日本独自のラグジュアリーの創造へと向かう、“MIZEN”とは

昨年、東京・青山に路面店をオープンした“MIZEN(ミゼン)”。「きもの文化」を支えた手織物の伝統をベースとした、新たなラグジュアリーブランドを志向するこのプロジェクトは、日本のものづくりが次なるステージへとステップアップする契機となるかもしれない。

FASHION May 16,2023
日本独自のラグジュアリーの創造へと向かう、“MIZEN”とは

ヨーロッパのラグジュアリーを知るデザイナーが手がける、現代的な装い

“MIZEN(ミゼン)”とは、デザイナー寺西俊輔氏と陳 千慈氏が手がけるブランド“ARLNATA(アルルナータ)”と、ふるさと納税サイト「ふるさとチョイス」を運営するトラストバンク、その創業者である須永珠代氏が創設したアイナスホールディングスの3者が協業し、設立したプロジェクト。日本の伝統技術を担う職人たちが主役となる、新しい形のラグジュアリーブランドを目指している。2022年12月には、東京・青山に初のリアルショップをオープンした。

MIZENとARLNATAの画像
東京・青山の根津美術館近くにオープンした“MIZEN(ミゼン)”青山本店。一枚板のテーブルが印象的な、ギャラリー機能も備えた1階と、2階では“ARLNATA(アルルナータ)”がディレクションを務めるさまざまなアイテムが展開されている。提案されている反物から、オーダーすることもできる。

“MIZEN”の服づくりを担うデザイナー、寺西俊輔氏は、京都大学建築学部卒業後、“YOHJI YAMAMOTO(ヨウジヤマモト)”勤務を経て渡欧。“CAROL CHRISTIAN POELL(キャロル・クリスチャン・ポエル)”や“AGNONA(アニオナ)”といったブランドでパタンナーやデザイナーの経験を積んだ後、“HERMÈS(エルメス)”にてデザイナーとして働いた。2018年に帰国後、きものに使われる織物を和装・洋装双方で使うブランド“アルルナータ”を立ち上げている。紬など日本独自のテキスタイルを、反物の形状を活かしながら、ニットやジッパーといった異素材とも組み合わせるなど、伝統を尊重しつつ斬新な服づくりを実現している。

そして先日4月に発表された“MIZEN”プロジェクト第一弾「MIZEN PROJECT Vol.1 –MIZEN BLUE 「勝」SHO-」では、本場大島紬「枡屋儀兵衛」による華絣(はなかすり)のオリジナル柄「勝」を使って、『アルルナータ』がプロデュースしたメンズ&ウィメンズウエアが提案されていた。泥藍染の深みあるブルーに、緯糸だけでつくる絣模様である華絣によるグラフィカルな柄が、服のシャープなパターン&カッティングと併せて、モダンな雰囲気を生み出している。その一方で『アルルナータ』で使われている螺鈿織などがディテールに配されていて、日本のクラフツマンシップの粋も盛り込まれている。

メンズシングルレイヤーコートの画像
MSPC01 本場大島紬(枡屋儀兵衛)MIZEN BLUE「勝」~SHO~ 華絣「勝」 メンズシングルレイヤーコート+総螺鈿織[矢羽根] 990,000円(オーダーメイド、総螺鈿織オプション代242,000円を含む)
レディスアシンメトリックフレアスカートとレディススラッシュブルゾンの画像
JFLS01 本場大島紬(枡屋儀兵衛)MIZEN BLUE「勝」~SHO~ 華絣「勝」 レディスアシンメトリックフレアスカート 363,000円・JSLB01 本場大島紬(枡屋儀兵衛)MIZEN BLUE「勝」~SHO~ 華絣「勝」 レディススラッシュブルゾン 374,000円(全てオーダーメイド)
華絣の画像
経緯絣で柄が構成されている「華絣」は、小さな花の縦模様を考案したのがその最初という。主に緯糸だけでつくる絣模様なので、大きさや配列を比較的自由に変えることができ、新しい柄をつくることが可能となった。今回の華絣「勝」は、華絣をベースに泥藍染を施し、今回のテーマ「勝ち色」として、等間隔に入った経緯糸に赤と黄色を摺り込んでいる。

伝統の技術に根ざしながら、新たなクリエーションを目指す

また、今回のプレゼンテーションでは、奄美大島在住の木工アーティスト寶園純一(Junichi Hōzono)氏による、大島紬の糸の染色から着想された「光の泥染」と題した“MIZEN”とのコラボレーション作品も展示されていた。「木から教えられて削る」という寶園氏の言葉通り、独創的ながらもどこか自然な存在感の作品は、紬の糸そのものが持つ陰影を巧みに表現していた。また作品と併せて1点もののアクサセリーも展開されていて、今回のプロジェクトの服と共鳴していた。

MIZEN PROJECT Vol.1 –MIZEN BLUE「勝」SHO- 本場大島紬×Junichi Hōzonoの作品の画像
MIZEN PROJECT Vol.1 –MIZEN BLUE「勝」SHO- 本場大島紬×Junichi Hōzonoの作品(展示は5月末まで)。

今回の「MIZEN PROJECT Vol.1 –MIZEN BLUE 「勝」SHO-」を皮切りに、定期的に日本の産地、またはアーティストとコラボレーションした取り組みを発表していくという“MIZEN”。日本の伝統をベースとした新たなラグジュアリーの形は、海外の人たちだけでなく、日本人にとっても、実に新鮮に映る。

お問い合わせ先
MIZEN
https://ec.mizenproject.co.jp/
ARLNATA
https://arlnata.com/

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