
タブロイドマガジンAdvancedTimeをお手元に
今年、F1の公式タイムキーパーに復帰して話題のタグ・ホイヤー。新作もモーターレースに関連した時計に注目が集まった。そのタグ・ホイヤーで時計開発を一手に担うのが、 ムーブメント・ディレクターのキャロル・カザピ氏だ。来日した際にタグ・ホイヤーの時計作りにおけるこれからの戦略を聞いた。
1997年にブレゲ賞、2012年にジュネーブ・ウォッチメイキング・グランプリ、2021年に時計界のノーベル賞と称されるガイア賞を受賞するなど、数々の賞を手にしてきたタグ・ホイヤーのムーブメント・ディレクターであるキャロル・カザピ氏。その稀代の時計設計者が、4月にジュネーブで開催されたウォッチズ&ワンダーズ ジュネーブ(W&WG)の直後、タグ・ホイヤーのアーカイブ作品を展示するエクスクルーシブなイベントに参加するため来日を果たした。W&WGの疲れを見せず、フットワークも軽く単独で会場に登場。まずはあまり聞き馴染みのないムーブメント・ディレクターという役割から話してくれた。
「ムーブメントの開発設計をするだけがムーブメント・ディレクターの仕事ではありません。タグ・ホイヤーのムーブメントに関する戦略を構築・策定から出来上がるまですべてに関わります。ひとつの構想が出来上がると技術的な開発に取り掛かりますが、より具体化していくとプロジェクトとして立ち上げます。経営陣が考える時計のイメージから最終プロダクトが出来上がるまできっちりロードマップを描くことが重要です。タグ・ホイヤーにはいくつものコレクションがありますから、プロジェクトは複数を同時進行しています。またオートオルロジュリー(複雑機構の高級時計)は私の責任で進めています」
ムーブメント開発の全体を見る役割はとてもやりがいがありそうだ。重責を担いながらも、タグ・ホイヤーの挑戦的なマインドとは波長が合うという。
「クリエイターとしてインベンターとして、発明に関わる仕事をしている人間にとってアバンギャルドなスピリットをもったタグ・ホイヤーほど働きやすい時計ブランドはありません。タグ・ホイヤーに在籍しているということは、とても恵まれた環境にいると思います。実際に働いてみてわかったことですが、時計製造に関わるツールが何でも揃っていますし、研究所も備わっています。そういう意味で、技術革新においてとても貪欲なブランドであるといえますね」
だからこそ新作モデルに対する顧客の期待も高くなるばかりだ。
「今回のイベントに来場したのは、昔からタグ・ホイヤーをよく知る顧客ばかりで、とても貴重な意見を聞くことができました。多くの人はタグ・ホイヤーにはモータースポーツに関わる時計を希望していると口を揃えていっていました。だから今年のF1復帰を記念した『タグ・ホイヤー モナコ スプリットセコンド クロノグラフモデル F1®』は期待に応えた時計といえますね。でも限定モデルでしたから、もっと作って!次は何?といわれました。この時計もやっとの思いで完成させたというのに(笑)。これからもこのような時計を発表していきたいですね」
スプリットセコンド クロノグラフの開発など「複雑時計の女王」という異名を持つカザピ氏だが、今年のハイライトは意外にも新しいムーブメントを搭載した3針モデルであった。
「タグ・ホイヤーの時計コレクションには、ムーブメントにおいて4つに分類されます。クォーツ、ソーラー、オートマティック、複雑機構に分かれ、ピラミッドの階層のように構成されています。私はムーブメント・ディレクターとしてそれぞれを一段階レベルアップしようと考えています。まずクォーツムーブメントですが、電池が切れると動かなくなってしまいますね。だからソーラー駆動にすることで機能はそのままにより長く動き続けるエコなムーブメントへと徐々に切り替えていこうと思っています。新作の『タグ・ホイヤー カレラ デイデイト』には3針タイプの自社製自動巻きムーブメントを新たに採用して、パワーリザーブを約80時間まで延ばし、国際保証を5年間へと延長しました。今後は10年保証、COSC取得をするムーブメントに進化させていきます。ですからコンプリケーションだけ頑張ればよいというものではなく、これらの4レベルをそれぞれ一段階、上にあげることを目指しています」
アントワーヌ・パンCEOはタグ・ホイヤーをもっとラグジュアリーにしたいと語っていたが、ムーブメントのラグジュアリー化における明快な回答ですね。
「タグ・ホイヤーのラグジュアリーとは、決して高価格帯のモデルとか、複雑時計を発表することではありません。また一段階上のレベルに達したからといって終わりではありません。それが基準となってまた新たに高いレベルを目指します。この戦略を、私は“ニューノーマル”と呼んでいます。この戦略でこれからもタグ・ホイヤーの時計は“ロック”していきますよ!」
パリの時計職人の家に生まれ、ラ・ショード・フォン(スイス)の時計学校で時計製造に関する学位を取得。専門はムーブメント開発、特に複雑機構とオートオルロジュリー。ルノー・エ・パピ、リシュモン・グループでカルティエなどを経て、2020年にタグ・ホイヤーに入社。1997年ブレゲ賞、2012年ジュネーブ・ウォッチメイキング・グランプリ、2021年ガイア賞を受賞するなど、受賞歴多数。
STAFF
Writer: Katsumi Takahashi
Editor: Atsuyuki Kamiyama
TAGS
『AdvancedTime』は、自由でしなやかに生きるハイエンドな大人達におくる、スペシャルイシュー満載のメディア。
高感度なファッション、カルチャーに溺愛、未知の幅広い教養を求め、今までの人生で積んだ経験、知見を余裕をもって楽しみながら、進化するソーシャルに寄り添いたい。
何かに縛られていた時間から解き放たれつつある世代のライフスタイルを豊かに彩る『AdvancedTime』が発信する情報をさらに充実し、より速やかに、活用できる「AdvancedClub」会員組織を設けました。
「AdvancedClub」会員に登録すると、プレゼント応募情報の一覧、プレミアムな会員限定イベント、ブランドのエクスクルーシブアイテムの紹介など、特別なコンテンツ情報をメールマガジンでお届け致します。更に『AdvancedTime』のタブロイドマガジンのご案内もあり、送付手数料のみをご負担いただくことでお手元で『AdvancedTime』をお楽しみいただけます。
登録は無料です。
一緒に『AdvancedTime』を楽しみましょう!
vol.027
Special Issue.AdvancedTime×AQ
vol.026
vol.025
vol.024
vol.023
vol.022
vol.021
vol.020
vol.019
vol.018
vol.017
vol.016
vol.015
vol.014
vol.013
Special Issue.AdvancedTime×HARRY WINSTON
vol.012
vol.011
vol.010
Special Issue.AdvancedTime×GRAFF
vol.009
vol.008
vol.007
vol.006
vol.005
vol.004
vol.003
vol.002
Special Issue.01
vol.001
vol.000
リニューアルされたばかりの「ハイアット リージェンシー 東京」で、日常の中の非日常を楽しむ!
磨き上げたパフォーマンスと極上の快適が完璧に調和。「Purosangue」=サラブレッドと名付けられた名馬に宿る品性
圧巻のネタとワインに驚愕!フォーシーズンズホテル京都で堪能する鮨のペアリングコース
時計業界が注目し始めた“ニュアンスカラー”文字盤
名峰に囲まれた「界 奥飛騨」で、匠の技に触れ、寛ぐ