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開港から150年以上の歴史を持つ、港町・神戸は、街、山、海というグラデーションで独自の文化を築き、人々を引きつけてきた。その凝縮された魅力は、装いも新たになった「ジープ・ラングラー」も同様だ。広大なアメリカの土地で生まれ育った唯一無二の存在を、多彩な表情を見せる日本の地に走らせて、改めてその魅力を確かめた。
今回の神戸旅の起点となる老舗高級ホテルのエントランスに佇む「ジープ・ラングラー」。タフな四駆が都会の洗練された情景の中にあっても決して違和感を抱かせないのは、クルマ自体の揺るぎないフォーマリティが確立されているからだろう。それはこの「ラングラー」がJL型となって初めて大きな改良を受け、洗練度が増したことも貢献しているはずだ。
独特のスクエアなフォルムはそのままに、ジープの象徴たるスロットグリルが凝縮されたデザインに改められ、同時にグリル周りのカラーコーディネートを変更。内装ではモニターが12・3インチのワイドタイプに刷新されている。
運転席に着いた際の見晴らしの良さは相変わらずだが、シートに電動調整機構が追加されたこともあって、よりドライバーにフィットしたポジションが採れるようになったのが嬉しい。ボディ四隅の見切りは良く、程よい手応えのステアリングフィールのおかげで、ホテルから旧居留地に向かう街中での取り回しもイージー。その扱いやすさは悪路での操作性を狙った仕立てが奏功した結果。素性の良さが根強い人気を誇る理由であり、今回の改良による熟成は「ラングラー」を選ぶ人の心をさらに鷲摑みにするだろう。
次に目指したのは六甲の山頂だ。その素晴らしい眺めの移ろいは神戸の見どころのひとつであり、またいっぽうで坂道の多さと急勾配はクルマのパフォーマンスの見せどころでもある。実際、国道2号線から六甲の尾根づたいの道までの直線距離はおよそ6km。高低差1000m近くを一気に駆け上がるのだから勾配がキツいのは当然だが、「ラングラー」はそんな急坂をものともせずやすやすとクリア。それはこのモデルに採用された2ℓ直列4気筒ターボが低回転域から十分なパワーを漲らせ、4WDシステムがその力を無駄なく路面に伝えてくれるからであり、これも悪路での踏破性を見据えた設計の賜物といえるだろう。「ラングラー」なら必要に応じて後2輪駆動や、全輪直結での4輪駆動など、路面状況にあわせた切り替えも可能だ。加えて街中で光った素直なステアリングフィールは九十九折りでのハンドリングの良さにもつながっていて、左右の切り返しが多い表六甲の峠道でも本格派のオフローダーとは思えないほどの軽快なフットワークを披露してくれた。
そんな楽しみも味わえたから、今回の目的地に設定したグランピング施設「ネイチャーライブ六甲」までの道のりはあっという間。コテージ前に特別に駐車させてもらった「ラングラー」がいつにも増して頼もしく見えたのは、決して目の錯覚ではない。
六甲山頂からの眺めの大半は、人工島を含む造られた港湾の景色だが、ひとたび西へ針路を取れば、百人一首にも詠まれる須磨や淡路島は目と鼻の先で、古からの自然の海を感じられる。そんなエリアにも気負うことなく気軽に辿り着けるのが神戸旅の良さ。海を目指すなら同時に風も感じたい。そんな思いつきに事もなげに応えてくれるのは「ラングラー」の美点だ。
“フリーダムトップ”と呼ばれる独自のルーフ機構は、簡単なロックを外すだけで前席頭上のルーフが取り外せ、通常のサンルーフとは比べものにならないほどの高い開放感が得られる。オープン状態の運転席からの眺めはダイナミックなパノラマ。さすがはエンタテインメントの国のクルマだ。
昼食に立ち寄った洲本市「地魚料理 海山」では地元で獲れた魚介類を使った料理を堪能。素材の新鮮さを求めるだけでなく、独自の熟成法を用いるなどして最大限に旨味が引き出された逸品は一食の価値あり。大将の料理や「ラングラー」のように、強い独自性を持つことは多くの支持を集めるのだ。
何気ないドライブの中でも独自のパフォーマンスとエンタテインメントに満ち溢れていて、日々の生活にも喜びをもたらしてくれるのが「ジープ・ラングラー」という存在。より深く人生を楽しみたい人にとっては、欠かせない相棒となるに違いない。
主要諸元 | Jeep Wrangler Unlimited Sahara |
エンジン | 1,995cc 直列4気筒 DOHCターボ |
最高出力 | 200kW(272ps)/5,250rpm |
最大トルク | 400Nm(40.8kgm)/3,000rpm |
全長×全幅×全高 | 4,870×1,895×1,845mm |
車両重量 | 2,000kg |
車両本体価格 | ¥8,390,000 |
STAFF
Writer: Tsuneharu Kirihata
Photos: Hidehiro Tanaka
Editor: Atsuyuki Kamiyama
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