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現在、「ジャガー・ランドローバー」は『ディフェンダー』を単なる車種名ではなく、冒険を愛する人々のためにライフスタイルを提案する「独自のアドベンチャーブランド」として展開している。その『ディフェンダー』が、かつての「トロフィー」や「チャレンジ」といった、伝説的なアドベンチャー・コンペティションの精神を受け継ぐ形で、2026年の秋にアフリカで開催するのが『DEFENDER TROPHY(ディフェンダー・トロフィー)』だ。世界規模で行われるこの大会には、70以上の国や地域で行われている予選を勝ち抜いてきた冒険者たちが「グローバルファイナル」に集うわけだ。その日本代表を選ぶために2025年11月、世界に先駆けて「富士ヶ嶺オフロード(山梨県)」で開催されたのが、日本の国内予選だった。


知力、体力、精神力、コミュニケーションスキル、さらには自然への敬意など、冒険者に求められる様々な能力を競い合う『DEFENDER TROPHY』。日本屈指のオフロードコースで繰り広げられた予選会には、200名を超える応募者の中から書類選考(※1)を経て選ばれた男女合わせて24名の挑戦者たちが挑んだ。通過率わずか3.1%という狭き門をくぐり抜けた精鋭たちは、オフロード競技の経験者だけでなく、多様なバックグラウンドをもった冒険者が揃った。この多様性と、ただ単に速さや運転スキルを競うわけではないという競技内容の奥深さが『DEFENDER TROPHY』という大会を、より豊かな存在へと昇華させていた。

そんな予選会を目の当たりにしながら、少し昔のことを思い出していた。20年以上前のことになるが、F1世界選手権のイギリス・グランプリ取材のため、舞台となる「シルバーストーンサーキット」へと向かっているときのこと。サーキット周辺の道路は観戦者たちのクルマがひしめき合っていた。当然ながらそんな渋滞に巻き込まれていたら取材地へは間に合わない。だが主催者側の配慮により、私たちプレスは初代の『ディフェンダー110』を始め、何台ものドライバー付きランドローバー車に分乗し、アップダウンを繰り返すサーキット周辺の雨に濡れた牧草地を、縦横無尽(多分一定のルートは定められていたようだが…)に走り、いともたやすくサーキットに到着した。さしずめその時は、英国貴族が愛用の『ディフェンダー』に乗り、自らの領地を見回るかのような、少しばかり贅沢な気分に慕っていた。
1948年から製造を始めた4WDの「ランドローバー・シリーズ1」に起源を持つ『ディフェンダー』。その類まれなオフロード走破性と耐久性の高さにより、数多くの極限的状況の中で人々の生活を守ってきた。それと同時に地球上のあらゆる地形を走破しようとする冒険家たちを奮い立たせ、多くの伝説的冒険旅行を現実のものにしてきた歴史を持つ。同時にそれは“楽しむためのオフロード走行”という文化を生み出すことにもなった。“4輪駆動車の世界選手権”とも言われ、1980年から2000年までの間に行われたラリーレイド「キャメルトロフィー」は、もっとも過酷な冒険旅行の象徴的な存在として、今も多くの人々の心に残っているはずだ。
そうした伝説的なラリーレイドの歴史的遺産を受け継ぎつつ、現代的なテクノロジーとデザインを取り入れた『ディフェンダー』によって開催する壮大な冒険コンペティションが『DEFENDER TROPHY』だ。

※1:応募資格
となっている。
2025年11月8日~9日の2日間で行われた予選会に参加者した24名は現地でシャッフルされ“3名1チーム × 8チーム”という組分けが行われた。このチーム編成は決して固定ではなく、初日と二日めでメンバーはシャッフルされる。まさに『ディフェンダー』が重視する「誰と組んでも機能する高度なコミュニケーション能力」を試すための編成方法というわけだ。
こうして始まった2日間に渡る予選会の主要タスクは、ノーマルに近い状態の『DEFENDER』を使用して行われた。濡れた火山灰土、浮石、切り立った轍などが連続する富士ヶ嶺の林間ルートは相当に手強く、仮にコース内でスタックしても救援要請は減点となる。
まず「Day 1」は「フィットネス1」と呼ばれるタスクからスタート。スパルタンレースで使われるようなオブスタクル(障害物)を使用したフィジカルタスクだ。
次ぎに「エクイップメント」は指定された装備、例えばスペアタイヤ、救急箱、工具セットを制限時間内に運搬・設置するタスク。

3番目は「ロープワーク」。丸太とロープで橋を構築し、渡る競技に向けた模擬タスク。4番目は「オクタゴンエスケープ」。コース上に設置された複数のポールに一切触れることなく、車両を180度転回させる競技。そして5番目が「ナイトドライブ」。これはドライバー、ナビゲーター(道案内)、ナビゲーター(指示書確認・サポート)の3名1組で、指示書に沿って一般道のチェックポイントを経由して会場に戻ってくる競技。終日掛けて5つのタスクをクリアするのだが、体力やドライビングスキルだけでは乗り切れないほどタスクは多くのようさが複雑に絡み合っていた。

そして迎えた「Day 2」は、競技と宇宙から冷たい雨に見舞われたが、前日にも増して厳しいタスクが、シャッフルされて新編成となった参加者を待ち構えていた。
まずは前日同様、予選会2日目はオブスタクルを使用したフィジカルタスク「フィットネス2」でスタート。
次ぎに「QRコード」で、車両搭載カメラを駆使してコース上のQRコードを読み込み、キーワードを集める競技。3番目が「ウインチ&オフロード」。丸太をウインチで撤去し、設定されたオフロードコースを走行する競技。

そして4番目が「エピックアドベンチャー」。前日に学んだロープワークを駆使して丸太を組んで車が走行できる橋を構築するという、チーム全員で達成する競技が行われた。

すべての競技が最短時間ではなく、ミスの少なさやコントロール精度、そしてチームとしての結束力などが審査される。「速ければ勝ち」ではないという『DEFENDER TROPHY』ならではの採点軸は、一見難解そうに感じるかもしれない、だが一方で多様性に富んだ評価は、より多くの人々に参加機会を与える優れた採点法とも言えるわけだ。


2日間にわたり、オブスタクルを活用したフィジカルタスクやスペアタイヤ等装備の運搬・設置、丸太とロープを使った橋の構築、ナイトドライブミッション、急坂登降など、まさに知力、体力、コミュニケーションスキルといった冒険者に求められる能力が試された過酷な予選会を勝ち抜き、日本代表として選ばれたのは海洋アドベンチャー出身の「今村直樹」さんだった。陸上ではなく、海上で活躍する冒険者というのも『DEFENDER TROPHY』ならではの存在感を際立たせている。
日本代表に選出された今村さんは
「普段はクルマの運転より船を漕いで、海峡横断レースなどに参加しているのですが、『チャレンジをしたい』という気持ちから『DEFENDER TROPHY』に応募しました。9歳くらいの頃に見た黄色いSUVにずっと憧れを抱いていました。あれから30年が経ちましたが、諦めなければ想いは叶うのだと、今まさに実感しています。39歳になった今、来年アフリカに挑むことができることを嬉しく思いますし、この2日間、一緒に挑戦してきた仲間の皆さんの想いも乗せて頑張ってきます」と歓びを語っていた。
また、日本の予選会を観戦した『DEFENDER』の担当マネージング・ディレクター「マーク・キャメロン」さんは次のように感想を述べた。
「記念すべき『DEFENDER TROPHY』の最初の予選会は素晴らしいものになりました。参加者たちの姿は、フィジカル面だけではなく、仲間を信じ、状況を読み解き、ときに自然と調和しながら限界に挑むという、まさにDEFENDERブランドの精神『不可能を可能にする』を体現しています。日本代表として選ばれた今村さん、おめでとうございます。困難を前にしても決して諦めず、常に冷静な判断と勇気を持って挑み続けていました。これから待ち受けるグローバルファイナルでも、彼の挑戦が世界中の人々にポジティブな影響を与えると確信しています」
2026年秋にアフリカで開催される「グローバルファイナル」に日本代表として出場する今村さん。今度は世界各国の予選会を通過してきた33名の挑戦者たち競い合い、そして力を合わせながら凌ぎを削ることになる。アフリカの大自然で繰り広げられる“唯一無二”の闘いの過酷さは、容易に想像できる。日本代表、今村直樹さんの健闘を祈りたい。


佐藤篤司(さとう・あつし)
男性週刊誌、男性週刊誌、ライフスタイル誌、夕刊紙など一般誌を中心に、2輪から4輪まで“いかに乗り物のある生活を楽しむか”をテーマに、多くの情報を発信・提案を行う自動車ライター。著書「クルマ界歴史の証人」(講談社刊)。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。
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Writer: Atsushi Sato
Editor: Atsuyuki Kamiyama
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