バフェット流、時計の選び方

〝堀（モート）〟のある企業に投資していると繰り返し語っているアメリカの著名投資家、ウォーレン・バフェット。50年で元手を7000倍にし、9兆円近くの資産を築いた投資の神様は、「経済的な堀（エコノミックモート）」という独自の概念を重視する。ライバルが攻め込んできても価値を損なわず、成長を続けられる競合優位性を表す言葉だ。保有する巨額資産の数字ばかり注目されるが、本当の価値を見出して長期保有し、その価値を開花させるのがバフェット投資の本質。〝堀〟はそれを見極める重要な指針となっているのだ。

モノの価値を見出して長期保有するバフェット投資は、腕時計との付き合い方とよく似ている。時計は実用品なので投資先としては適さないが、優れた時計は世代を超えて価値を保存できる。また、時計にはデザインや素材などトレンドがあるので、長い間使っているうちに栄枯盛衰の波に飲み込まれないような目利きも必要だ。それらの時計がバフェットのいう〝堀〟を備えていれば、賢い選択といえるだろう。例えば、特許などの無形資産や顧客のロイヤルティを高める囲い込みだ。そこで今年の新作時計の中から、〝深い堀〟を持つ時計を見つけ出した。バフェットなら、きっとこんな時計を選ぶはずだ。

特許・独自技術　他社を寄せつけない圧倒的な技術力

技術革新を繰り返してきた腕時計では、バフェットのいう〝堀（モート）〟は常に意識されてきた。新技術の特許や既存の技術を組み合わせた独自の表現方法で、大きく他ブランドとの差別化が図れるからだ。こうした無形資産はブランドの独立性を保つのにも役立っている。

PATEK PHILIPPE

年次カレンダー・トラベルタイム

年次カレンダーと、第2時間帯を簡単に調整できるトラベルタイムを組み合わせた複雑ウォッチ。常に日付が現地時刻と同期して、時間帯を変更すると日付も前進・後退するなど、新しい機構を開発して８つの技術特許を出願中だ。それをサイドに“クルー・ド・パリ”と呼ばれる彫金技法を施した新しいケースに収めた。自動巻き。18Kホワイトゴールドケース。ケース径41mm。￥9,713,000

VAN CLEEF & ARPELS

レディ & アーペル ユール フローラル ウォッチ

ミニアチュール技法で仕上げられた12個の花の開閉で時刻を表現。花が1つ開くと1時、1時間後にそれが閉じて別の花が2つ開き、2時を示す。日によって花が開く場所はランダムに変わり、ケースサイドに分表示の窓を備える。工芸と技術を高度に組み合わせている。自動巻き。18Kローズゴールドケース。ケース径38mm。￥33,660,000

ネットワーク効果　共通のベースムーブメント

ユーザーが増えるほどにサービスの価値が上がるというのがネットワーク効果による〝堀〟。時計に当てはめると、複数の時計ブランドを擁するグループで共用するムーブメントが挙げられる。グループで共用することで、効率と生産性が上がる。その上で、各ブランドごとにアレンジを施して独自カラーを打ち出している。

IWC

パイロット・ウォッチ・クロノグラフ 「ブルーエンジェルス」

ケースにセミラックを採用し、6時位置にはアクロバット飛行隊を象徴するクレストと米国海軍のマークがあしらわれる。搭載されるクロノグラフはベースムーブメントがグループで共有化されているが、クロノグラフの制御にコラムホールを採用するなど、独自に大きく手が加えられている。自動巻き。ブルーセラミックケース。ケース径44.5mm。￥1,452,000

リシュモングループ内で開発されたクロノグラフの基幹ムーブメントに独自のチューニングを施したIWCのキャリバー69380。

MONTBLANC

モンブラン スターレガシー クロノグラフ 42mm リミテッドエディション1786

ブルーダイヤルでモンブラン山の氷河を表現し、中心部には荒々しい氷河のパターンを施した。リシュモングループのモンブランのクロノグラフは、ベースムーブメントの縦3つ目のレイアウトから、横2つ目へと仕様変更された。限定1786本。自動巻き。ステンレススティールケース。ケース径42mm。￥523,600