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標高900~1,000メートルという軽井沢。冬は最高気温が零度を下回る日もあり、寒さが厳しい。しかし、その凍てつく自然のなかにも恵みがあり、ひそやかな春の息吹が感じられる。軽井沢を代表するファインダイニング『ブレストンコート ユカワタン』で、この冬、ジビエ尽くしコースが提供された。
『ブレストンコート ユカワタン』が開業したのは、2011年。すでに15年が経過したが、東京など遠方から通う常連客もしっかりついている、いまや軽井沢では老舗的フレンチだ。当初から“水のジビエ”というコンセプトを掲げて、川魚を看板の食材として扱ってきた。当時、何度か足を運んだが、洗練されながらもインパクトのある料理に感心したものだ。
今回、冬の季節に川のジビエだけでなく、鹿や猪など山のジビエも使ったコースを提供するというので、興味津々だったがタイミングが合わず、期間最終日近くの2月末、何とか訪問することができた。
日中、青空が広がり少し春の兆しが感じられる天気だったこともあり、まずは建物の外に設えられたテラス席でアペロ。森の空気を感じながら、しばしシャンパーニュとアミューズを楽しむ。オペラの序曲のようなものだろうか、これから始まる壮大なドラマのエッセンスが感じとれるようだ。期待に心躍らせながら、店内へ。
開業当初から個人的に魅力を感じているダイニング空間。ガラス張りのレストランはよくあるが、内装がじつに落ち着いた色合いで天井も高く、ヨーロッパの地方都市にある星付きのレストランのごとくなのだ。サービススタッフの所作も含め、席に着くだけで一流の空気感が心地よい。



さて、この日のコースは、ジビエのほか川魚なども使った料理5皿とデザートからなる全6品が基本。そしてオプションが提示されるのだが、これが大変魅力に富んだものばかり。“王様のジビエ”としてパテ・ド・ロワ、ジビエ・ア・ラ・ロワイヤル、スペシャリテの岩魚のムニエルなど。追加での注文だけでなく、コースに上手く組み込むこともできるというので、ジビエやスペシャリテがすべて堪能できるフルコースでお願いしてみた。
すると、ほどなくしてすべて組み込んだフルコースの品書きを改めて用意してくれた。それほど、全部盛りで注文する客が多いのかも。注文が完了しただけで、料理が出てくる前から気分が高まるのが王道フレンチの素敵なところともいえる。
この日のコースは、ジビエのコンソメに始まり、パテ・ド・ロワ、茸のタルト、岩魚・ア・ラ・ムニエ―ル、ジビエ・ア・ラ・ロワイヤルなどデザートまで含めると全9品となった。


まずは深い旨みを感じされるジビエのコンソメ。その後は“王様のジビエ”の代名詞的料理のパテ・ド・ロワ。大きなパイの塊を目の前で切り分けてサーブしてくれる。美しい断面が映えるように盛り付けて皿が運ばれてきた。その味わいは、思いのほか軽やか。ペアリングとして用意してくれたワインは、なんとドメーヌ・ド・ラ・ジャナスのシャトーヌフ・デュ・パプ1997。熟成した南仏の赤ワインを出してくれるとは、合わないわけがないでしょう。最初からノックアウト。



鯉とビーツのコンビネゾンに続き、茸のタルトが供された。一口サイズの小さなタルトの上に細やかに敷き詰められた茸の料理とハーブなどの繊細なトッピング。これに合わせて出されたワインが、シャンパーニュ地方のスティルワイン、コト―・シャンプノワときた。一般的なフレンチでは、まず用意されていないアイテムだ。希少というだけでなく、その軽やかなピノノワールの味わいが茸の旨みを増幅し、脂分のあるタルトを爽やかに感じさせ、最高の余韻を残す。

川海老のアメリケーヌを使った平目の魚料理を経て、“水のジビエ”のスペシャリテ、岩魚のア・ラ・ムニエ―ルの登場。巨大といってもいいほどの大ぶりな岩魚がじっくりムニエルにされて運ばれてくると、香ばしいながらも芳醇な味を連想させるバターの香りがダイニングに漂う。客席にプレゼンテーションされてから、改めて皿に盛りつけられて供されるが、目の間に現れた岩魚のなんと上品なこと。しかも身が分厚い。2センチ以上の厚みがあろうか。
フランスやベルギーの海に面した町などでは、ドーバー海峡で獲れた平目をムニエルした料理が名物だが、まさにあの“ドーバー・ソール”を彷彿させるほどの圧巻の料理だ。
この岩魚には、ベーコンなどを使ったソースが敷かれており、長野県の赤ワイン「椀子メルロー」2015がしっかりと料理の味わいを支え、余韻を豊かに高めてくれた。


さあ、最後はいよいよ王様の中の王様、ジビエ・ア・ラ・ロワイヤルだ。目の前に現れたのは、意外や立体的で高さのある筒状の料理。ソースの仕込みに1週間もかけるというが、さらに客席で上から追いソースがかけられる。
ナイフを入れると、すっとやわらかい。これには鹿や猪だけでなく、穴熊や雉など様々なジビエが使用されているそうで、奥行きのある複雑な香りと深い味わい、でも決して癖はなく、まったりとして甘みも感じられる。このスペシャルな料理に合わせて供されたワインは、なんとボルドー・ポムロールのシャトー・フェティ・クリネ1999。四半世紀以上も経たこんな銘醸ワインを合わせてくれるとは。最高のマリアージュを堪能。


満漢全席のようなジビエ尽くしを堪能できるコース、デザート(いや王道フレンチだからデセール<dessert>と呼ぼう)はスフレショコラと燻製アイス。いまどき、手間のかかるスフレを出してくれるフレンチは少ない。これもまた王道のアイテム。しかし、添えられたアイスが燻製とは、一筋縄とはいかない。
これらに合わせて用意されたワインはソーテルヌ、シャトー・メーヌ・デ・カルム1988。ソーテルヌを懐かしいと感じてしまう人は、バブルの頃にさんざんフレンチを楽しんだのではなかろうか。この日のソーテルヌはべたつくような甘さはなく、格調高い深みのある味わいで、デセールにマッチした。
料理もワインも素晴らしいが、特筆すべきはサービススタッフの接客。かつてミシュランガイドは日本に上陸する際、評価は皿の上だけ、つまり料理しか見ないというようなことを宣言していた。しかし、実際にヨーロッパで星を取っているレストランに行くと、エレガントな内装や装飾品はもちろん、サービススタッフの所作や機敏な動き、客席への目の配り方や配慮などが不可欠な要素となっている。そして、適切なフレンドリーさも必要だ。
ここ『ブレストンコート ユカワタン』では、臨機応変にゲストの希望を上手く取り入れるメニュー構成や、客席でのプレゼンテーションもあり、本場欧州と違わず安心して身を任せることができるレストランとして成り立っていることを実感できた。

徹頭徹尾、王道と革新の手練手管を繰り出してくれるコース料理、これは東京から通う常連客が大勢いるのも頷ける。このジビエのコースは3月1日で終了したが、また来季、味わうことができるだろう。
このスタイルのフレンチは、他の季節にも様々に客を楽しませてくれるに違いない。春は、鯉と独活のレゾナンス、山芹と姫鱒のミ・キュイ、アスパラガスの岩塩包み焼きなどを組み込んだ季節感満載のコース料理が予定されている。春の兆しが感じられる3月、そして間もなく繁忙なGWを迎える4月、軽井沢まで足を運んで「ユカワタン」でしか味わえないフレンチを堪能してみては。

住所:長野県軽井沢町星野 軽井沢ホテルブレストンコート敷地内
電話:0267-46-3667
営業時間:ランチ11:30~15:00(5月~10月の土・日限定)、ディナー 17:30〜
定休日:不定休
料金:コース料理 7品~19,800円~、ワインとお酒のペアリング13,200円~、ノンアルコールカクテルのペアリング5,500円~
https://yukawatan.blestoncourt.com/
宿泊の際は、昨年開業20年目を迎えた「星のや軽井沢」もおすすめ。豊かな自然の中で野鳥の声に癒され、天気の良い日は星降る夜空に感激できる温泉宿で、十二分にリラックスできるだろう。
STAFF
Indy Fujita
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