──JNOという楽団は、活動の初期段階が経過したと思うのですが、現時点で反田さんはJNOをどのような楽団にしていきたいとお考えですか。サウンド面なども含め、ヴィジョンはどのようなものですか。

反田:僕はウィーンフィルを目指しています。ベルリンフィルも好きですが、今ウィーンにいるということもありますし、そもそもウィーンフィルが特に好きなのです。今年のニューイヤーコンサートの中継に出演しましたが、そのときにウィーンフィルの団員の方々と改めてお話しする機会をいただいて、ウィーンフィルがどういうシステムで運営しているのかなど、(団員の)直の言葉で聞けて非常に勉強になりました。彼らは完全な自主運営で、もともとは歌劇場の楽団員で、そこから推薦され、さらにオーディションを経てウィーンフィルが出来上がっていて、我々もそういう形をとりたいと思っています。メンバー自身が楽団のことを考えてこういう風にしていこうと行動する、自主性のあるオーケストラ。でもそれは結局、純粋に音楽を楽しむ場をつくりたいだけなんです。僕がこうやってオーケストラをやっているのは、みんなと楽しく演奏したい、それだけです。

──ウィーンを拠点にされているということですが、どのような活動をされているのですか。

反田:ショパンコンクールが2021年に終わって、ありがたいことにいろんな地域に呼ばれて、演奏活動が増えました。ヨーロッパではドイツの事務所と契約をしてさらに幅が広がっていく感じで、ウィーンは拠点ですが、それは勉強のため、音楽を吸収したくてウィーンにいるだけで、活動としてはワールドワイドです。ウィーンにいるときは、いい音楽を聴くことに専念します。最近の一例としては、初日にウィーン交響楽団を聴いて、次の日に佐渡さんが振っているトーンキューストラー交響楽団を聴いて、その翌日にウィーンフィルを聴く、みたいなことを一週間やっていたり。そういう風に過ごしているだけでも、オーケストラの語り口といいますか、ニュアンス、大阪弁の「なんでやねん」みたいな独自の言葉遣いが(それぞれの楽団に)わかってきます。さらにはシュトラウスの語法だったり、ワルツのそれもあったり。そういったことは教えてもらうのではなくて、自分で技術を盗みにいくというのが大事だと思っていて、とにかくコンサートに行くべき、と今は思っています。

指揮のレッスンは、先日亡くなってしまった先生に1回5~6時間のレッスンを受けていました。新しい先生をいま探している最中です。これに関しては日本で習うことがあったりとか、その都度考えていきたいと思っています。実はウィーンでも指揮の仕事をいただいていて、モーツァルトのレクイエムを振る予定です。そういうこともどんどん挑戦したいと思っています。

──ピアニストとして演奏することと、指揮者として音楽に取り組むこと、共通点や差異について、お聞かせください。

反田:不思議なことに、これが似ているんです。オーケストラに僕のイメージを伝える方法のひとつとして、頭の中でピアノを弾くんです。さらにいうと、頭の中でオーケストラを弾く感じです。相当大変ではありますが、頭の中で演奏すると、(指揮の意図がオーケストラに)伝わります。ですので、やっていることは、(ピアノ演奏も指揮も)あまり変わらないのかもしれません。その一方で難しい点を挙げるとするなら、一瞬の邪念でも浮かんでしまうと、オーケストラにそれは伝わってしまいます。集中力を全体的に切らすことなく、あとはアイコンタクト、僕を見ろ、僕を信じてくれという、「引っぱる力」が指揮者には絶対必要ですね。

──現在、音楽をとりまく環境が大きく変わっている中で、音楽の聴き方や聴く場所に関して、どのようにお考えですか。

反田:場所に関しては、楽器があればそこがステージだと思っているので、あんまりこだわりはありません。日本はちょっと室内にこだわりすぎているところがありますね。その点はもっと(自由に)やっていけたらなと思いますね。僕自身は東大寺など奈良の文化遺産や世界遺産などでも演奏したりして、世界に発信するようなことをこれからやっていこうと思っています。日本には素晴らしい文化があって、日本に生まれたからこそ、それを伝えていかなければならないと思っています。

あと、これはさまざまなところで言っているのですが、やはり僕は(クラシック音楽に関する)アプリをつくりたい。そこで全てを見られるようにしたいし、決済などまで全てをできるようにしたい。僕が飛行機に乗ることが好きになった理由はマイレージでした。マイルを貯めたらいい席に交換できたり、そういう恩恵があるのが良かった。コンサートは、勉強しにきたり、安らぎだったり、ストレス発散だったり、聴く人によっていろいろなストーリーがあって、それは他に代えられないかけがえのないものですが、でもそこに何かプラスになるようなものが、あってもいいのではと思いますね。5回コンサートに行ったら1000円割引とか、A席がS席にランクアップできるとか。エアラインで可能なら、コンサートでもたぶんできると思うんです。僕はスーパーにもよく行きますが、ポイント還元とか好きですし。そうした身近にあることが、クラシック音楽の世界ではできてないのが現状なので、それを持ち込みたいのです。

──話は変わりますが、クルマ好きの反田さんにとっても、BMWは推しのブランドということですが、惹かれる理由を教えてください。

反田:前提として僕の過去のストーリーがあって、父親が乗っていたのは別のメーカーのクルマでしたが、あんまり好きじゃなかったんです。父が休日ドライバーだったこともあってか、山道とかで気分が悪くなったりと、苦い思い出がありました。その後留学していた時に先生が乗っていたクルマがBMWだったり、お世話になっている方がBMWをお持ちだったりして、BMWに乗せてもらうことが多くて、乗り心地が良くすごく気に入りました。尊敬している方が乗っていたりもしたので、自然に将来BMWを乗ってみたいという気持ちになりました。

反田恭平さんとBMWの画像

──ちなみに車内で聴かれる音楽というのは、どのようなものですか?

反田:8割はいま勉強しているもの、いま取り組んでいる作品を聴きます。クルマで譜読みをしている感じですね。何回も聴いて、指揮台に立つ時やピアノの椅子に座る際に、譜読みが楽になっていく過程をあらかじめつくっておく感じです。それと、実は(ドライビングが)僕の唯一のストレス発散法になっていて、30分あれば、ちょっと東京湾を周回して帰る、という感じです。その車内で、近所迷惑にならない程度の大音量、勉強になるレベルの音量で聴いています。残りの2割は、サブスクリプションなどで世界のトレンドみたいなものを、Jポップだったりヒップホップだったり、いろいろなものを聴いています。

反田恭平さんとBMWの画像
PROFILE
ピアニスト、指揮者、経営者 反田 恭平
ピアニスト、指揮者、経営者
反田 恭平

2021年にポーランド・ワルシャワにて開催された第18回ショパン国際ピアノコンクールで、日本人として歴代最高位である2位に入賞。ピアニストであると同時に、気鋭の楽団「ジャパン・ナショナル・オーケストラ(JNO)」を率いる、指揮者であり、社長でもある。

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