「ポナン」クルーズで廻った瀬戸内海で、日本の建築と暮らしの原風景を探検

ラグジュアリークルーズ「ポナン」で巡る冒険の旅。大阪港の船出は夕刻だった。美しい葡萄色の夕闇に染まる湾岸の港景色。そして神戸の鮮やかな夜景パノラマを右舷に見ながら、明石海峡大橋を経て、日本最大の内海である瀬戸内海を「ル ソレアル」は、悠然と西へと進む。海から見る日本再発見の探検の幕が開けた。

LIFESTYLE Aug 9,2023
「ポナン」クルーズで廻った瀬戸内海で、日本の建築と暮らしの原風景を探検

港景色の画像
水面をブルーに染める「神戸ハーバーランド」のランドマーク「モザイク大観覧車」。海上から見るとより幻想的であり異国情緒を感じる。

歴史に触れながら瀬戸内海を巡る知的冒険へ

犬島

旧犬島精錬所の煙突の画像
青空をつらぬく旧犬島精錬所の煙突。周囲に遮るものはなく、デッキから見る遠景もまるでオブジェのようだ。

「ポナン」最初の寄港地は、岡山県唯一の有人島である犬島だ。

周囲3.6kmのこの小さな島は、100年以上前に銅の採掘や精錬で栄え、最盛期の1910年代には面積0.54k㎡の島内に約5000人が居住していたという。「ベネッセアートサイト直島」の一環として、2008年には製錬所の煙突やカラミ煉瓦といった遺構を使って再生した「犬島精錬所美術館」が開館。2010年には犬島「家プロジェクト」がはじまる。島には多くのアート作品が点在していることから、現代アートの島として世界的に名高い。約200名の乗客の大半がフランスを中心とした海外からの参加者であり、犬島に上陸後は、過去と現在が融合する製錬所島跡とアートの共生を記憶に焼き付けた。

「家プロジェクト」から生まれたアートの画像
「家プロジェクト」から生まれたアート群。犬島の古い町並みを歩いていると、住宅地などに忽然と出現する。ここは島全体が美術館だ。

鞆の浦

鞆の浦の画像
乗客はゴムボート「ゾディアック」に分乗して陸を目指す。静かに佇む建築物や「常夜灯」が繁栄の様相を現代に伝える。

犬島を出て次に向かったのは、宮崎駿監督のアニメ映画「崖の上のポニョ」の舞台とされる町、として知られる、鞆の浦。江戸時代には北前船の寄港地としても栄え、朝鮮通信使も頻繁に寄港するなど、古くから海運の要衝として繁栄した場所だ。

船着場から乗客たちがのぼる画像
船着場から乗客たちがのぼる、段になった部分が「雁木」。

湾内に「ル ソレアル」が入港できないため、離れた海上で錨泊。船尾から直接乗り込めるゴムボート「ゾディアック」を使い、「雁木」と呼ばれる、階段のような船着場から上陸する。鞆の浦は「潮待ちの港」、「風待ちの港」として江戸時代に栄華を誇った港町であり、日本一の景観とうたわれた瀬戸内ならではの多島美でも知られる。幕末から160年もの間、港を見守る石造りの「常夜燈」や、港を中心に家々が箱庭のように集まる近世港町のたたずまいが今も残る。ゆったり時の流れる空気に緊張感もほころぶ。鞆の浦には陸側から出かけたことはあるが、港町風情や立体的な景観美は、海洋から望む方が圧倒的に情緒的かつ美しかった。

福禅寺の対潮楼から見る仙酔島や弁天島の画像
その絶景から日東第一形勝とうたわれた福禅寺の対潮楼は、江戸時代,朝鮮通信使の迎賓館として使用され、幕末には「いろは丸事件」の談判のため坂本龍馬も訪れた場所。正面には仙酔島や弁天島が浮かび、絵画のように美しい。ユネスコ世界記憶遺産に登録された。
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