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英国人俳優テオ・ジェームズを起用し、英国のグッドウッド・サーキットで撮影された“チャーチ”の2026年秋冬のキャンペーンヴィジュアルからは、現代において革靴を巧みに着こなすための、さまざまなアイデアを読み解くことができる。
秋の装いががぜん気になり始めるこの時期、各メゾンやブランドがさまざまなビジュアルを打ち出している中で、英国靴の老舗“Church’s(チャーチ)”のそれは示唆に富んでいる。スニーカーがメンズワードローブの中で定番化し、エフォートレスなスタイルが一般的になる一方で、大人の男性がどのように革靴を装ったらいいのか、ちょっとロストしているというか、適度なバランスを掴みきれていないように見える。今回の“チャーチ”のキャンペーンビジュアルには、いま革靴と付き合うためのアイデアが散りばめられているように感じられる。

英国人俳優テオ・ジェームズを起用したヴィジュアルは、英国ウエストサセックス、リッチモンド公爵家の居城グッドウッド・ハウスに隣接するグッドウッド・レーシング・サーキットで撮影されている。1948年のオープン以来、数々のカーレースが行われ、現在でもクラシックカーのレースなどが開催されている由緒ある場所。そしてジェームズとともに撮影されているクルマはアストンマーティンDB5。プレシャスなクラシックカーを愛好する英国紳士像が、多少のユーモアとともに、象徴的に表現されている。

そんなキャラクターがクルマと合わせるように履いているのが、ペニーローファー「Farsley」とダービーシューズ「Sidbury」。「Farsley」は、靴の外周部にボリューム感があるストームウェルト仕様とラバーソールを採用して、本来軽快なカジュアルシューズであるローファーに、クルマの存在感にも通じるタフな風合いを加えている。「Sidbury」は、4アイレット(ホール)の外羽根のデザイン、さらにアッパーにはココアパウダーブラウンのスエードを使って、英国のカントリースタイルの流れを汲む、オーセンティックなカジュアルシューズといえる。ビジュアルと併せて公開されたムービーでは、ジェームズはこの靴を履いてアストンマーティンを押しがけしていた。そんな活動的な雰囲気が、確かにこの「Sidbury」からは感じられる。また、「Farsley」も「Sidbury」も、厚みと丸さがあるトウ(つま先)形状で、これもブルゾンなどのアイテムや、ツイード素材など、カジュアルシーンで活躍する服との相性がよい。

ジェームズが表彰台上でシャンパンを開けるパフォーマンスの際に履いているのは、オックスフォードシューズ「Skipton」。キャップのない内羽根のデザイン、ステッチを見せないレベルソ仕様のヴァンプライン(甲部の切り返し)と、それだけだとかなりミニマルなデザインだが、つま先やかかと、そしてヴァンプラインにパーフォレーション(穴飾り)を配して、クラシックなドレスシューズらしさを巧みに付加している。仲間うちのセレモニーなど、適度なフォーマル感を求められる際には、うってつけだろう。紳士の正統派ドレスコードに拠るならば、フォーマルな場で選ぶ靴のスタイルはキャップトウオックスフォード(ストレートチップ)ほぼ一択だが、近年は一枚革のホールカットスタイルや、紐や装飾のないスリップオンの靴を、ミニマルな存在感からドレッシーな靴として扱う傾向がある。「Skipton」はそんな時代の要請とオーセンティックなドレスシューズのあり方をバランスした好例といえそうだ。

秋冬シーズンに似合う革靴として挙がるのは、やはりブーツ。今回の“チャーチ”のヴィジュアルでも2種のブーツが含まれている。まずはスマート&ドレッシーなチェルシーブーツ「Stanhope」。今回のヴィジュアルやムービーでは、ジャケット&トラウザーズにこの「Stanhope」を合わせ、即席ティータイムを楽しむ様子が描かれている。チェルシーブーツは乗馬文化から導かれたクラシックなスタイルゆえに、ジャケットやスーツなどのテーラードウエアとも相性がよい。またアッパーデザインとしてはヒモや切り返しも少なく、そのミニマルなルックスゆえに、現代の装いとも組み合わせやすいといえる。

もうひとつのブーツが、レースアップのダービーブーツ「Sidley」。パドックエリアでくつろぐ、コットンブルゾン姿のジェームズの足元に選ばれていたが、カントリーブーツとワークブーツが融合したような存在感が、往年のワークウエアをリファインしたような、現代のエフォートレスな服と好相性だ。そして、例えばガレージのような、「ラギッド(武骨)」といえるようなシーンや装いを連想させるこうしたブーツは、いつの時代も男性を惹きつける魅力がある。

さて、ここまで“チャーチ”の2026年キャンペーンビジュアルとそのセレクションを読み解いてきたが、取り上げられていたローファー、ダービー、オックスフォード、チェルシーブーツそしてダービーブーツという5種のスタイルは、そのまま現代のライフシーンに対応し得る、有効な革靴の選択肢ともいえそうだ。最近どのような革靴を選んだらいいかわからない、または革靴に興味を持ち始めたという方は、こうしたヴィジュアル、その中での靴のチョイスを起点に、自身の靴を考えてみてもいいかもしれない。
AUTHOR
『エスクァイア日本版』(エスクァイア マガジン ジャパン)編集部を経て、『メンズプレシャス』(小学館)などでメンズファッションやデザインプロダクト、カルチャー等の企画を担当。それらの傍ら、紳士靴の雑誌『LAST(ラスト)』を創刊し編集長を務める。現在は『Advanced Time』本紙とオンラインのほか、さまざまなメディアにて、ファッションやライフスタイル分野でエディターまたはライターとして活動している。
STAFF
Writer: Yukihiro Sugawara
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