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エフォートレスという表現がファッションに関して増える中、革靴におけるローファーの人気はかなり高まっている。そこでここでは、今季注目のローファーをピックアップし紹介する。
ローファーというと、トラッドな靴、という印象を持つ人は少なくないだろう。制服の一部という認識もあるかもしれない。もっとも、そうしたステレオタイプは現在大きく変化しているようだ。スニーカーなどのスポーティなフットウエアがファッションにおいて存在感を増す中で、ローファーはスーツなどにも合わせられる汎用性の高い革靴という位置づけになりつつある。エフォートレスへの流れの中で、着脱しやすいローファーの重要度は、さらに高まっているようだ。
そんなローファーは、今季さらに多彩なバリエーションが展開されている。ここではさまざまな個性を備えた、オーセンティックなものとはひと味違ったローファーを紹介する。

最初に紹介するのは、“ジェイエムウエストン”の「#180シグニチャーローファー」のリミテッドエディション「#180 デニムローファー」。定番のモデルでは? と訝しく思う方もいると思うが、斬新なのは、ヴィンテージデニムを使ったアッパー。古着やデッドストックのデニムをリモージュの自社ファクトリーで選別して原材料とし、切り出して、アッパーとして加工しているという。靴のデザインこそ1950年代から引き継がれているローファーのそれだが、使われている素材は現代の審美眼に基づいている。

“ジェイエムウエストン”は近年、「ウエストン・ヴィンテージ」という、古い自社の靴を買い取りして、自社工場でリペアして販売するプロジェクトを行っているが、この「#180 デニムローファー」も、自社のクラフツマンシップを背景としたサステナブルな取り組みといえるだろう。また、ファブリック、特にヴィンテージのコットン素材をアッパーに使い製品化するには、革のアッパーとは別種の、繊細な技術が求められることも特筆しておきたい。

これは先回りした見方かもしれないが、デニムパンツやデニムのアウターなどと同様に、この「#180 デニムローファー」を楽しむのも一興かもしれない。例えば表面が汚れたり、擦れて傷がついたりといったことも、その個体に加わった「味」として捉えて、履き重ねるといった具合に。エイジングや愛着を「価値」として認めることこそ、新時代のラグジュアリーのあり方、というのは言い過ぎだろうか。

デニム素材、ということでは、こちらも印象的。今年誕生75周年を迎える“ジョンロブ”のローファー「LOPEZ(ロペス)」。今季はアッパーのエプロン部(甲のU字状ステッチの内側)にデニムを使った「ロペス デニム」が登場している。ここで使われているのは日本製のデニム生地、さらに日本の技法である刺し子が施されている。エプロン以外の部分には、デニムと同系色のレザーが使われている。

いわゆるリジットデニムに刺し子が配されているので、素材としての堅牢度は高い。そしてエプロン部をデニムにすることは、レザーとは異なる、屈曲性も期待できる。コンビネーションカラーやコンビネーションマテリアルの靴は今季多く登場しているが、素材的にも、色的にも、よりオリジナリティを感じさせる。さらにデニム素材はオーセンティックなローファースタイルに、現代的なカジュアル感をもたらしている。

その一方で、現代のエフォートレスなライフスタイルに寄り添うフットウエアとして登場したのが、ソフトローファー「PACE(ペイス)」である。モカステッチには、革手袋の縫製から着想されたハンドステッチが採用されている。さらに、「ロペス」のアイコンデザインであるサドルストラップとオーバル型のカットアウトが、「ペイス」ではステッチで表現されている。

この「ペイス」のつくりはブレイク製法。グッドイヤーウェルト製法に比べて屈曲性があるといわれるが、さらにアンライニングのスエードアッパーとパッド入りのインソールを組み合わせて、柔らかな履き心地を実現している。またソールにはオーバルフレクシーラバーソールを採用して、コンフォートな着用感に寄与するとともに、カジュアルで気軽な雰囲気を生み出している。

そして新たな存在感を備えたローファーの一例として紹介するのは、“ベルルッティ”のローファー「ロレンツォ」。“ベルルッティ”といえば、パリの同靴店の顧客だったアンディ・ウォーホルの名を冠したローファー「アンディ」がよく知られるところだが、現在ではさまざまなスタイル、バリエーションが提案されている。

写真の「ロレンツォ」は薄いレザーソールを採用し、ブレイク製法でつくられている。今季はゴートレザー(ヤギ革)をアッパーに使ったモデルを展開。しなやかさと軽さを備えたゴートレザーは、ライニングがある構造ながら、よりソフトで軽快な履き心地をもたらしている。さらにゴートレザーはその薄さのわりに強度もあるので、靴のシルエットが比較的保たれやすいという利点もある。

「アンディ」の流れを汲むようなスマートなシルエットながら、軽快な着用感のローファーは、これからの季節、さまざまなシーンで活躍しそうだ。表面にグレイン(しぼ)加工が施されたゴートレザーは、上品かつリラックスした雰囲気を生み出していて、足元に選ぶことで、カジュアルシックな装いが完成する。
ローファーという靴は、シンプルなデザインであり、典型性が強いゆえに、新たな個性を盛り込むことがなかなか難しい。だがここでご紹介したローファーは、いずれもステレオタイプを軽々と超えて、アップデートしたローファーの姿を、それぞれに具現化している。ぜひこうしたローファーを選んで、靴を装うことの楽しさ、面白さを実感していただきたい。
STAFF
Writer: Yukihiro Sugawara
Editor: Atsuyuki Kamiyama
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