実山椒とディルの「だし」

食のお宝探し vol.01

山形県の郷土料理「だし」。食料難の時代に、手近で収穫できる野菜だけでできる料理として生まれ、今も、夏の暑さが厳しい村山地域(蔵王連峰や大朝日岳に囲まれた山形県中央部の盆地)を中心に、夏バテ防止料理として、広く親しまれている。 

LIFESTYLE Dec 4,2021
実山椒とディルの「だし」
山形県の郷土料理「だし」の画像

手づくりの「だし」を初めて食べたのは、確か7年ぐらい前。山形県出身の友人が、タッパーいっぱいにつくった「だし」を、スプーンでひとくち拝借。さらりとのどごしがよく、青々しい食材の風味と、ざくざく、ネバっとした食感が脳にダイレクトに“夏”を伝達してくれた。調味料で味つけされた市販の「だし」しか口にしたことがなかった私にとって、本場の「だし」の味わいは、とにかくセンセーショナルだった。「だし」のレシピは、家々によって万別。今や定番となったネバネバ食感は、オクラやモロヘイヤなどの西洋野菜が日本に入ってきた後、滋養のために加えられたものだとか。“味つけはあえてしない”シンプルな夏料理「だし」をもし私が自分なりのレシピでつくるとしたら――? 選んだ食材は、きゅうり、大葉、長葱、生姜に茗荷、それと実山椒とディル。茗荷はさっと湯通しして、すだちやレモンなどの柑橘果汁をたっぷり絞りかけ、砂糖多めと塩少々で、即席のピクルスに。実山椒は大さじ3杯の油で揚げ炒め。すべての材料を細かく刻み、茗荷のつけ汁、実山椒の揚げ油とともによく混ぜたらピリッとアクセントのきいた、和洋折衷「だし」のできあがり。

実山椒とディルの「だし」の素材画像

KAORU×おばあちゃんの食の往復書簡

件の友人の祖母である“マチ子ばあちゃん”が教えてくれた、昔ながらの「だし」をベースにつくった、私流の実山椒とディルの「だし」。豆腐や納豆に混ぜる本来の食べ方もいいし、炊いたキヌアや玄米などの穀物と混ぜ合わせ、オリーブオイルや、塩、すり胡麻などをかけてサラダ風にアレンジするのもおすすめ。夏でもさらさらと食べられて、不思議と食欲が増す一品に。私なりの和洋折衷バージョン、炎天下で畑仕事をしているマチ子ばあちゃんにも、気に入ってもらえるといいな。

“マチ子ばあちゃん”とだしの画像

山形県の内陸部に暮らす、マチ子ばあちゃんのレシピは、茄子、きゅうり、オクラ、大葉、茗荷でつくる、シンプルなもの。採れ立ての野菜を使い、その日食べる分だけをその日につくるようにしている。素材の色味が悪くならないよう食べる直前に醬油をかけるのがポイント。

PROFILE
フードディレクター
KAORU

広告や雑誌などでフードスタイリングを手がける。写真の上に食品をのせ、撮影するシリーズ作品「Food On A Photograph」プロジェクトではN.Y.と東京の2都市で展示を開催した。

初出:2021年07月03日発行『AdvancedTime』08号。掲載内容は原則的に初出時のものです。

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