（2ページ目）「ポナン」クルーズで廻った瀬戸内海で、日本の建築と暮らしの原風景を探検

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尾道

「ルソレアル」は、歴史のある寺院や神社が多く、瀬戸内の島々をしまなみ海道の橋で結ぶ美しき港町、尾道へと向かう。いにしえの時代から交易で栄えた尾道は、町が山に向け立体的に広がったことにより、細い路地が入り組み、坂や石段が連続する。ランドツアーでは、迷路のような道を経て高台に上がると、千光寺や浄土寺といった歴史的建造物から、市街や瀬戸内海を一望できた。小津安二郎監督の「東京物語」をはじめ、映画のロケ地としても頻繁に使用され、港町・尾道の叙景は多くの日本人の心に刻まれることとなった。

千光寺からの絶景の画像 — 千光寺からの絶景。左奥には、尾道水道をはさんだ尾道と向島を結ぶ尾道大橋の姿も。

御手洗

エクスペディションで一番印象に残ったのは、未踏の地であった大崎下島の港町、御手洗だ。鞆の浦同様、石造りの雁木階段など港町ならでは絶景を今にとどめる。風待ち港として繁栄したことから当時は花街があり、その跡地を見ることができる。現在も19世紀に建造された木造家屋の立ち並ぶ古い町並みは、日本の港町の原風景であり、その空気は郷愁をさそう。

「若胡子（わかえびす）屋」跡の画像 — 花街であった時代の雰囲気をとどめる「若胡子（わかえびす）屋」跡。茶味としての規模が島内で最も大きく、最盛期には約100人の遊女を抱えていたといわれる。

下蒲刈島・萩

御手洗の後は、下蒲刈島に立ち寄り、続いてデッキから厳島神社のある宮島の海岸線を見ながら、瀬戸内海を横断し、関門海峡を通って、日本海に面した萩に錨泊。日本の伝統が一つに凝縮されたこの町のランドツアーを楽しんだ。

下蒲刈島・萩の画像 — 左／粋な純然たる日本家屋に下蒲刈島の長い歴史が宿る。　右／日本の再発見の地として多くの日本人に親しまれる萩。境内では高杉晋作や伊藤博文が幼少の頃に遊んだといわれる、真言宗御室派月輪山円政寺。十二支の彫刻を施した金毘羅社社殿がある。

対馬・麗水

対馬の画像 — 原生林が多く、神秘的なスポットが点在。ツシマヤマネコや対州馬など対馬固有の生き物も多い。

旅も終盤に差し掛かる。萩を出航し、九州と朝鮮半島の間に浮かぶ国境の島、対馬へ寄港する。南北約82km、東西約18kmの島の約9割が山林で、原生林やリアス式海岸などが織りなす類を見ない大自然に圧倒される。石垣の城壁で知られる金田城をはじめ歴史的建造物などの見どころも豊富。対馬ではシーカヤックのアクティビティに乗船客の多くが参加し、慣れた様子でパドリングを行いながら対馬の自然を満喫した。対馬を出航すると、対馬海峡を経由し、韓国の国際的な都市、麗水に寄港。その後、福岡で冒険はゴールを迎えた。

港町は海からの景色がもっとも美しい

瀬戸内海をこれほど長く、そして深く考察できるのは、こうしたエクスペディション・ツアーだけの愉悦であることは紛れもない事実だ。港町は航海者や冒険者のために開かれた土地であり、いにしえの異邦人の目線でみると、長い航海の果て、闇に沈む大地の影に華やかな明かりの灯る光景はいかに幻想的であり、安堵感をもたらしたことか。

「ポナン」のエクスペディション、日本人が発見できなかった、リアルなディスカバー・ジャパンの新たな冒険スタイルといえるだろう。