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日本が好き、知りたい、見てみたい。 北欧・スウェーデンで生まれ、日本に魅せられ、18年前に来日。庭師として生活しながら『みんなで筋肉体操』『カムカムエヴリバディ』などで一躍注目を浴び、俳優としても活躍中の村雨辰剛さん。その素顔と〝今〟と〝これから〟に迫ります。
「気持ちが入るんですよね、着物を着ると」
私服のラフなデニム姿から一変して、着物に着替え、カメラの前に立ちながらそう語るのは庭師・モデル・俳優など、多彩に活躍する村雨辰剛さん。
プライベートでも仲がいいという呉服店「銀座もとじ」の泉二啓太さんが選んだ濃紺の地紋入りの着物は、村雨さんの鍛え抜かれた体にしっくりと寄り添い、立ち姿も美しい。
「本当は毎日着ていたいけれど、日常的に着物を着るのはやはり難しいですよね。いつか洋服のように自然に着こなしてみたいです。着物には日本の文化が凝縮されています。四季を大切にする心や相手への敬意が込められていながら、着心地がよく、日本の気候にも合っている。理にかなっているんですよ。もっとみんなが気楽に着物を楽しめたらいいのになと思うと、もったいないですよね」
そう、この日、彼が何度も口にしたのが〝もったいない〟という言葉。
「〝もったいない〟って、素敵な言葉だと思います。今、築60年ほどの日本家屋に住んでいますが、さらに自分でも古いものを集めています。茶簞笥や囲炉裏、掛け軸など、オークションサイトで見つけて、少しずつ購入してきました。傷んでいるものもありますが、それも〝味〟。自分でリペアして使っています。たとえば100年前のものなら、当時の人はどう使っていたのか、物語や背景を想像するのも楽しくて。何代にもわたって、ものを大切にする日本の〝もったいない文化〟はとても素敵です。そんなものたちに囲まれて、愛猫と一緒にゆっくりコーヒーを飲む時間は、僕にとって〝あぁ、もったいないなあ〟としみじみ感じる、くつろぎのひとときです」
幼少のころから、世界の歴史が好きで、とりわけ独特の文化をもつ日本への憧れが強かった。
「島国ならではの鎖国という歴史や、大陸に影響を受けながらも、独自に発展した文化がたくさんあって、それが今も残っている。知れば知るほど不思議な国だな、本当に面白いなと思います。個性的な武将たちが活躍する戦国時代の話にはワクワクしますし、武士道の考え方にも惹かれます。自然を愛し、厳しさや変化もあるがままで受け入れる精神や、わびさびの心、あらゆるところにさりげなく根付いている、日本独自の美意識に心打たれます」
語学が得意だったこともあり、スウェーデンにいながら、分厚い和英辞典を抱えて単語を暗記。ラジオやYouTube、チャットなどを駆使して、独学で日本語を学び、16歳でホームステイを経験、19歳でついに日本へ移住。学校も庭師という仕事も、すべて自らの行動で得てきた。
「とにかく日本が好きで、知らない世界を自分の目で見たくて、飛び込んできました。今いる場所に固執しすぎて新しい世界に触れられないなんてもったいない。人生は一度きりだし、時間には限りがある。やらないなんてもったいない。好きだ、やってみたい、と思うなら行動あるのみです。庭師という今の仕事はもっと極めたいし、俳優という仕事ももっともっと学びたい。華道や茶道、陶芸にもトライしたい。初めて日本を訪れてから、18年たった今でも、僕は日本に恋焦がれているんです」
スウェーデン生まれ育ち。幼いころから語学が得意で、外国に興味をもつ。 スウェーデンとは違う環境と文化の中で生活してみたい、という気持ちがきっかけで
日本に興味をもち、日本語を勉強し始め、その上達とともに、いつかは日本で日本人として暮らしたいという目標をもち始める。高校を卒業すると特技である語学の能力を生かし、日本でスウェーデン語や英語の語学講師として働き始める。23歳のときに、もっと日本の伝統文化と関わる仕事がしたいという思いで、造園業に飛び込み、見習い庭師に転身。
26歳のときに、念願の目標であった日本への帰化許可を取得。日本国籍になるとともに、村雨辰剛に改名。2021年のNHK連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』では米軍将校役として出演。NHK Eテレ『趣味の園芸』では、ナビゲーターとしてレギュラー出演中。著書『村雨辰剛と申します。』(新潮社)発売中。
初出:2022年9月24日発行『AdvancedTime』13号。掲載内容は原則的に初出時のものです。
STAFF
Model: Tatsumasa Murasame
Photo: Kazutaka Nakamura
Hair & Make-up: hiro TSUKUI(Perle management)
Text: Miho Tanaka
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