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日本一大きな湖の北に位置する〝奥琵琶湖〟エリアは豊かな食材を生かした独自の食文化が根付く地。今回はそこで研鑽を積む料理人の伝統的かつイノベーティブな「食」を訪ねる旅に出掛けた。
木々が葉を落とし、冬の訪れを感じるようになると、その移ろいを存分に楽しみたくなる。それは四季が明らかな地に住む日本人特有の気質だろうか。移動の自由を叶えてくれるクルマを愛する者なら尚更その欲求が強いように思う。かくいう私もそのひとり。今回はイタリアの名門である〝マセラティ〟の「MC20」で旬を味わう旅に出た。
〝マセラティ〟といえば世界でも屈指のラグジュアリーカーメーカーとして名高いが、そのポートフォリオの頂点に立つモデルが「MC20」である。レーシングフィールドを想起させる「Maserati Corse」の頭文字をモデル名に冠していることからもわかるように、「MC20」はいまの〝マセラティ〟の技術の粋を集めて作られた、スーパースポーツカーである。
車台はレーシングカーコンストラクターとして知られるダラーラとの共同開発によるまったく新しいカーボンモノコックを採用。その中央にはこちらも新開発のV型6気筒ツインターボエンジンを積む。〝マセラティ〟がシリーズ生産するミッドシップスポーツカーとしては、1970年代のボーラやメラク以来というから、開発陣の「MC20」にかける思いは並々ならぬものがあるといえるだろう。
そんな情熱の塊ともいえる「MC20」で目指したのは、日本一大きな湖、琵琶湖。東京からは約450km、季節の移ろいを感じるグランドツーリングにはもってこいの距離である。
〝ネットゥーノ〟と呼ばれる新しいエンジンに火を入れると、こちらの予想に反して「MC20」は周りを威嚇するような無駄吠えをすることなく、あくまでジェントルにアイドリングを始めた。余計な空力付加物のない流麗な佇まいと見事にマッチした所作だ。
「MC20」の動き出しはとにかく穏やかで軽やか。この手のモデルにありがちな神経質さがないところに、新時代ハイパフォーマーの息吹が感じられる。高速走行に移ってもそのマナーは変わらず、「MC20」は抜群の乗り心地の良さを伝えながら、風を味方につけつつ優しく路面を撫でるように高い安定性を保って突き進む。
新しいエンジンは時に鋭い吹け上がりで高速の流れをリードすることもできるレスポンスの良さを見せるなど、柔軟性にも富む。とにかく走っていることに夢中になれる一台なのである。長距離を一気に走ったにも関わらず、一切の疲れを感じないまま、お楽しみの時間があっという間に過ぎた。
ランプウェイを降り、長閑な田園風景のなかを通り過ぎると凪いだ水面が美しい琵琶湖畔にたどり着いた。そのすぐそばの斜面の広大な土地に建つのが「ロテル・デュ・ラク」である。このホテルは、まだ手付かずの自然が多く残る〝奥琵琶湖〟と呼ばれるエリアの一角に位置し、全15室のゲストルームを用意する隠れ家的オーベルジュ。そこに2022年春にオープンしたメインダイニング「SOWER」が今回の旅の最終目的地というわけである。
〝種をまく人〟という意味を持つ「SOWER」の指揮を執るのはまだ30歳という若きシェフ、コールマン・グリフィン氏。かつてミシュラン東京の2つ星レストランでスーシェフを務めたという彼がこの地に腰を据えたのは、「SOWER」のオープン1年前のこと。新しいキュイジーヌに挑戦するとなった際はこれまでの自身の経験をベースとしながらも、地の物を生かした、ここでしか味わえないものを提供したいとの思いを強くしたという。それを実現するため、滋賀はもとより、隣の福井まで足を伸ばして生産者を訪ね、自らの目で食材を確かめて、理想の味を作り上げるための準備をこつこつと重ねてきた。
そんな食材で構成されるのが、今回、供された料理の数々だ。近江海老と自然薯のドーナツに始まり、鴨のハムや黒ニンニクのソースをまとわせた根菜の上に岩魚のたまごを散りばめた一品、連子鯛のグリル、福井の美浜で捕れた鹿肉のステーキなど、素材単体でみれば野趣あふれるものが多いが、どれもコールマン氏の魔法によって洗練と深みを纏い、私の口を喜ばせてくれた。そのすべてに豊かな味わいがしっかりと備わっているのだ。言い換えればこの地や食材を思いやるコールマン氏の温かみがそのままひと皿ひと皿の味になって現れているようで、力強く優しい。
筆者自身、実はこの「SOWER」から程近いエリアで生まれ育ったのだが、今回久しぶりに地元を訪ねて改めて思ったのは、ここに暮らす人たちがことさらに自分を主張せず、思慮深さに溢れる芯のしっかりとした人たちが多いということだ。そんな人たちとコールマン氏、そして繰り出される料理とが重なって見えたのである。彼が「SOWER」での自身の料理を〝湖北キュイジーヌ〟と呼ぶところにも合点がいく。
そしてそれはここまで私を連れてきてくれた〝マセラティ〟「MC20」にも同じことが言える。イタリアの名門が作り上げたミッドシップスポーツカーもまた、第一印象はクールでありながら、運転するものの気を逸らさない滋味深さがあり、深く付き合ってみたくなる。いずれも良いものを提供したいという強い信念のもとに生み出された逸品であることは間違いない。
驚きを呼ぶ料理の数々を堪能し、このうえない満足感を持って席を立つときに「またいらしてくださいね」とはにかみながらも自信に溢れた眼差しを向けてくれたコールマン氏。春になったら大地の芽吹きを感じさせる新たな〝湖北キュイジーヌ〟を味わわせてくれるはずだ。そのときは先頃「MC20」に加わったオープンモデル「CIELO」で来るのもいいかもしれない。湖畔の満開の桜を愛でながら、完成度の高いクルマと料理を存分に楽しめるであろう季節の訪れが、本当に待ち遠しくなった。
主要諸元(2022年モデル) | |
エンジン | 2,992cc V型6気筒 DOHC ツインターボ |
最高出力 | 463kW(630ps)/7500rpm |
最大トルク | 730Nm/3000~5750rpm |
全長/全幅/全高 | 4,670×1,965×1,220mm |
車両重量 | 1,640kg |
車両本体価格 | ¥26,640,000 |
ロテル・デュ・ラクの宿泊券(「SOWER」のディナー付き)を1組(2名様)に抽選でプレゼントいたします。
*有効期限:2023年7月6日(木)の宿泊までの平日限定(日、月、木、金曜日) *除外日:2023/3/30~4/10、GW4/27~5/6は除く *お部屋は「ロテル・デュ・ラク」が指定します。
■締め切り 2023年1月10日(火)23:59まで
ご応募いただくには小学館IDへのログインが必要です。
是非、小学館IDへ会員登録(無料)の上、ご応募ください。
※外出時には新型コロナウィルスの感染対策を十分に講じ、最新情報は公式HPなどでご確認ください。
STAFF
Photos: Chikara Kitabatake
Writer: Tsuneharu Kirihata
Editor: Atsuyuki Kamiyama
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