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一通の招待状から始まる特別な体験。そこではBMW i7xDrive60が豊かな時間を与えてくれた。ジャーナリストの長谷川喜美さんがBMWが生み出す新たな未来のラグジュアリーを体験する。
BMWから一通の知らせを受け取った。
BMWのフラッグシップ、新しい7シリーズが発表される。
その招待状を見て、驚きを感じずにはいられなかった。7シリーズにとって7回目のモデルチェンジとなるこのモデルは、初の完全電動ラグジュアリーセダンであり、全く新しいBMWが描くラグジュアリーを提案するというのだ。
果たしてそんなことが可能なのか?
驚いたことには、この招待状に慣れ親しんだスローガン、「駆け抜ける歓び(Sheer Driving Pleasure)」の文字はない。
BMWは歴代の3シリーズから8シリーズまで様々に経験している私だが、どの車にも共通しているのはスポーティーなデザインとドライビング・プレジャー、運転する喜びだ。以前、AdvancedTimeに掲載されたBMW i4 M50の記事でも書いたように、この言葉はBMWの製造理念の根幹を体現している言葉でもある。
今回のTHE 7とともに謳うスローガンは、「Forwardism(フォワーディズム)」。
この言葉の真意はどこにあるのか。
THE7:i7 xDRIVE60との新たな発見に胸を躍らせつつ、発表会の会場である福岡へ飛んだ。
福岡会場に到着すると、カバーをかけられた2台のTHE7が中央に鎮座し、今まさに舞台で目覚めるのを待っている。会場の入り口には、あのスローガンが飾られている。
「Forwardism
時代を創る、騎手であれ。
フォワーディズム
それは、時代を切り拓く者たちが持つ姿勢。
未来のために行動し、さらなる高みを目指すこと。
それが、成長であると信じること。
自分だけでなく、周囲の人々も豊かにすること。
そして、いつまでも、前進し続けること。
The New Era of BMW Luxury」
発表会会場となったTHE 7とForwardismの文字が暗い照明の中に浮かび上がる。まずルイナールのシャンパーニュで喉を潤し、エグゼクティブシェフによるフィンガーフードを堪能していると、眩い光の中から、待望の2台の7シリーズが姿を現した。
プロダクト・マネジメント・マネジャー御舘康成氏のプレゼンテーションにより、THE 7の全貌が明らかになる。
ドイツ、南部ミュンヘンに本社を置くBMWが今、この時代に「Forwardism」という言葉を選んだのは不思議ではない。それはBMWが目指す自動車の先進的な未来を予見させる言葉だからだ。
海外、特にヨーロッパに取材に行くと強く感じるのが人生に対する価値観の違い、「クオリティ・オブ・ライフ」への問いかけである。
人生にとって重要なことは何か。
彼らはクオリティに妥協することなく、サスティナビリティの重要性を追求する。同時に、それは自らの幸福の追求のみならず、社会への前向きな貢献、自然環境や地球環境への寄与といった哲学にも通じている。
この新しいi7 xDRIVE60は、このような全く新しい価値観をもつ富裕層へ向けて作られた、BMWの哲学が提案するラグジュアリー、豊かさの表現なのである。
ライトアップされたi7 xDRIVE60から、まず目に入るのは各ピラーの延長線上が一点で交わる均整の取れた美しいプロポーションだ。そのスタイリングは今まで知っている7シリーズではない。しかし、ロングホイールベース、ボンネットが長く、いわゆるシャークノーズを持つボディは、ラグジュアリー・セダンの伝統を継承し、プロポーションの黄金比率を保っている。私達の目は古代エジプトのピラミッドの時代から黄金比率を無意識に美しいと感じるようにできている。スタイルに正統性を感じるのはそのために違いない。
だが、機械工学的な妥協をせず、内燃機関車とは全く異なる設計の電気自動車(BEV車)で、これを実現するのは実は難しい。BMWは2013年から革新的な電気自動車システムBMW iシリーズを開始。現在に至るまで、電気自動車製造の知見を積み重ね、理想的なプラットフォームを追求してきたからこそ、電気自動車でありながら、ラグジュアリーセダンに相応しいプロポーションを可能にできたのだ。
特徴的な大型のキドニー・グリルは強い存在感を放っている。フロントにエンジンが無いこの車で、このシャークノーズは高い衝撃吸収性能をも有している。BMWを知るものなら誰もが知っている、丸目4灯の「ツイン・サーキュラー」は現代的に解釈されたダブルヘッドライトを備え、スワロフスキー製クリスタルの下部にスリムなライトストリップとして配置されている。
今までにない、圧倒的な存在感はオキサイド・グレーとタンザナイト・ブルーの2トーン塗装からも伝わる。流麗なスタイリングを強調するコーチラインは全て手作業で入れられている。
この特別な外観に相応しく、前後部席共にスイッチ一つで開閉できるオートマチックドアが標準装備されている。ウェルカム・ライト・カーペット、挟み込み防止のセンサーを備え、ドアを開ける瞬間からラグジュアリーな体験を演出する。
STAFF
Text: Yoshimi Hasegawa
ジャーナリスト。イギリス、イタリアを中心にヨーロッパの魅力を文化の視点から紹介。メンズスタイル、車、ウィスキー等に関する記事を雑誌を中心に執筆。最新刊『サルトリア・イタリアーナ(日本語版)』(万来舎)を2018年3月に上梓。今年、英語とイタリア語の世界3カ国語で出版。著書に『サヴィル・ロウ』『ハリスツィードとアランセーター』『ビスポーク・スタイル』『英国王室御用達』など。
Instagram:@yshasegawa
Photos: Kazumi Ogata
editor: Atsuyuki Kamiyama
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