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イタリア・カプリ島発のフレグランスブランド「CARTHUSIA(カルトゥージア)」。その歴史は1380年までに遡る。2023年11月、東京・麻布台ヒルズに直営店をオープンした際に来日した、製品開発部長兼ブランドマネージャーのヴァージニア・ルオッコ氏に話を伺った。
イタリア・カプリ島で生まれ、18歳まで育つ。ローマ、ロンドンで約1年過ごし、大学では東洋の言語と文明、主に日本の歴史と伝統について学び、東京に住んだ経験もある。その後、カプリ島に戻り、家業である「カルトゥージア」を受け継ぎ、マーケティングとコミュニケーションを担当するほか、パッケージ、生産、プレス、広報、デジタル・コンテンツなど、さまざまなチームをマネジメントしている。
“地中海の宝石”と呼ばれ、2000年も前から時の権力者たちに愛されてきたイタリア・カプリ島。その自然豊かなカプリ島発のフレグランスブランド「カルトゥージア」の歴史は14世紀まで遡る。島内で採取された花や果実、ハーブを原料に抽出・調合して作るという修道士のメソッドは、600年以上も連綿と受け継がれてきた。それにもかかわらず、2002年まではイタリア国内でもほぼ流通することがなく、幻のフレグランスとされていた。今では、「まるでカプリ島にいるかのような感覚を抱かせる」と、セレブリティをはじめとする世界中の人に愛されるように。2023年11月には、東京・麻布台ヒルズにもショップをオープンした。
──ブランドのルーツは、14世紀まで遡るそうですね。
「カルトゥージアの歴史は1380年まで遡ります。ナポリのサンジャコモ修道院の修道士たちが、当時の統治者であるアンジュー家のジョヴァンナ王妃を迎えるために島中の美しい花を集めて修道院を埋め尽くし、活けていた花器から神秘的な甘い香り漂っていると気付いたのが始まりです。
その香りを修道院内で薬剤調合を担当する修道士が研究したところ、カプリ島に自生する、『ガロファノ・シルヴェストレ』という種のカーネーションに由来すると判明しました。この不思議な水が、カプリ島で最初の香水『フィオーリ ディ カプリ』となったと言われています。
その後、1948年に当時の修道院長が古文書の中にその“不思議な香りの水”の記述を見つけ、ローマ法王のお許しを得てイタリア北部・ピエモンテの科学者と共同で研究し、伝説の香水を再現することに成功しました」
──世界で一番小さい香水製造所「カルトゥージャ」(カルトジオ修道院)が、カプリ島に誕生したんですね。
「はい。今でも、『世界一小さい香水製造所』という別名を持つ修道院の前にある製造所で、修道士のレシピをもとに多くの製品を作っています。カプリ島の花々や果実、ハーブなどに関しては、自然環境に関する専門的な研究をもとにエキスを抽出し、調合。ボトリングからパッケージングに至るまで、ほぼ全ての工程を職人の手作業で行っています」
──パッケージのアイコンが印象的ですね。
「ブランドのシンボルは、カプリ島に住んでいたフランス系イタリア人の画家マリオ・ラボチェッタによって、1948年に製作されました。カプリ島の草花を身にまとった人魚『フラワーセイレーン』を描いています。カルトゥージアのフレグランスの香りで、色とりどりな花を無数に咲かせる姿を表し、芸術と自然の両方を想起させるデザインとなっています。島には同じ画家が描いたもうひとつの人魚のモザイク画もあるんですよ。
継承されてきた昔ながらの手法で、完全なハンドメイドで限定生産される『カルトゥージア』のフレグランスは、2002年に父がブランドを引き継ぐまでイタリア国内でも一般には流通していない、幻のフレグランスでした。
ですが、上質で希少なものなのにカプリ島の観光土産のようなアイテムでもありました。そこで、2002年よりブランディングを本格的にはじめ、まずはカプリ島内からイタリア国内へと展開をスタート。今ではヨーロッパで300以上の店舗があり、さらにアメリカ、香港、オーストラリア、そして日本へと展開を広げています。
──代表的なフレグランスを教えてください。
「『メディテラネオ』です。摘みたてのレモンリーフのフレッシュさ、グリーンティーの心地良いノートが混ざり合い、太陽に満ちた地中海の青空のような解放感に包まれます。最初は、すっきりとした柑橘とグリーンティーが漂い、時が経つにつれて紅茶を思わせる香り、そして、ホワイトムスクの清潔感あふれる香りへと変化していきます。柑橘系=夏に使うものと思われがちですが、寒い時期にもマッチする香りです」
──ミントがふわっと香り、単なる柑橘系にとどまらない。印象的ながらも多くの人が自然に受け入れられる香りですね。新作もあるのでしょうか?
「もちろんです。昔ながらの手法に従いながら、コーヒーを加えたグルマン系などモダンな香りも手がけています。ウォモもありますが、ほとんどがユニセックスで楽しめる香りです。甘みがあって、最後にスパイシーさの残る神秘的な香りで、ヨーロッパで人気の『アマーレ』が、麻布台ヒルズ店のオープンを機に初上陸しました」
──今後の展望をお聞かせください。
「これまで家族のおかげで育ち、いろいろな場所で多くの経験をし、日本にも来ることができました。家業を続けるために私の力が必要だと言われ、カプリ島限定の希少なフレグランスを世界に広めるため継ぐことを決めました。
世界に広めたいとはいっても、原料だけでなくガラス容器もパッケージもイタリア製の上質なものを使っていますし、安易に量産することは考えておりません。少ロットで丁寧に作りあげたものを、価値をわかってくださる方たちにきちんと届けられればと思っています。カプリ島という狭い場所から世界中に香りが放たれるように、インターナショナルブランドへと成長していきたいと考えています」
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Writer: Fukuko Hamada
Editor: Atsuyuki Kamiyama
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