ロイヤルの気品、アスリートの美筋、無邪気な笑顔のニコラス・ガリツィン。完全無欠な年下彼氏の妄想に浸る

英国一の美男子を演じてイケメン俳優の名を不動のものに

実は先日、30歳の誕生日を迎えたばかりのニコラス、意外とキャリアは長い。とはいえ、今やハリウッドは止まらない高年齢化。日本ではAppleTV+での配信のみとなったが、先ごろ、公開された63歳のジョージ・クルーニー×60歳のブラッド・ピット、イケオジ二人の主演作『ウルフズ』は続編も企画されている。

30歳で十分、フレッシュ。ドラマシリーズ「メアリー＆ジョージ　王の暗殺者」はあの曲者オスカー女優、ジュリアン・ムーアの胸を借りたW主演作。ジュリアン・ムーアが野心的で策略家の母親メアリーに扮し、ニコラスはその息子。彼女の指示によって、容姿を武器に出世階段を一気に駆け上り、王の恋人となる“英国一の美男子”と称された初代バッキンガム公、ジョージに扮している。

原作は歴史ノンフィクション「The King’s Assassin：The Secret Plot to Murder King James I（原題）」。ジェームズ1世とその恋人と言われた初代バッキンガム公、ジョージ・ヴィリアーズの深い関係、そして王の死の真相という史実に基づくスキャンダルを徹底検証している。

17世紀、ジェームズ1世が統治する時代のイングランド。地主階級のメアリー・ヴィリアーズは長男ジョンに精神疾患があることから、相続権のない容姿端麗な次男ジョージをフランスに送り、裕福な女性と結婚させようと目論んでいた。フランスに渡ったジョージは同性愛に目覚める。ジェームズ1世が若い男性に目がないことを知ったメアリーは息子を国王の愛人にしようという大胆な計画を企てる。帰国したジョージは、母の導きのもと、王の寵愛と信頼を得て、枢密院メンバーにまで上り詰めるが……。

ドラマでは「あなたの容姿があれば、世界を支配できる」と母が息子を奮い立たせるが、身一つでバッキンガム公の称号を得た実在のジョージ・ヴィリアーズとはどんな人物だったのだろう。王が一目惚れするほどなのだから、相当な美男であったに違いない。ニコラスの完璧なルックスがドラマティックな展開に説得力を与える。

眼福の極みに加えて、緩急のある情感の表現力に引き込まれる

ミュージカル映画『シンデレラ』（21）で王子役を務め、溢れ出んばかりの気品で若い世代を魅了したニコラス。アメリカ合衆国大統領の息子とイギリスの王子のロマンティック・コメディー『赤と白とロイヤルブルー』（23）では現代の王子役も務めた。同性愛カップルを描いた、この作品は続編が決まっているほどの人気作品。同性からも関心を寄せられることになったニコラスだが、本人はストレートだそう。特権階級の高貴な役どころが自然と似合ってしまうムードから、父方の祖先はロシアの貴族家系ガリツィン家だという、まことしやかな噂が飛び交っている。

「メアリー＆ジョージ」は初心なジョージと複雑な性格のジェームズ1世、さらに王の長年の愛人、サマセット伯爵といった男性３人のドロドロした愛憎三角関係も見もの。大胆で赤裸々なセクシュアルなシーンが多いことから、インティマシー・コーディネーターが参加している。誰もが見惚れるニコラスの肢体は眼福の極み。

鍛えられた肉体は子どもの頃からサッカーやラグビーに慣れ親しんできたスポーツ少年だったから。怪我で断念し、俳優の道へ。Netflix映画『パープル・ハート』（22）でも海兵隊員らしい逞しい筋肉美を披露している。

見掛け倒しではなく、卓越した表現力もニコラスの強み。ハリウッドでイギリス人俳優が重用されるのは彼らの高い演技力にある。ニコラスも例に漏れず、母親役のジュリアン・ムーアも「ニックは素晴らしい才能がある」と太鼓判を押す。

ドラマを通じて描かれるのは、母の入れ知恵で、家族のために立ち上がった、野心など一切なかったピュアな青年の成長と堕落、成功と没落。終始一貫してあっぱれなジュリアン・ムーアの毒母に唆され、次第に悪に染まっていくジョージをニコラスはグラデーションな演技で見せる。ドラマの展開と共に大きく変化していくジョージそしてニコラスに視聴者は感情移入せずにいられない。

才色兼備で海外では既にブレイク中。今後はヒュー・ジャックマンと共演するコメディ映画『Three Bags Full: A Sheep Detective（原題）』など、3作が控える。ヒーロー映画『Masters of the Universe（原題）』では主人公のヒーマンことエターニアのアダム王子役に。マッチョな王子というピッタリな配役に期待が高まる。そして、「千夜一夜物語」にインスパイアされたフェミニスト童話の映画化『100 Nights of Hero（原題）』では遊び人の友だち、マンフレッド役にキャスティングされており、これまたセクシーな魅力が爆発しそう。

新星ニコラス・ガリツィンの快進撃は日本で停滞気味のハリウッド人気の突破口となるのか。華々しい活躍から今後も目が離せない。

『メアリー＆ジョージ　王の暗殺者』

【配信】「スターチャンネルEX」 （https://www.amazon.co.jp/channels/starch）
　　　＜字幕版・吹替版＞独占配信中  毎週水曜、１話ずつ更新
【放送】「スターチャンネル」独占放送
＜字幕版＞毎週火曜23時ほか　＜吹替版＞毎週木曜23時ほか

公式サイト：https://www.star-ch.jp/drama/maryandgeorge/1/

PROFILE

俳優、ミュージシャン

Nicholas Galitzine

ニコラス・ガリツィン／Nicholas Dimitri Constantine Galitzine　俳優、ミュージシャン。1994年9月29日生、英ロンドン出身。 18歳の時に初めて受けた映画のオーディションに合格。2014年、映画『The Beat Beneath My Feet（原題）』でデビュー。16年、ダンス映画『ハートビート』でバイオリニスト、アイルランド映画『ぼくたちのチーム』でラグビーのスター選手を演じた。21年、カミラ・カベロ主演の実写版『シンデレラ』（21）の王子役でブレイク。アン・ハサウェイが主演と製作を兼ねた『アイデア・オブ・ユー　大人の愛が叶うまで』（24）では相手役を務めた。俳優のほか、歌手・ミュージシャンとしても活動する。

MOVIE WRITER
髙山亜紀

フリーライター。現在は、ELLE digital、花人日和、JBPPRESSにて映画レビュー、映画コラムを連載中。単館からシネコン系まで幅広いジャンルの映画、日本、アジアのドラマをカバー。別名「日本橋の母」。