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素材と色彩、シルエットのトランスフォーメーションという明確なコンセプトのもと、オアジカシミヤをはじめ最上の素材を駆使してつくられる“ゼニア”のコレクション。それはまた、現代性を備えたラグジュアリークロージングのあり方を表してもいる。
ランウェイの中心で、静かに降り注ぎ続ける、オアジカシミヤの繊維のかけら。堆積し、小山のようなシルエットを見せている。それは“ゼニア”が重ねてきた良質なものづくりの時間と営み、培われてきた伝統などを、抽象的かつ象徴的に視覚化したものといえるかもしれない。
ミラノ・メンズファッションウィーク期間中である1月15日に発表された“ゼニア”の2024秋冬コレクション。先述のスケール感あるインスタレーションの周囲をモデルが歩くランウェイショーは、過去のシーズンにもまして、“ゼニア”の素材や質感への深い造詣、そしてそれをよりモダンに、明快なかたちで具現化していこうとする意志が感じられるものとなっていた。

“ゼニア”のアーティスティックディレクターであるアレッサンドロ・サルトリは、今回のコレクションについて、次のようなコメントを寄せている。
「場所としても、意識の面でも、ブランドの中心にあるオアジ・ゼニアは、正真正銘のラボとして機能しています。 休むことなく新たなものづくりを探求し、新しいフォームを開発し、現代にふさわしい先進的な衣服の在り方を練り上げることができる場所なのです。私たちはこの場所で最上質の天然繊維と染料を用いて実験を行いながら、機能の体系を読み解き、ラインを再体系化し、各エレメントの一人ひとりの自由な解釈を可能にする開かれたシステムを構築します。そのために、ファッションがファブリック、色彩、シルエットのトランスフォーメーションであるという健全な発想に従い、責任を持って環境に関与しながら、常に美と卓越を追求しているのです」

オアジ・ゼニアとは、“ゼニア”創業者以来守られてきたイタリア・ピエモンテ州の自然保護区であり、本社、アトリエそしてファクトリーが構えられている、“ゼニア”の本拠地を指す。サルトリが「トランスフォーメーション」という言葉を使ったように、“ゼニア”のコレクションは、通奏低音のような美意識が全アイテムに共通する中で、あたかも変奏曲のように、繊細なバランスを備えたデザインバリエーションが展開されていた。

トップスはいずれもゆったりとした肩周りとスリーブで、ウエストマークを抑えたボディ。トラウザーズはたっぷりとした量感で、裾にはクッションが入るほどのレングス。こうしたリラックスした印象のシルエットを基調に、実用的なポケットが配されたブルゾン、ダブルカラーのブレザー、ノーカラーのアノラック、オーバーシャツなどさまざまなアイテムが登場した。それらのいくつかはレイヤード(重ね着)のスタイリングとして提案されていた。

このレイヤードは、“ゼニア”にとっては手法である以上に、姿勢でもあるという。同系色のコーディネイトは、一元的ではなく色相が繊細なバランスで重なり合い、アイテムの組み合わせを際立たせていた。ビアンコ(白)、ギアッチョ(氷)、ブッロ(バター)、アスファルト、グラニート(花崗岩)といった色のグラデショーションに、各種素材のテクスチャーが付加される。例えばマルチメランジのシェットランドカシミヤ、インターシャ編み、ウォッシュ加工、プロンジェレザー、ロウ(生)デニムなど。こうした色と素材が織りなすレイヤードは、まさに“ゼニア”の真骨頂といえる。さらにトーンオントーンのラバーソールのラウンドトウブーツやソフトサッチェル、リブ仕様のグローブなどが華を添えていた。

ランウェイショーには、グローバルアンバサダーであるマッツ・ミケルセンをはじめ、マイケル・ファスベンダー、佐野勇斗といった世界各国のセレブリティも多数来場。そして特筆すべきは、ショーの音楽を英国のシンガーソングライター、ジェイムス・ブレイクが担当していたことだ。エレクトリックなサウンドに、微かなソウルネスを感じさせる歌声が絡むその音楽は、ナチュラルな質感とモダニズムが融合した“ゼニア”の世界観に、絶妙にマッチしていた。

STAFF
Writer: Yukihiro Sugawara
Editor: Atsuyuki Kamiyama
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