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2010年、ニューヨークのソーホーのとあるラウンジで開かれた小さなトランクショーでデビューした“Hirotaka”は、スタイリストをはじめとする感度の高い女性たちに、熱狂的に支持されるジュエリーブランドへと成長し、今年で15周年を迎える。一線を画すスタイリッシュさが際立つデザインを生み出すデザイナー井上寛崇氏がジュエリーに込める美学とは。
2010年、ニューヨークのソーホーのとあるラウンジで開かれた小さなトランクショーでデビューした“Hirotaka”は、スタイリストをはじめとする感度の高い女性たちに、熱狂的に支持されるジュエリーブランドへと成長し、今年で15周年を迎える。一線を画すスタイリッシュさが際立つデザインを生み出すデザイナー井上寛崇氏がジュエリーに込める美学とは。

ブランド誕生から15年で世界的人気ブランドへと成長。井上氏の歩みは一見、順風満帆に見えるが今に至るまでどんなストーリーがあったのだろうか?
「私自身のジュエリーのキャリアはハイジュエリー制作から始まったのですが、2007年に独立した後に拠点を置いたニューヨークで、老舗百貨店ヘンリ・ベンデル(2019年に閉店)のバイヤーから『うちは1,000ドルを超えるジュエリーは買わない』と言われたり、最初は思うようにいかないことばかりでした。そこからファッションファインジュエリーの世界へと入り、2010年に“Hirotaka”は小さなトランクひとつでデビューしました。
当時はボリュームのあるコスチュームジュエリーの全盛期で、それに比べて“Hirotaka”のジュエリーは『小さすぎる』と、ファーストコレクションはバイヤーたちからの結果は得られませんでした。その一方で、ファッションエディターやモデルたちの多くは、自分らしいデイリーなスタイリングにアレンジ出来る少し辛口なデザインとアシンメトリーなバランスを求めてくれたのです。そこからファッション誌で取り上げられるようになったり、セレブリティたちがショールームに直接買いにきてくれるようになったりと、だんだんと手応えを感じることができるようになりました。

そして2013年には、何度もアタックしても門前払いだったバーニーズニューヨークが『オリジナリティにあふれたジュエリーだ』と評価してくれ、当時のコレクションをすべて買い取ってくれました。小さなジュエラーにとっては登竜門のような存在でしたから、あまりにも嬉しくて泣きました。パールアローやイヤーカフ、フローティングピアスなど、そのときのコレクションは、現在でも人気アイテムとして継続しています」
そこから“Hirotaka”の快進撃は始まる。3シーズン目に全米のバーニーズニューヨーク全店舗で、そして英国老舗百貨店・リバティなどでも取り扱われるようになり、2014年には日本への逆輸入という形でセレクトショップでの展開を開始。2016年には初の直営店を東京・表参道ヒルズにオープン。今年、国内10店舗目となる福岡店も誕生した。
「ある日、私が“GRUB RING”芋虫(笑)のリングをつけていたら、当時ファッションエディターでIT GIRLのローレン・パンティに『それを貸して欲しい』と言われたんです。『METガラにつけていくから』と。それで写真をSNSにあげてくれたんですが、ニューヨークの人々のファッションは個性的で、とても自由!スタイルも一人ひとり違います。
ニューヨークで“Hirotaka”が受け入れられたのも、自由にスタイリングができ、自分らしさが表現できるジュエリーだからだと思っています。
イヤーカフは200種類以上と、とにかくバリエーションが多いので、組み合わせ次第では誰とも被らず、オリジナリティ溢れるジュエリーコーディネートが楽しめます。シングルピアスを展開しているのもそのためです。日本では当初、高感度なセレクトショップにでさえも、シングルピアスはセレクトしてもらえなかったのですが、だんだんと取り扱ってくださるようになりました。
ハイジュエリーと違って、ファッションファインジュエリーは身につける人に寄り添い、ライフスタイルの一部になり、自分自身を表現できる。それこそがファッションファインジュエリーの魅力だと考えているので、無限の組み合わせでそれぞれの人が“自分らしさ”を表現してもらえたらと思っています」

15周年の節目となる新コレクションテーマは「PUNCTURE(パンクチャー)」。“Hirotaka”のジュエリーは繊細で華奢ながら、スタッズやアロー、イヤーカフ、耳に突き刺すようなデザインのスピアと、どこか強さを感じる個性的なデザインが魅力だ。井上氏にとってパンクとは何かを聞いてみた。
「僕の生い立ちにも関係があると思います。医者の家系で、ティーンエイジャーの頃は医者にならなければならないというプレッシャーを常に抱えていてとにかくそこから脱出したかった。そんな“自分らしくいるため”の反骨精神は、大人になった今も変わらず根底にあります。
それにみんな、どこかパンクでいたいんじゃないでしょうか?
15周年という節目に新たなコレクションを発表しようと考えた時、自然と浮かんできたテーマは“優雅な逆走”や“エレガントな反骨精神”。そして選んだのがバックスピアと名付けた、耳の後ろ側からつけるスタイルのピアス。元となるスピアは2020年に誕生したのですが、当時お取引のある老舗百貨店からは『今までのお客さまがびっくりしてしまうので…』と言われるほど大胆なデザインでした。でもここでも反骨精神を発揮して商品化したところ、今では“Hirotaka”を代表するコレクションへと成長しました。
私は、決して奇抜さを狙っているわけではありません。あくまでもシックに。けれどほんの少しだけパンクな遊び心を添えて。その絶妙な匙加減は“Hirotaka”らしさのひとつだと、思っています」
自分らしさ=反骨。その、ブランド創設当初から貫いてきたフィロソフィーを詰め込んだ新クレクション「パンクチャー」。バック スピア ピアス、ネックレス、リング、など、全30アイテムが9月より展開中。


「私は小さいころから、ティアラやハイジュエラーの古いピースなど宝飾の夢の世界に魅了されてきました。そして運よくハイジュエリーの世界へ飛び込むことができたわけですが、そこで学び経験したことは、“Hirotaka”でクオリティの高いファッションファインジュエリーを創作する上での礎となっています。ヒップホップを踊っていてもクラシックバレエを学んでいたり、ポップスを歌っていてもオペラの訓練を受けていたり、基礎、ベースがしっかりとしている人の表現はひと味違いますよね。
今後は逆に、“Hirotaka”でハイエンドなジュエリーをクリエイションするのも面白いのではないかと考えています。ファッションファインジュエリーの自由さと遊び心を宝飾へ。ブランドとしての贅沢なチャレンジではないでしょうか。
そしてもう一度海外へのアプローチを深めたいなとも思っています。オーストラリアの色鮮やかなオウムや熱帯雨林に棲む玉虫色の甲虫、深い森に咲く奇妙なかたちの花や妖しく光るきのこ、きらめく鉱石たちなど、自然が見せる“少し変わった美しさ”がインスピレーションの源なのは変わらないのですが、今後はよりラグジュアリーからエフォートレスで、肩の力が抜けたようなジュエリーラインがイメージに浮かんでいます。例えるなら地中海からボスポラス海峡までのびる沿岸。将来的な拠点はヨーロッパを視野にいれています。“Hirotaka”からいずれリビエラコレクションがデビューするかもしれません(笑)。
そしていずれは、モナコの海洋博物館のような、芸術的なジュエリーを並べるミュージアムのような空間の店を開きたいですね。私は常にアートをしてたいんです。その思いは、ジュエリーの夢の世界に憧れていた子供の頃から全く変わっていません」

選べるジュエリーは、15周年を記念した「パンクチャー」シリーズのピアスとネックレス、さらには、体に蜜を蓄える習性をもつ「ハニーアント」をモチーフにしたシリーズのピアス、イヤーカフ、ネックレスがラインナップ。どれもミニマルながら、スタイリングのスパイスとなるエッジの効いたジュエリーだ。それにプロ仕様のオリジナル・ジュエリーケース、深い密林の静けさをイメージした“Hirotaka”初のピローミスト「SARAWAK」がセット。贅沢でワクワクするようなセット内容のコフレは限定発売なので、早めにチェックしたい。




高校卒業後渡米、カリフォルニア州立大学を卒業後、一度はIT会社に就職するものの、27歳の時に「自分らしく、自由に生きよう!」と決意し、パリに移住。そこで友人に紹介された日本人ジュエリーコレクターの紹介で国内屈指のダイヤモンド専門会社に入社。商品企画から、ダイヤモンドのルース、営業など、ジュエリーブランドとしての基礎を学ぶ。2007年に独立。ニューヨークに拠点を置き、オーダーメイドの小さなアトリエから自身のブランドをスタート。2010年、“Hirotaka”のファーストコレクションを発表。現在は東京を拠点に、世界を旅しながら、ジュエリーを通じて“感覚”のあるものづくりを続けている。
STAFF
EDIT: Hiroko Fujiki
COMPOSITION: Kyoko Seko
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