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ライト館の内外装に数多く使われていた大谷石。ライトは装飾の可能性と日本らしさを兼ね備えた素材として見出した。その選択にはライトが提唱する「オーガニック・アーキテクチャー(有機的建築)」の考え方が反映している。その後大谷石はさまざまな建築で使われるようになった。
19世紀のパリで広がった、屋根のある商店街・アーケード(パサージュ)。日本で初めてその名が使われたのは1922年、竣工間近のライト館だった。地下1階北側にアーケードが設置され、洋服店や宝飾店、美容室など約20店舗が軒を連ねた。
ライト館以前、林愛作支配人の時代から、社交場として、文化や芸術の各種イベントが行われてきた帝国ホテル。ライト館には大宴会場と演芸場があり、専属楽団としてハタノオーケストラがダンス音楽などを演奏していた(写真)。また劇団公演も行われていて、岸田國士や正宗白鳥の戯曲で知られる新劇協会などが拠点としていた。
現在のような挙式から披露宴までを行う「ホテルウエディング」は、大正時代に帝国ホテルが発案したもの。明治後期に定着した神前結婚式だったが、関東大震災の影響が比較的軽微だったライト館ではその会場としての役割が高まり、ホテル内に神殿を設け、式と披露宴、そして美容室と写真館を一体化した形が確立されたという。
もとは朝食の一品、またはディナーのデザートだったパンケーキが帝国ホテルのティータイムメニューに載ったのは1953年、ライト館にオープンした「ガーデンバー」で提供されたのだった。現在は「パークサイドダイナー」にて変わらぬ味で提供され、人気である。
2023年に帝国ホテル2代目本館、通称「ライト館」が開業から100周年を迎えることを記念し、ライト館を紹介する展示「The Wright IMPERIAL; A Century and Beyond」が本館1階正面ロビー特設スペースにて開催中。大谷石とスクラッチレンガを使って再現された「籠柱」(写真右)や、当時の家具やパンフレットの展示(写真左)など、「ライト館」の世界が味わえる内容になっている。
Casa Brutusなど多くの媒体に寄稿。 雑誌GINZAの連載「東京ケンチク物語」で は、東京に点在する新旧の建築の魅力をわかりやすく解説する。東京・浅草で編集チーム・ギングリッチを共同主宰。gingrichinc.net
STAFF
Photos: Kazuhiro Shiraishi
Editor: Yukihiro Sugawara
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