダンスの迫力には圧倒された。つい実物に似ているかといったことに目が行きがちだが、しっかりとしたストーリーと構成が、観客をミュージカルの世界観に捉えて離さない。「今夜はビート・イット」「ビリージーン」といった次々登場するヒットソングも手伝って高揚感とともに幕が下りたが、同時代人としては、これだけの豊かな世界を生み出せるとなったスターが、もはやこの世にいないということに、一抹の寂寥感が残った。(The Broadway Collection)(The Broadway Collection|MJ)

ニューヨーク滞在の後半は、「33 HOTEL」にステイ。このホテルが位置するサウスストリート・シーポートとは、マンハッタンの南端、フィナンシャルディストリクトの東側に位置するイーストリバー沿いの地域。かつては海運の基地だったこのエリアには、18世紀の古い建物が現在も多く残っていて、それを活かした再開発も行われている。この「33ホテル」も歴史的建造物をリノベーションしていて、赤レンガの外観と、モダンでミニマルなインテリアの客室のコントラストが魅力的だ。また、窓からブルックリンブリッジを望める客室もある。(33 HOTEL)

「33ホテル」チェックイン翌日は、早起きして「シティ・フィット・ツアーズ」が主催するウェルネスウォークに参加。今回はブルックリンのDUMBO地区を起点に、ブルックリンブリッジを徒歩で渡るというウォーキングツアー。ガイド兼インストラクターの方が先導し、周辺の解説などを聞きつつ、時折公園のベンチなどを使った軽いヨガを交えて橋へ。19世紀に完成し、アメリカでも最も古い吊り橋のひとつであるブルックリンブリッジは、現在も2層に分かれていて、上層はウッドデッキ状になっていて徒歩で渡ることができる。朝の空にくっきりと映えるマンハッタンの稜線を横目に、歴史ある橋を楽しむウォーキングは、ここでニューヨークでしか味わえない感覚といえる。トータル1時間30分程度でマンハッタン側に到着してツアーは終了。ウォーキングの後の、ホテルでの朝食はまた格別だった。(City Fit Tours)

そしてこの日の夜には、今回のNY滞在のフィナーレともいうべきアクティヴィティが。「New York Bateaux Premier Plus Dinner Cruise」は、ライブミュージックと共に、船上でのディナーを楽しみながら、ハドソン川を自由の女神周辺までクルーズするというもの。ニューヨークを何度も訪れたことがある人でも、マンハッタンの夜景を水上から楽しんだことはあまりないのではないだろうか。フィットネススポットとしても知られるチェルシー・ピアから、透明な側面と天井を持つスペシャルな遊覧船に乗り込み出発。美しくテーブルセッティングされた船内は、シックな装いの男女が多く、その雰囲気もまたNYらしいものといえるだろう。夕景から夜へと大きく表情を変える街の景色を見ながら、スターター、メイン、デザートのプリフィックスディナーをいただいた。しかしこの日の何よりのご馳走は、こぼれ落ちるように目前に迫るマンハッタンの夜景。その密度と生き生きとした存在感は、東京と比較しても圧倒的といえる。今回の旅は、ニューヨークという場所が実現する経験の価値を見出すことが多かったが、この眼前に広がる光景は、まさにその最たるもの、ニューヨークの人々による営みが重層することで生まれた美しさだった。そう感じると、いつまでも見飽きることはないようにも思えた。(New York Bateaux Premier Plus Dinner Cruise)
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『エスクァイア日本版』(エスクァイア マガジン ジャパン)編集部を経て、『メンズプレシャス』(小学館)などでメンズファッションやデザインプロダクト、カルチャー等の企画を担当。それらの傍ら、紳士靴の雑誌『LAST(ラスト)』を創刊し編集長を務める。現在は『Advanced Time』本紙とオンラインのほか、さまざまなメディアにて、ファッションやライフスタイル分野でエディターまたはライターとして活動している。
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Writer: Yukihiro Sugawara
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