“ポール・スチュアート”と“ヴィターレ・バルベリス・カノニコ”が生み出すスタイル、その真髄を担い手たちが語り合う

3月末に「ポール・スチュアート青山本店」にて開催された、“ポール・スチュアート”ジャパンディレクター鴨志田康人氏を迎えてのスペシャルトークショー。今回はイタリアのファブリックメーカー“ヴィターレ・バルベリス・カノニコ(VBC)”のブルーノ・ランディ氏とともに、この春夏の着こなしを、生地を軸に語り合った。

FASHION May 2,2024
“ポール・スチュアート”と“ヴィターレ・バルベリス・カノニコ”が生み出すスタイル、その真髄を担い手たちが語り合う

「大人のお花見」と題された、“ポール・スチュアート”と、イタリアのファブリックメーカー“ヴィターレ・バルベリス・カノニコ(VBC)”が共催するスペシャルトークショー。シャンパーニュメゾン“ボランジェ”の「ロゼ」が振舞われる中、お互いに旧知の仲という“ポール・スチュアート”ジャパンディレクターの鴨志田康人氏と、“ヴィターレ・バルベリス・カノニコ”事業開発部取締役のブルーノ・ランディ氏との対話は、次第に深みのある領域へ。会場ではその言葉を漏らすまいと、真摯に耳を傾ける紳士の姿が多く見られた。

長く愛用できる生地づくりゆえの、英国性

“ポール・スチュアート”と、イタリアのファブリックメーカー“ヴィターレ・バルベリス・カノニコ(VBC)”が共催するスペシャルトークショーの様子の画像
トークショー冒頭、“ボランジェ”の「ロゼ」で乾杯するメンバー。左より、“ヴィターレ・バルベリス・カノニコ”PR&マーケティングアドバイザーの長谷川喜美氏、“ヴィターレ・バルベリス・カノニコ”事業開発部取締役のブルーノ・ランディ氏、“ポール・スチュアート”ジャパンディレクターの鴨志田康人氏、“ポール・スチュアート”メンズチーフデザイナーの佐藤浩之氏。(写真提供:三陽商会)

「それでは、まず現在の“VBC”を知る映像から始めましょう」。MC役を務める“ポール・スチュアート”メンズチーフデザイナー、佐藤浩之氏の言葉で、会場では“VBC”の生地づくりの様子などを収めたビデオが流された。

「“VBC”としては、“ポール・スチュアート”とコラボレーションしているテーマのひとつが、サステナビリティなのです。先のビデオには、工場で働く人をサポートする器具なども映っていましたが、そうした労働環境をより安全に、快適にすることも、“VBC”が追求するサステナビリティであり、その根底にある理念が、よりよい未来のために良いものを長く着るという“ポール・スチュアート”の姿勢と合致しているのです」。

ビデオに併せて、“VBC”のPR&マーケティングアドバイザーの長谷川喜美氏は、両社の関係について解説した。続いて鴨志田氏からは、“VBC”製品(生地)の特徴について話が及んだ。

「“VBC”は数あるビエラの生地メーカー中でも、もっともビジネスマン寄りの生地をつくっています。長く愛用できる、10年20年着られる耐久性を持った生地というのが、バルベリス(VBC)の良さですね。そして、それらは極めて英国的なテイストのものが多いのです。私はイタリアのサルトリア(仕立て屋)で仕立てることが多く、その場合英国寄りの生地を好んで選ぶのですが、英国生地だと思い選んだものが、実はVBC製であることが多々あります」

こうした鴨志田氏の言葉を受けて、“VBC”のランディ氏も次のように言葉を継いだ。

「鴨志田さんがおっしゃる通り、“VBC”は最も英国的なファブリックをつくる、イタリアのファブリックメーカーです。そして現在も伝統的な製法を用いて、ファブリックを製造しています。そうして仕上がった生地は、長くご着用いただける、非常に継続性があるクオリティの高いものとなるのです」

フレンチ・リビエラがテーマの春夏

“ポール・スチュアート”と、イタリアのファブリックメーカー“ヴィターレ・バルベリス・カノニコ(VBC)”が共催するスペシャルトークショーの様子の画像
コーディネイトを解説する鴨志田氏。向かって右と中央が、今季のコレクションラインのもので、「フレンチ・リビエラ」がテーマ。左は鴨志田氏が“VBC”に依頼してつくられた生地を使ったスーツ。

「長く着用できる、クオリティが高い生地の好例といえるのが、今季展開している『フレンチ・リビエラ』という、『21マイクロン』ウールでつくられたクロスです。フランスのリゾートにインスピレーションを得たこのクロスが表現するのは、昔ながらの堅苦しいエレガンスではなく、現代的なリラックスしたエレガンスです。さらにこの『21マイクロン』は市場トレンドに逆行した、スーパー何々の数値に表現できない、太い糸を使ったシリーズでもあります」

この春夏に展開するファブリックについて説明するランディ氏。「フレンチ・リビエラ」はまた、今季の“ポール・スチュアート”のジェネラルテーマでもある。

「1920年代から30年代のパリは、ヘミングウェイらのロストジェネレーションといわれた作家たち、または芸術家たちが集っていました。そしてアメリカ人や英国人がこぞって南仏のリゾートに旅行に行ったり、住み着いたりしました。そんな彼らの優美なスタイルがテーマです。簡単に言えば通常よりもちょっと派手なフォルム。ラペル幅が広かったり、パンツのシルエットもちょっと太めのものとか、違うシェイプ、違うカッティング。そうしたリラックスしたスタイル、ドレスアップしたいけど決してビジネスライクにはしたくないという感じが、今求められているという思いがあります」

“ポール・スチュアート”と、イタリアのファブリックメーカー“ヴィターレ・バルベリス・カノニコ(VBC)”が共催するスペシャルトークショーの様子の画像
「フレンチ・リビエラ」がテーマの今季の“ポール・スチュアート”コレクションライン。ライトブルーのセットアップにあしらったスカーフや、ディナースーツのインナーなどは、往時の装いから着想されているという。

そして鴨志田氏は、会場に設置されたマネキンが着用している、今季の“ポール・スチュアート”の装いについて解説した。

「この中央のマネキンのコーディネイトは、フレンチ・リビエラスタイルを今に置き換えたら、ということをイメージしています。“VBC”のウールリネン(21マイクロン)を使ったセットアップです。こういうライトブルーの上着は、普段でしたら白いパンツやデニムなどと合わせれば着やすいでしょうけど、たまにはセットアップで着るというのもいいのではないでしょうか。大人だからこそ、バカンスでの夜の食事とか、そういうシーンでこんな雰囲気は、今ありかなと。このスカーフもオリジナルでつくっていて、アールデコ調の雰囲気にしています」

また、3体あるうちの右側のマネキンが着用している、ベージュカラーの、拝絹がついていないショールカラーのディナースーツには、Tシャツなどを合わせてもいいのではと鴨志田氏。この日のインナーには、胸元をレース(紐)で締めるようなシャツが合わせられていたが、これはフレンチ・リビエラ華やかなりし当時のイラストをもとにつくったという。鴨志田氏は「ヴィンテージ感あるものですが、それが今かっこいい」と説明した。

“ポール・スチュアート”と、イタリアのファブリックメーカー“ヴィターレ・バルベリス・カノニコ(VBC)”が共催するスペシャルトークショーの様子の画像
鴨志田氏が“VBC”に依頼し製作した生地を使ったスーツ。通気性やストレッチ製がある生地は、日本のような気候でも活躍すると鴨志田氏は語る。

さらに左端のマネキンが着用していたチャコールグレーのスーツも“VBC”の生地を使用したもの。鴨志田氏は次のように説明する。

「一見ベーシックに見えますけど、通気性が良く、ストレッチ性もあってシワができにくい生地です。もともとイタリアで贔屓にしているサルトリア(仕立て屋)で見つけた生地があって、それをつくっていたのが“VBC”だったんです。早速マーチャント(生地商)に連絡して在庫を買取り、それをベースにこの生地をつくりました。控えめな印象ですが本当に着やすいので、ビジネスシーンで活躍すると思いますし、僕も本当に気に入っているものです」

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