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古都・京都にジン好きの間で賞賛されるクラフトジンの蒸溜所がある。2014年、京都のクラフトマンシップに感銘を受けて設立された「京都蒸溜所」だ。選りすぐりのボタニカルと製法のこだわりから生まれた「季の美 京都ドライジン」は、世界有数の酒類品評会でも最高賞を何度も受賞している。至高のクラフトジンはいかにつくられるのか、ただそれが知りたくて、京都へと旅立った。
ロンドンに「シップスミス」が創業された2008年、英国で一大ブームとなったクラフトジン。人気は世界へ広がり、2017年には上質なクラフトジンを製造する日本の輸出数量が前年比約44倍と劇的に上昇し、国内でもクラフトジンを嗜む人口は急増した。国内ムーブメント隆盛の一画を担ったのが、2014年、京都に設立されたクラフトジン専門蒸溜所「京都蒸溜所」だ。
京都蒸溜所を立ち上げた3人の共同創業者のうち、デービッド・クロール氏と角田紀子・クロール氏は、1990年代、東京にウイスキーの輸入代理店を起業し、スコットランドの蒸溜所から様々なシングルモルトウイスキーを輸入し本場の味わいを日本人に紹介してきた人物。2000年には、英国のウイスキー専門雑誌「ウイスキーマガジン」の編集長を務めていたマーチン・ミラー氏が加わり、ウイスキーマガジンの出版や、ウイスキー・ライヴのイベントもスタートさせている。
3人はウイスキーにとどまらず、大のクラフトジン党としての共通点もあり、その想いをカタチにしたのが京都蒸溜所である。準備に2年を費やし、ジンの製造免許を取得すると、2016年10月に「季の美 京都ドライジン」が発売した。
京都好きを公言してはばからないデービッド・クロール氏と角田紀子・クロール氏だが、感情面だけで、建設地に京都の地が選ばれたわけではない。
伏見の名水や、地元で栽培される柚子、山椒、宇治の玉露など、ジンの製造に欠かすことのできない良質な原料が手に入ることも、蒸溜所を京都に構える決め手となった。
こうしたストーリーに興味を抱き、初秋の京都へ赴き、「季の美 京都ドライジン」の生まれ故郷である京都蒸溜所を訪ねた。(京都蒸溜所は一般公開しておりません)
京都蒸溜所は、エントランスから蒸溜所内が見えるように設計されている。クリーンな蒸溜所内には蒸溜器や、マセレーション(浸漬)用、ブレンド用など、数々のタンクが並び、製造工程は、スピリッツとボタニカルのマセレーションにはじまり、単式蒸溜、ブレンド、後熟、瓶詰に至る。
ベースとなるスピリッツには国産のライススピリッツを採用。原料となるボタニカルには、100種類以上から選りすぐった、京都産を中心とした高品質な素材11種類を使用している。
季の美の製造方法は独特だ。通常のジンはすべてのボタニカルを一度にまとめて浸漬、蒸溜するのだが、京都蒸溜所では6つのエレメントに分けて個別に浸漬、蒸溜を行い、伏見の老舗酒蔵「増田德兵衞商店」の仕込み水を使用してブレンドしている。この手法があればこそ、文字通り「季の美」の旬を逃さず、特有の香り・味わいを造ることができるのだという。
ちなみに香りと味わいのポイントになる6つのエレメントは、ベースとなる「ジュニパー」、「赤松」、「オリス」、シトラス(柚子、レモン)、ハーバル(山椒、木の芽)、スパイス(生姜)、ティー(宇治の老舗茶園「堀井七茗園」の玉露)、フルーティ&フローラル(笹、赤紫蘇)。新鮮で芳醇な香味を味わいに活かすため、収穫年ごとのボタニカルの香味のおいしさを見極め、原酒それぞれに最適な製造条件を設定。こうしたクラフトマンシップに加え、京都の老舗の職人や農家との密なコラボレーションによって最高級の味わいを実現している。 気になる味は、ライススピリッツによってほのかな甘みがあり口当たりはまろやか。ジュニパーベリーの効いたロンドンドライスタイルに、日本の「和」のエッセンスを加えた清々しい味わいだ。カクテル、ストレート、水割り、オンザロック/ジンミストなど好きなスタイルで楽しめる。
京都蒸溜所に続き、「季の美」についてより深く学べるセミナー、ジンの歴史、店舗限定のジンやグッズの販売など、「季の美」の世界観を体験できる京都蒸溜所初のブランドハウス「季の美House」を訪問。建物は築100年以上の町家を改装し、もともとの梁や土壁、石畳をいかし古き良き時代の趣を感じさせてくれる。
京都の町家の並ぶ小路を抜けて木屋町二条にある京都の有名老舗バー「Bar K6(バー ケーシックス)」へとかしを変える。京都を中心とした関西エリア限定販売の『季の美 京都ドライジン 天橋立ワイン樽貯蔵』を使ったカクテルをテイスティング。丹後半島「天橋立ワイナリー」で使用されたワイン樽で熟成し、京都産ネーブルオレンジと橙由来の柑橘系風味を加えた限定品で、オレンジとバニラの香りが華やかで、ピリッと刺激的なスパイスに食欲をそそられる。
「季の美」は現在、世界各国にも輸出され、2018年と2021年の英国の酒類品評会(インターナショナルワイン&スピリッツ コンペティション)でインターナショナル ジン プロデューサー オブ ザ イヤーを受賞。2020年にはスピリッツとワインの世界市場において第2位のメーカー、ペルノ・リカールと資本提携を結んだ。
「いつか京都の人々が私達のジンを過去千有余年に渡る京都の芸術や伝統工芸のひとつとして受け入れてくれたとき、私たちの思いが成就したと言えるでしょう」と語る創業時の夢に向けて、着実に歩みを続けている。
『季の美 京都ドライジン 天橋立ワイン樽貯蔵』
『季の美 京都ドライジン』
STAFF
Writer: Masahiro Ando
Editor: Atsuyuki Kamiyama
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