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オーセンティックバーのような車中で、老舗の蔵元「木内酒造」の酒をゆったり味わいながら、ビールやウイスキーの蒸留所や日本酒の酒蔵をバスで巡る。左党にとっては至福の東京発日帰りガストロノミーバスツアーが、4月1日にスタートする。「木内酒造」のお膝元である自然豊かな常陸野の風土と出会い、この地が生んだお酒や食の奥深さを発見する旅でもある。今回は、運行スタートに先立ちプレス向けに開催されたモニターツアーに参加。ひと足先に、酒好きにとっては魅惑のツアーを体験した。
ジャパニーズクラフトウイスキーの評価が世界的に高まる中、本格設備を整えた蒸留所がポツリポツリと全国に誕生している。これまで幾多のクラフトディスティラリーを訪ね歩いたが、近頃は日本酒の酒蔵が、清酒製造の経験をいかし、ウイスキー造りに挑むことも増えてきた。関東圏では、銘酒菊盛などを製造する木内酒造の「日の丸ウイスキー」がよく知られている。
木内酒造は1823年(文政6年)に創業。常陸野の天然の恵みをいかし、酒造りに最適な風土に根ざした酒造りを続ける老舗の蔵元である。
チャレンジ精神も旺盛で、1996年に発表した「常陸野ネストビール」は、今では世界中で親しまれ、2016年には「日の丸ウイスキー」の製造をスタートしている。
創業200年を迎え、次なる試みとして4月1日から運行を始めるのが、東京駅と木内酒造の蒸留所・ブルワリー・酒蔵をつなぐ、バーカウンター付き木内酒造専用バスツアー「BAR BUS HITACHINO」だ。
当日は実際のツアー同様、東京 鍛冶橋から出発したが、集合場所で迷うことはなかった。常陸野の風景をイメージしたというグリーンをベースに、木内酒造のトレードアイコンであるフクロウマークをあしらったラッピング・デザインはとにかく目立つ。迷いようがなかったというのが正しい。デザインはブランディングの仕事を数多く手掛けるDRAWERの池田充宏氏が担当。手の痕跡が残るロゴには、クラフトを大切にする木内酒造の酒造りにおけるが表現されている。
中に入ると、バスの車内とは到底思えない世界が広がっていた。通常のバスの座席がすべて撤去され、中央にはタップ付きのバーカウンターを配置。車窓とお酒を愉しみながら、ゆったりと寛げるようにレイアウトされている。しかも、このツアー、乗車後すぐにテイスティングできるため、出発を待つ停車時間中から、木内酒造の、バラエティに富んだ数々の銘柄をフリーフローで愉しめるという太っ腹。常陸野ネストビール(2種)、日の丸ウイスキー(ストレート/ロック/ハイボール)、日の丸ジン蔵風土ソーダ割、木内梅酒(ストレート/ロック/ソーダ割)という豪華ラインナップに加え、ソフトドリンクも用意されている。
インテリアデザインは、トランクホテルをはじめとする都会的な大人の遊び場を多く手がけてきたジャモアソシエイツが担当し、常陸野ネストビールの「ネスト」にちなみ鳥の巣をイメージした空間。オーセンティックバーのようにゆったりお酒を楽しめる居心地の良い空間を完成させた。
今回のツアーで目指すのは木内酒造のある「常陸野」。あまり耳馴染みがないかもしれないが、現在のほぼ茨城県にあたる地域の俗称とのこと。日本最古の地理書『風土記』には、「土地が広く、海山の産物も多く、人々は豊かに暮らし、まるで常世(極楽)のようだ。」と記載されている。最初の目的地、八郷蒸溜所のある石岡市は常陸国の国府が置かれていた地域であり、当時の東日本の中心地だったという。
様々なお酒を愉しみながら、約2時間後に「日の丸ウイスキー」、「日の丸ジン蔵風土」を製造する、八郷蒸溜所に到着した。本格的に製造量を増やすにあたり2020年に新造され、蒸留棟にはポットスチルとハイブリッドスチルを兼ね備えている。八郷は筑波山の東麓に位置する、豊かな水源と自然に恵まれた土地。蒸留所からの眺望も素晴らしく、東の富士と呼ばれる筑波山の姿形は絶景だ。
八郷蒸溜所の敷地内には、常陸野ポークをまるごと一頭仕入れ、生ハムやソーセージに加工する「常陸野ハム工房 BARREL SMOKE」を併設。仕上げのSMOKEに、日の丸ウイスキーを熟成させたオークバレルBARRELを使い、香味と芳醇な味わいの自家製シャルキュトリと、天然酵母のパンの軽食を愉しんだ。
STAFF
Writer: Masahiro Ando
Editor: Atsuyuki Kamiyama
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