岩手県内最古であり、最も“新しい”酒蔵「菊の司酒造」とは

2022年に創業250周年を迎えた岩手県最古の酒蔵「菊の司酒造」が、盛岡市から雫石町へと移転。同年11月からは最新の設備が整った新工場にて酒造りをスタートさせた。本州一の寒さ、清らかな岩手山の伏流水、丁寧な仕込み。長い歴史の中で培ってきた技術をもとに、チャレンジを繰り返す酒造りとは、いかなるものか。現地で取材した模様をお伝えしよう。

LIFESTYLE Mar 20,2023
岩手県内最古であり、最も“新しい”酒蔵「菊の司酒造」とは
新工場の画像
スキーリゾートや小岩井農場などがあることでも知られる、雫石町にある新工場。

1772年に創業の「菊の司酒造」は、1920年代より盛岡市内で、中津川の伏流水を仕込み水として酒造りを続けてきた。経営悪化のため、2021年に、パチンコ・スロット事業などを展開する、公楽に事業を譲渡。盛岡市内の工場の老朽化に伴い、雫石町への移転を決意、小学校跡地に建設した2階建ての新工場にて、岩手山の伏流水で酒造りを行っている。

杜氏ほか全従業員の雇用は継続され、新工場の建設、原料、工程の見直しなど、あらゆる点で意見を交換、反映させた。驚くほどクリーンな工場内は、単に機械化されたのではなく、これまで重労働だった部分などを機械化することで効率化を図った。原料米の搬出から醸造、瓶詰め、出荷までの工程が一方通行で進められており、導線が至極スムーズになっている。

作業の画像
吸水後の酒米を蒸し、クレーンで吊り上げる作業などは機械化。
作業の画像
蒸した熱い酒米を手作業で広げていく。

効率化と手造りのよさをうまく生かし、上質な酒が生み出されていく。また、温度管理のしやすい杉材を使った「麹室」ほか、建材に木材が使われているのも印象的だった。

麹室の画像
麹造りを行う「麹室」には杜氏の意見により杉材を採用。
タンクの画像
発酵中の大きなタンクが並ぶ。

日本酒の持つポテンシャルを最大限引き出せるよう、米の吸水はストップウォッチで計測し、0.1%単位でのコントロールを徹底。日本酒で一般的に行われている活性炭素による濾過も行なわず、もろみの管理を徹底し無濾過の原酒を作り出している。

タンクの中の画像
タンクの中の醪。温度管理をしながら、発酵の度合いは人の目や鼻でもチェックする。

もろみの上槽(絞り)の後は、速やかに瓶詰め、出荷を迎えるまで冷蔵し、酸化、温度変化による劣化は最小限に抑えられている。

瓶詰めの画像
酒質矯正のための炭素濾過などは一切行わず、検定の翌日には、瓶詰めや火入れを行う。
瓶詰めの画像
絞った当日に瓶詰めされる生原酒もある。

原料にも独自のこだわりを持つ。夏のやませによる冷害により、昔から米を育てにくいと言われてきた岩手県。長年の研究と品種改良、栽培技術の向上により、今では優れた米も生産されるように。「菊の司酒造」では、できる限り県産米を使いたいと、酒造好適米(以下、酒米)を原料米の約9割に使う。さらには、雫石町の契約農家を中心に酒米栽培にも挑戦、将来的には自社での精米も目指している。

酒米の画像
県を代表する酒米「吟ぎんが」「ぎんおとめ」「結の香」をメインに使う。
工場併設のショップの画像
工場併設のショップでは、季節限定酒を含むほぼ全てのラインナップを販売している。
受賞した賞状が並んでいる画像
IWC(インターナショナルワインチャレンジ)2022【GOLD 地方トロフィー】など受賞歴も多数。
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和食材を使ったフレンチ、ステーキとの相性も抜群

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