AdvancedClub 好評に終わった京都・町家エリアでの「長く愛せる家具と季節を感じるデザート」イベントをレポート!
世界に知られた銘醸地ボルドーの中でも、とりわけ極上なワインを生み出す「メドック」。ここには、気高いまでに妥協を許さない崇高な一滴のためのワイン造りが、継承されている。
既存のフレームやスキームがフラットになりつつある今の世。そんなときだからこそ、歴史と伝統とクラフツマンシップに裏打ちされた真の品格が輝きを放つ。メドックという産地から生まれるワインがそうだ。時が築いた比類なきテロワールが育むブドウと最先端の技術、神のみぞ知る偉大なヴィンテージ。それらが欠けることなく出逢って造られる芸術的なワインには燦然とした品格が宿り、最高の品質を約束する。新世界のアップカミングな造り手によるシンデレラワインが続々登場する中、この概念が揺るがない産地はメドックだけだ。
マルゴー村にシャトー・ローザン・セグラを訪れた日はそぼ降る雨。雫が光る畑の奥に現れた瀟洒なシャトーはオートクチュールのアトリエさながら。多彩な土壌に育つブドウを丁寧に栽培し、完熟を見極めて収穫。瞬時の判断を繰り返す醸造過程経て、味わいを決めるアッサンブラージュまで、まるでドレスを仕立てるように緻密で技術の粋を集めたワイン造りが行われている。格付け第二級トップと名高い「スーパーセカンド」たるゆえんがここにある。
1000年も前にバイキングから領地を守るために築かれたシャトー・ド・ラマルクの堅固な城壁。「次代へ繋げるためにワイン造りを続けている」と当主は語る。由緒ある家柄が継承するシャトーには、極上の味わいも受け継がれるのである。
シャネル社のオーナーでもあるヴェルトハイマー家が所有。醸造責任者ニコラ・オードヴェールの指揮のもとに60ヘクタール余りのブドウ畑から年間約14万本ものグラン・ヴァンを造る。規模に比してこぢんまりしたシャトーにはモダンでシックなテイスティングルーム、アンティーク家具とハンドメイドの調度品が並ぶ迎賓室は「スモールラグジュアリー」という言葉がぴったり。
Rue Alexis-Millardet, 33460 Margaux, France tél: + 33 5 57 88 82 10
http://www.chateaurauzansegla.com/fr/
百年戦争時の城主ガリソン・ド・ラマルクの末裔にあたるグロマン・デヴリ家がシャトーを継承し、1本のブドウ樹に5房という低収量でワイン造りを行う。醸造所を構えるワイナリーのことをシャトーと称すボルドーでも、真の貴族が住んだ城でワインを造るケースは多くない。こんなシャトーが残るのもメドックならではといえる。
33460 Lamarque, Haut-Médoc, France tél + 33 5 56 58 90 03
http://www.chateaudelamarque.fr
壮麗なシャトーが立ち並ぶメドックでもひときわ美しい邸館。ピション家の流れをくみ、現オーナーはアクサ・ミレジム社。正面の池の下は最新式の樽貯蔵庫が広がり、最新鋭の設備を備える。醸造責任者クリスチャン・シーリーとコンサルタントのエリック・ボワスノが生み出すワインは力強さと華やかさ、長い余韻をもつ、典型的なポイヤックのスタイル。グラン・ヴァンには2007年からカベルネ・フランを入れていないのが興味深い。
33250 Pauillac, France tél +33 5 56 73 17 17
https://www.pichonbaron.com/en/
レオヴィルを巡る領地割譲の話は有名。そのひとつ19世紀ポワフェレ男爵夫人が所有した土地を1920年からキュブリエ家が継承。光学選果台や地下セラーなど設備を刷新し、水準の高いワインを造り続ける。ワインのプロのみならず愛好家の訪問を受け入れ、見学コースや温かなもてなしに定評がある。 ボルドーのショコラティエHasnaâのチョコレートを使ったワインとのペアリン グを提案し、話題を呼んでいる。
38 rue de St Julien 33250 Saint-Julien-Beychevelle, France tél +33 5 56 59 08 30
https://www.leoville-poyferre.fr/
外観はクラシックな城館、その内部に近未来的な醸造施設が姿を見せるクリュ・ブルジョワのシャトー・マレスカス。コンクリートと木の発酵桶の上に現代アーティスト、インゴ・マウラー作の照明が灯り、館内の至るところにアート作品やオブジェが飾られる。1棟貸切の宿泊も可能で、メドックを訪れる日が来たときのシャトービジットの拠点にしたい。ワインはモダンで華やか、バランスを重視した味わいに近年評価が高まっている。
6 Chemin du Moulin Rose, 33460 Lamarque France tél +33 5 56 58 90 09
https://www.chateau-malescasse.com/
初出:2020年9月21日発行『AdvancedTime』05号。掲載内容は原則的に初出時のものです。
STAFF
Photos: Hiroki Taguma,Ami Kuroishi(Château Rauzan-Ségla Bottle)
Coordinate: Conseil des Vins du Médoc
Editor: Hiromi Tani
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