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ハーレーダビッドソンの歴史から「スポーツスター」の名を探るとすれば1957年までさかのぼることになる。スポーティーな走りとリーズナブル、その操縦性は誰をも受け入れる懐の深さを見せることで、60年以上も支持されてきた人気モデルだ。しかし、長く貫いてきた空冷OHV、45°V型2気筒という、いささか古めかしい基本設計のエンジンはさすがにEURO5という近年の排ガス規制に対応できなくなった。そして2021年、水冷DOHC、60°V型2気筒エンジンへと切り替え、それを契機にスタイルもよりアグレッシブルなものへと変化。それが「スポーツスターS」という新しい個性だ。以来、“新世代のハーレー像”を表現する存在として、注目度が高いモデルとなっている。その新たな魅力を探るために特別な目的地も決めずに走り出した。
第二次世界大戦後の好景気と経済成長を背景に1950年代のアメリカといえば経済はもとより文化、社会など様々な分野で、まさに「黄金時代」を迎えることになる。当然ながら40年代後半から50年代にかけて世に送り出された「アメリカ車」は本国ばかりか世界中に大きな影響を与える存在となった。たとえば1948年、戦闘機の尾翼をモチーフとした「テールフィン」を始め、先進的なデザインに身を包んだキャデラックの「リートウッド60スペシャル」を皮切りに、世界のカーデザインに多大なる影響を与えることになる。
そのアメリカ車の勢いは60年代から70年代前半へと継続し、大らかで力強さを感じさせる唯一の個性は、世界だけでなく日本でも支持を集めた。プレミアムではキャデラックにリンカーン、さらには初代マッスルカーである「クライスラー300シリーズ」から始まったアメリカンスポーツの世界はマスタング、カマロ、ダッジチャージャーなどへと引き継がれ、そして憧れをも醸成した。この時代のことを突きつければ、昨今のトランプ大統領による要求が言い掛かりに等しいことが分かるだろう。
そんな我が世の春を謳歌していたアメリカ車を2度にわたるOPEC(石油輸出国機構)の原油価格引き上げ、つまり73年と79年の石油ショックが襲った。自動車産業にとって致命的ともいえるガソリン価格の大幅上昇を招き、人々の関心は燃費のいい、少し小さな車へと移った。こうしてアメリカ車は、残念ながら興味の外へと追いやられ、日本では憧れの座から外れることになる。
だが一方で、今もって人々の支持を維持するブランドがある。オフロード4WDのパイオニア、ジープと、そしてバイクのハーレーダビッドソンである。どちらも時代に合わせながら進化を続け、その上でアメリカンとしての、まさに“唯一無二の存在”として確固たる地位を維持してきた。輸入車を選択することは『生産国の文化に乗ることと同じ』と考えれば、どちらも「完璧なまでのアメリカン」であり、その揺るぎのなさが圧倒的な支持を維持している要因だ。
そんなアメリカンの代表として乗りだしたのは“ハーレーの中でも軽量級”の「スポーツスターS」。最新のV型ツインエンジンに伝統と先進を融合させたスタイルのボディに、足を置くステップを前方に配置し、足を投げ出すように跨がる“フォワードコントロール”のモデルだ。クルージングなどでは、いかにもハーレーというステップ位置のモデルかもしれない。
スリムなソロシートのシート高は765mm(非積載時)、車両重量は228kgというディメンション(寸法)は、排気量1,252ccのビッグバイクに感じるプレッシャーというハードルを低くし、構えることなく気軽に走りを楽しむには最適なモデルだと感じさせてくれる。シートに跨がり、両足をピタリと地面に着けると、久し振りに乗るハーレーとは言え、どこか安心感がある。その“乗りやすさ”という感覚は、走り出してすぐに間違ってはいなかったと感じる。市街での走りは信号待ちでも、交差点での取り回しでもストレスを感じることがほとんどなく「乗りやすいなぁ」という感覚が味わえる。
一方でライディングスタイルの“フォワードコントロール”には正直、なかなか慣れない。足を前方に投げ出し、ハンドルも少し遠いので、どことのなく前屈運動のようになる。時より街のウインドウに映し出される我が身のライディングスタイルを見ると「やっぱり手足が長く大柄な人向けかな……」とも感じてしまう。
ハーレーには“膝の下に足が位置する”スポーティーなライディングスタイル、“ミッドコントロール”というポジションがある。ヨーロピアンバイクのポジションでずっと過ごしてきた個人的な好みもあるがスポーツスターSにも、ミッドコントロールがいいと感じた。
まぁ、それでも走る距離が伸びるに従い、ポジションも取り回しもどんどん体に馴染んでいく。同時に太めの前後のタイヤによって、少しだけバタついたというか、弾むような感覚のあった乗り味にも慣れてきたところで、Vツインの鼓動を感じながら、足を伸ばして高速や郊外のルートをゆったりとクルージング。この時に「やっぱりハーレーっていいなぁ」という気分になる。
駐車スペースに滑り込み、左側に車体が倒れるんじゃないかと心配になるほど傾くサイドスタンドを引き出す。押し出し感たっぷりの佇まいのカッコ良さときたら、まさに惚れ惚れとする。慣れるまで感じていた少しばかりの乗りにくさなど、このスタイルがあれば「すべて許せる」。
風、匂い、エンジンの鼓動を感じながらのツーリングは、少々乱暴な言い方だがすべてのバイクに対し、平等に与えられた魅力だ。しかし、コーヒーブレイクで立ち寄った峠の駐車エリアで、鳥のさえずりなどを聞きながら眺める「スポーツスターS」の佇まいのカッコ良さだけは、このバイクにしか醸し出せない時間なのである。
ハーレーダビッドソン・スポーツスターS | |
最大トルク | 125Nm/6,000rpm |
最高出力 | 90kW(121ps)/7,500rpm |
エンジン | 水冷V型2気筒DOHCエンジン1,252cc |
トランスミッション | 5速MT |
駆動方式 | ベルト駆動 |
車重 | 228kg |
ホイールベース | 1,520mm |
シート高 | 765mm(非積載時) |
全長×全幅×全高(mm) | 2,270×840×―― |
価格 | 1,998,800円~(税込み) |
AUTHOR
男性週刊誌、ライフスタイル誌、夕刊紙など一般誌を中心に、2輪から4輪まで“いかに乗り物のある生活を楽しむか”をテーマに、多くの情報を発信・提案を行う自動車ライター。著書「クルマ界歴史の証人」(講談社刊)。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。
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