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日常使いのための腕時計もいいが、持てる技術を集結させて限界に挑戦した超絶複雑ウォッチに出合えるのも見本市の醍醐味。驚きの先に感動を呼ぶ精緻に組み上げられた複雑ウォッチから注目の6モデルをご紹介。
超複雑機構ウォッチとは、製造・組み立ての難易度の高いトゥールビヨン、ミニッツリピーター、永久カレンダー複雑機構を複数備えたコンプリケーションウォッチのこと。そうした時計は、腕に覚えのある持てる技術を結集させて作り上げられていて、ウォッチ&ワンダーズのような見本市のハイライトにもなっている。新しいアイデアや想像を超える斬新なメカニズムは、われわれをワクワクさせてくれる存在だ。
大ぶりな時計が容認されていた頃は、“フランケンシュタインの怪物”のような複雑時計もあったが、今の時代はスマートさも重要。複雑時計にも使いやすさとか装着性が求められるようになってきた。近年ではデザインやケースフォルムのバランスが取れ、全体的に調和がとれている時計が増えてきたという印象だ。
今年はデザインにもこだわった複雑機構を備え、さらには41もの機構を腕時計のケースに収めた超大作まで飛び出した。一見すると、これが複雑ウォッチなの? と思うようなスマートさがあるところに、今流行りのクワイエット・ラグジュアリーさえも感じさせる。
そんな複雑なタイムピースには、人々に驚きと感動を与える人類のロマンが詰まっている。ウォッチズ&ワンダーズだからこそ見れる複雑時計はまさしく最新技術の最前線だ。
2025年で創業270周年を迎えたヴァシュロン・コンスタンタン。それを記念して発表されたのが、「レ・キャビノティエ・ソラリア・ウルトラ・グランドコンプリケーション-ラ・プルミエール-」だ。1521個の部品による41の複雑機能を、ケース径45mm、厚さ14.99mmに収め、13の技術特許が出願されている超絶複雑ウォッチだ。搭載されるのは複雑機構ではお馴染みのトゥールビヨン、スプリットセコンドクロノグラフ、ミニットリピーターをはじめ、モデル名のソラリア(太陽)が示すように、斬新な天文に関する機構まで備わる超大作となった。
搭載されるキャリバー3655は、時刻、クロノグラフ、チャイム機能を組み合わせたベースに、すべての天文表示に関する機構のモジュールを組み合わせたムーブメント。ベースムーブメントだけでも十分すごいわけだが、これだけの多くの機構をケースに収めるために小型化を重視し、正確に連結させるための取り付けシステムが採用される。
ハイライトは5つの天文学的複雑機構。太陽の位置、高度、南中など、天空における太陽の軌道に関する機構と、裏側の表示される世界初の天体の時間追跡機構だ。天体の時間追跡機構とは、スプリットセコンドクロノグラフと天球を組み合わせたもので、指定する星座や星が視野の中央に現れるまでの時間を示すというもの。シースルーバックから見えるブラックの楕円のディスクが視界に見える天体で、任意の星を選んでクロノグラフを作動させ、ディスク上のグリーンの基準点に達したら最初の針を止め、選んだ星が現在地まで進んだらもう一方の針を停止させる。中央の小さなグリーンの三角形の矢印が空に現れるまでの時間を示している。
また13の特許出願のうち、7件がウェストミンスター ミニットリピーター機構に関するもの。薄いキャリバーに4つのゴングと4つのハンマーを収め、しかも部品数が増えるほど音は吸収されるのはチャイム機構には条件の悪いムーブメントであるが、新しい構造とストライク構造の改良で調和のとれた音色を実現した。まさしく270周年アニバーサリーにふさわしい技術を結集させた複雑時計となった。
既視感があると思ったら、レトログラード日付表示を備える2023年発表のグランドコンプリケーション Ref.5316/50Pであった。乱暴にいえば、このグランドコンプリケーションからミニッツリピーターとトゥールビヨンを除いたのが、新作の「レトログラード日付表示針付永久カレンダー Ref.6159G」だ。
永久カレンダーはパテック フィリップが得意とする機構で、カレンダーの表示方法が異なるモデルを何種類もラインナップされるが、Ref.6159は特にユニークだ。文字盤中央には最大270度回転するレトログラード式の日付表示を大胆に配置され、曜日・月・閏年を小窓で表示する。文字盤にはグレーがかった半透明のメタライズ・サファイアガラスが採用し、ガラス越しにカレンダーの回転ディスクなどのメカニズムを鑑賞できるようになっている。このメタライズ・サファイアガラスは、外周に向かって濃くなるブラック・グラデーションとなっていて、一般的なグラデーション文字盤のように外側からスプレーワークによって着色されたものかと思っていたら、そうではないらしい。もともと不透明なブラック文字盤を特殊な方法でレーザーで中央から色を抜いて仕上げたものだという。通常とは逆のアプローチでグラデーションを実現させたところは実は興味深い。
ホワイトゴールドケースのベゼルとケースバックの両面には、パテック フィリップらしいスタイルといえるクルー・ド・パリのギョーシェ装飾を施して、個性的に仕上げた。コンポジット・バンドには、新型の3ブレード折り畳み式バックルを備える。
ブルー文字盤の端正な2針モデルと思いきや、反転させるとミニッツリピーターの精緻なスケルトンムーブメントが現れ、かつ第2時間帯表示を示すコンプリケーションウォッチに仕立てたジャガー・ルクルトのレベルソ。
ミニッツリピーターとは音によって時刻を知らせる技術的に最難関の複雑機構だ。レベルソは角型ケースであるため、通常の丸型よりも音の共鳴や増幅が困難であるが、斬新なアイデアによってそれを克服。サファイアクリスタルのガラスにゴングを直接取り付けることでよりクリーンな音や音量を増加させたクリスタルゴング、関節アームで音量を下げることなく少ないエネルギーで打つことのできるハンマー、15分のチャイムがないときの無音の感覚をなくすサイレント・インターバルの除去など、技術を積み重ねてきた。この新しいキャリバーである953にも、こうした既存の特許技術が7つも採用されている。
新型ミニッツリピーターの見どころは、美観にこだわったところ。例えば、表面の文字盤には、ギョーシェ彫りを施したバーレイシードパターンにティールブルーのグラン・フー・エナメルを何層も重ねている。2針のシンプルなデザインながら工芸的な美しさを獲得した。
一方で、ミニッツリピーターの複雑なメカニズムと動きを鑑賞できるシースルーとなった裏側には、7時から5時位置にわたってハンマーを支えるブリッジを備えるが、ブルーラッカーで装飾されて華やかさを与える。機械としても美的な作品としてもレベルソの魅力を高める1本といえる。
パーペチュアル(永久)カレンダーカレンダーは大の月、小の月、閏年の2月29日といったカレンダーを自動的に調整してくれる機構のことで、ゴングをハンマーで鳴らして任意に選んだ時刻を音で知らせるミニッツリピーター機構と組み合わせた。A.ランゲ&ゾーネの新作はこの2大複雑機構を搭載した野心作だ。
ミニッツリピーターは、低音と高音の2種類のハンマーで、時、15分、分を打ち分けて時刻を知らせる。0から14分である場合は15分の打鍾はされず、空白の時間が生まれるが、その時間を防止する一時休止省略機能を追加した。またリューズを引いた状態でミニッツリピーターが作動してハンマー打ち機構が損傷しないように、作動中はリューズが引き出せないようになっている。さらにハンマーがゴングを打つときに反動で再び当たらないように制御する特許技術「ハンマーブロッカー」も採用する。
文字盤はブラックエナメル文字盤で、黒い光沢感で上品さを演出。ホワイトゴールド製の針やインデックスとのコントラストで上品に映える。ケースはプラチナ製でハイエンドモデルにふさわしい外装も文字盤のプラチナケースも複雑機構を引き立てている。
2014年から薄型時計の新記録を重ねるブルガリ。今年で10回目となる薄型の新記録ではケースの厚みがわずか1.85mmの世界最薄のトゥールビヨン、「オクト フィニッシモ ウルトラ トゥールビヨン」を発表した。この1.85mmとはどのくらいの厚みかというと、500円硬貨と同じと考えてもらっていい。この薄さの中に、複雑機構のトゥールビヨンを組み込んでしまうというのは、驚異的な技術力だ。
この薄さを実現するために、時刻表示、バランスホイール、ゼンマイを収納するバレル、フライングトゥールビヨンを積層するのではなく、並列に配置されている。さらに薄くなることで強度が心配となるが、ベゼル、ミドルケース、ラグにはチタンを用いて、裏蓋兼地板には硬質なタングステンカーバイトを採用することで強度を確保した。
2時位置に時分針による時刻表示、5時位置に1分間で一回転する薄型のフライングトゥールビヨンを備えて外周のキャリッジに備わるルビーがスモールセコンドの役割を果たす。また10時位置のゼンマイを収めるバレルには、ウォッチメイキングのコンテンツや時計の個別データにアクセスできるQRコードが刻印される。これらの多くはスケルトン化されており、薄さを追求しながら、実用性を持たせ、なおかつ精度を追求するところがブルガリらしい。
モータースポーツと関係が深い時計といえば、まず思い浮かべるのがタグ・ホイヤー。そのタグ・ホイヤーが2025年からF1グランプリの公式タイムキーパーに再び就任することとなった。それを記念して登場したのが、「タグ・ホイヤー モナコ スプリットセコンド クロノグラフ│F1®」だ。
本作はタグ・ホイヤーのオートオルロジュリーコレクションのひとつで、クロノグラフの上位機構であるスプリットセコンドクロノグラフが搭載されている。スプリットセコンドクロノグラフとは、クロノグラフ針とスプリットクロノグラフ針の2本の計測針を備えたクロノグラフのことで、ラップタイムの計測できる複雑機構のひとつ。モータースポーツなどのレースシーンでは欠かせいない機構だ。昨年、ヴォーシェ・マニュファクチュール・フルリエとのコラボレーションで、キャリバーTH81-00が開発され、新型のスプリットセコンドクロノグラフモデルが誕生した。F1の公式タイムキーパーを記念して、この複雑機構が搭載されている。
文字盤はF1のシグニチャーカラーである鮮やかなレッドの半透明の素材が用いられ、ホワイトのブリッジとコントラストを成している。インダイヤルにはF1のスタート時に使われるフレーズである“LIGHTS OUT & AWAY WE GO”の文字が刻まれ、目盛りはホワイトとイエローでサーキットを思わせるデザインに仕上げた。
ケースは筋目模様の入ったホワイトセラミックに筋目模様を丁寧に施して特別感を演出。ケースバックからはチェッカーフラッグパターンが施されたブリッジやサーキットの縁石をイメージした自動巻きローターが鑑賞できる。
STAFF
Writer: Katsumi Takahashi
Editor: Atsuyuki Kamiyama
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