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ラグジュアリークルーズ「ポナン」で巡る冒険の旅。大阪港の船出は夕刻だった。美しい葡萄色の夕闇に染まる湾岸の港景色。そして神戸の鮮やかな夜景パノラマを右舷に見ながら、明石海峡大橋を経て、日本最大の内海である瀬戸内海を「ル ソレアル」は、悠然と西へと進む。海から見る日本再発見の探検の幕が開けた。
「ポナン」最初の寄港地は、岡山県唯一の有人島である犬島だ。
周囲3.6kmのこの小さな島は、100年以上前に銅の採掘や精錬で栄え、最盛期の1910年代には面積0.54k㎡の島内に約5000人が居住していたという。「ベネッセアートサイト直島」の一環として、2008年には製錬所の煙突やカラミ煉瓦といった遺構を使って再生した「犬島精錬所美術館」が開館。2010年には犬島「家プロジェクト」がはじまる。島には多くのアート作品が点在していることから、現代アートの島として世界的に名高い。約200名の乗客の大半がフランスを中心とした海外からの参加者であり、犬島に上陸後は、過去と現在が融合する製錬所島跡とアートの共生を記憶に焼き付けた。
犬島を出て次に向かったのは、宮崎駿監督のアニメ映画「崖の上のポニョ」の舞台とされる町、として知られる、鞆の浦。江戸時代には北前船の寄港地としても栄え、朝鮮通信使も頻繁に寄港するなど、古くから海運の要衝として繁栄した場所だ。
湾内に「ル ソレアル」が入港できないため、離れた海上で錨泊。船尾から直接乗り込めるゴムボート「ゾディアック」を使い、「雁木」と呼ばれる、階段のような船着場から上陸する。鞆の浦は「潮待ちの港」、「風待ちの港」として江戸時代に栄華を誇った港町であり、日本一の景観とうたわれた瀬戸内ならではの多島美でも知られる。幕末から160年もの間、港を見守る石造りの「常夜燈」や、港を中心に家々が箱庭のように集まる近世港町のたたずまいが今も残る。ゆったり時の流れる空気に緊張感もほころぶ。鞆の浦には陸側から出かけたことはあるが、港町風情や立体的な景観美は、海洋から望む方が圧倒的に情緒的かつ美しかった。
STAFF
Writer: Masahiro Ando
Photos&Editor: Atsuyuki Kamiyama
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