100年後も親しまれる伝統と革新のラグジュアリーホテル「帝国ホテル 京都」がオープン

日本が世界に誇る一大観光都市・京都。なかでも祇園界隈は昔ながらの街並みが残り、数多の観光客が訪れる。毎年4月に開催される『都をどり』で有名な祇園甲部歌舞練場の隣に、帝国ホテル 京都が開業した。古き伝統を生かしながら、新たな息吹を感じさせるデザインとスタイル。京都滞在のシンボル的な存在になりそうだ。

TRAVEL Mar 12,2026
100年後も親しまれる伝統と革新のラグジュアリーホテル「帝国ホテル 京都」がオープン

歴史ある弥栄会館を保存、活用

観光客に人気の八坂神社がある祇園エリアのなかでも、昔ながらの雰囲気を残す花見小路。紅殻格子に犬矢来という情緒ある家並みが続き、人通りが絶えない。花見小路の南端、建仁寺のすぐ近くに、芸妓や舞妓による技芸発表の場である祇園甲部歌舞練場がある。ここでは毎年4月には春の風物詩「都をどり」が開催される。

この歌舞練場の隣に、昭和11年(1936)に竣工された弥栄会館は、長く地域の人々から愛され、国の登録有形文化財、京都市の歴史的風致形成建造物に指定されている貴重な建物。老朽化などで使用されていなかったこの弥栄会館は、景観を保存しながら未来へ繋がる新たな建築物として生まれ変わり、帝国ホテル 京都が誕生した。

帝国ホテルといえば、東京では知らない人はいないであろう。日比谷にある帝国ホテル 東京は、日本の迎賓館の役割を担い明治23年(1890)に誕生、昨年11月3日に創業から135周年を迎えた歴史あるラグジュアリーホテルだ。上高地、大阪にもあり、今回の京都での開業は同ホテル30年ぶり4軒目の新規ホテルとなる。

帝国ホテル 京都の正面玄関の画像
3月5日に開業した帝国ホテル 京都の正面玄関。

弥栄会館は地上5階地下1階建てのコンクリート造りの建築で、各階に銅板瓦葺き屋根をかけ、正面中央部は城郭の天守のような造形で、開館当時、最新の技術を使いながらも和の意匠を取り込んだ京都らしい劇場だった。当初、歌舞練場の補完的な存在だったが、その後、映画館、ダンスホールなどにも使用され祇園のランドマークとなっていた。

この歴史と伝統を持つ弥栄会館の一部を保存、活用し、さらに地域の景観向上にも役立つよう、南側と西側の壁を残しつつ建築様式を継承し、新たなホテルが建築されることになった。

例えば、弥栄会館の外壁に使用されていたタイルのうち、1割ほどの約1万6000枚のタイルが再利用されている。また、昭和初期に流行した装飾用の陶器、テラコッタも当時のものが再利用されている。

このテラコッタは、かつて建築家フランク・ロイド・ライトが手掛けた帝国ホテル東京の「ライト館」で使用されたものと同じ愛知県常滑市で製造されていたという。偶然とはいえ、100年以上前から、帝国ホテルと京都の縁があったようだ。

かつての弥栄会館正面の画像
かつての弥栄会館正面。写真提供/八坂女紅場学園
南側の壁の一部の画像
南側の壁の一部。当時のタイルが再利用されている。銅板屋根も見える。
正面玄関の真上、テラス部分に保存されていたテラコッタが使用されている画像
正面玄関の真上、テラス部分に保存されていたテラコッタが使用されている。
ロビーの一角に展示されている銅板屋根の一部の画像
ロビーの一角に展示されている銅板屋根の一部。右が弥栄会館当時のもの、左が新規に作られたもの。

伝統を尊重した再現と新たな意匠

この帝国ホテル 京都の建築工事は、かなり大変なものだったようだ。外壁を一部残しながら新たな建物をつくりあげるだけでなく、弥栄会館で使用されていた銅板瓦屋根を新たに再現。弥栄会館では国産の大理石が使われていたこともあり、石材も栃木県の大谷石(おおやいし)や岡山県の万成石(まんなりいし)、北木石(きたぎいし)、沖永良部島の田皆石(たみないし)などを使用。ちなみに大谷石は、帝国ホテル 東京2代目本館のライト館でも使用されている。

ロビーの画像
静謐な雰囲気のロビー。ガラスの外に見える庭にもこだわりが詰まっている。
地下1階にあるプールの画像
地下1階にあるプールでは、北木石がふんだんに使われインパクトがある。

客室にも古き良き伝統を感じさせる意匠と素材が施されている。例えば、あるスイートのヘッドボードには秋田杉が使われているが、別の客室では同じ杉でも産地によって色や風合いが異なり、それぞれの客室に合うよう細やかに配慮されている。

また、室内には心安らぐアートワークも飾られていて、真の豊かさを体験できるよう日本を感じられる素材やアイテムを用いた部屋づくりがなされている。

バルコニーを備えた客室もあり、天気のよい日の夜は月を眺められ、北側の場合は直接太陽光は入らないが、優しい光に包まれるよう設計されている。こうした造りは、きっと100年後も同じ景色を楽しめることだろう。

3階、弥栄スイートのベッドルームの画像
3階、弥栄スイートのベッドルーム。秋田杉が落ち着いた空気を醸し出す。
バスローブの画像
バスローブは今回新たにオリジナルで作られた。通常のものより軽くて着やすい。
5階のグランドプレミアの画像
5階のグランドプレミア。景色が一望できるバルコニー付き。霧島杉の風合いが柔らか。

ダイニングとバーも充実

2階には、フランス料理の「練」とオールデイダイニングの「弥栄」が用意されている。

また帝国ホテルのファンには馴染み深い「オールドインペリアルバー」は、ここ帝国ホテル 京都にもある。7階の北側に面していて、京都の街並みを見ながらゆったりと寛げる。ここでは、帝国ホテルで100年以上愛されているオリジナルカクテル「マウントフジ」をベースにした、京都ならではの「マウント比叡」が提供される。また、屋上には「ザ ルーフトップ」があり、平安神宮から比叡山まで見渡せる、宿泊者限定のバーだ。

1階のペストリーショップでは、帝国ホテルでお馴染みのブルーベリーパイが帝国ホテル 京都限定のミニサイズで販売されている。京都ならではの一口サイズは手土産にもよさそう。

これだけの充実した内容だと、つい連泊してしまいそうだ。

フランス料理をコースで提供する「練」の画像
洗練されたフランス料理をコースで提供する「練」。
「オールドインペリアルバー」の画像
京都の夜景が楽しめる「オールドインペリアルバー」。
カクテルの画像
中央がオリジナルカクテルの「マウント比叡」。日本のウイスキーも充実。

100年後も続くフィロソフィー

帝国ホテル 京都の支配人、坂田玲子さんに話を聞いた。

――京都・祇園での伝統を尊重しながらの開業ですが、歴史ある帝国ホテルとの共通点はあるでしょうか。

「こちらに来て、祇園の女将さんや芸妓さん舞妓さんと打ち合わせなどで話をするほどに、帝国ホテルらしさを考える機会が増えました。祇園の方々もお客様から教わることが多いそうですが、私ども帝国ホテルもお客様の意見を受け止めて生かしていく習慣があります。日々、感謝を忘れずにお客様に接することは帝国ホテルのフィロソフィーでもありますが、祇園の人たちの考え方と似ているのかもしれません」

――インバウンドを想定されているようですが、日本人のお客様はどのような方にいらしてほしいでしょうか。

「東京や上高地にもいらしている帝国ホテルの顧客の方からのご予約をいただいております。帝国ホテルをご利用になったことがないお客様も、この帝国ホテル 京都ならでは歴史や文化財としての価値、そして芸術に関心がある方、知的好奇心をお持ちの方にもぜひいらしていただきたいです」

じつは筆者は生まれも育ちも京都市東山区。十代の頃は、八坂神社や知恩院、建仁寺など祇園エリアを遊び場にしていたが、弥栄会館や祇園甲部歌舞練場のある花見小路は大人の空間のように見えて敬遠していたものだ。格式の高さは子供にも感じられるものだったといえる。大正、昭和の時代から続く古き良き祇園の文化を尊重しながら、伝統的な建造物の歴史的意匠を保ち、未来へとつなげていくという革新的リノベーション。これは今の京都にこそ必要な発想、取り組みのように京都人の筆者には思えてならない。

100年後を見据えた新しいラグジュアリーホテル、ぜひ実際に足を運んで千年の都の未来に思いを馳せていただきたい。

帝国ホテル 京都

帝国ホテル 京都のロゴの画像

住所:京都市東山区祇園町南側570-289
電話:075-531-0111
料金:177,100円~(大人2名 1室、税・サービス料込)
https://www.imperialhotel.co.jp/kyoto

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