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零度をはるかに下回る極地でも、赤道直下の南洋諸島でも、寄港地上陸の要となるのが写真左のゾディアック(ゴムボート)。船尾からそのまま乗り込めるのは、大型客船では不可能な、『ポナン』らしい特徴のひとつだ。対馬では希望者によるカヌーツアーが催行され、浅茅湾(対馬市美津島町箕形)の無人島へ上陸して楽しんだ(写真右)。年齢も国籍も関係なく、世界の海で遊んできたセレブリティの漕ぎっぷりは、さすがに力強い。
『ポナン』では、ほとんどのサービスがクルーズ代金に含まれていて、飲食もわずかな例外を除き(アルコール飲料も含め)オールインクルーシブとなっている。基本はフレンチスタイルだが、クルーズによっては、現地での食材調達や郷土料理なども供される。今回のクルーズでも、寿司、刺身、日本酒などが、瀬戸内海の美味を中心にふるまわれた。
わずか200有余人の乗船客に対し、これほどのクオリティで楽しませてくれるクルーズ船はなかなかないだろう。パリで活躍するダンサーによる日替わりのショー(写真下『フレンチカンカン』)や、乗船客も参加する各種のダンスタイム(写真左上『ソーシャルダンス』)、日本舞踊の披露(写真右上)など、飽きさせない趣向が続く。無論、歌舞音曲のみならず、特別ゲストとして乗船していた作家のアレックス・カー氏による詳細な寄港地解説があるなど、知的エンタテインメントにも抜かりは無い。
1988年に創業した『ポナン』。わずか16室の贅を極めた帆船『ル ポナン』を筆頭に、世界初の極地クルーズ用豪華客船、シスターシップシリーズ4隻(瀬戸内海を巡ったのは『ル ソレアル』)のほか、極地観測船レベルの機能を備えた砕氷客船など13隻を持つ。環境配慮も先進的で、建造中の新船は環境負荷を極限まで減らしたエコデザインとなる予定だ。
ヒューマンスケールの豪華クルーズ『ポナン』でしか成し得ぬ船旅が、2024年3月30日~4月6日(7泊8日)に再び催行される(出発地は神戸港に変更)。知日派の外国人乗客とのコミュニケーションを楽しみながら、日本を新しい視点で楽しむ知的なクルーズが、無二の体験を約束する。
> 異邦人のアングルから日本の港町風情を再発見する「ポナン」のクルーズ
> 海運の要衝として栄えた瀬戸内海の港で日本の建築と暮らしの原風景を探検
初出:2023年7月1日発行『AdvancedTime』17号。掲載内容は原則的に初出時のものです。
STAFF
Photos, Writer&Editor: Atsuyuki Kamiyama
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