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穏やかな気候で移ろう景色も楽しい秋は、クルマ遊びに最高の季節。その魅力を共有できるイベントも日本各地で開催されている。今回はそのひとつであり、8年ぶりに開催された「THE GREAT BRITISH RALLY IN TOKYO 2022」に参加した記者の体験を通じて、大人のクルマ遊びの世界をご紹介したいと思う。
ラリーという言葉を知っていても、実際にどんなものかをご存じない方は多いと思う。簡単に説明すると、F1に代表される、専用の周回コースと車両で速さを競うレースと違い、ラリーは市販車をベースとした車両を使い、主に公道を走る。最も歴史が長く格式のあるラリーは、モナコを起点/終点にしてアルプスの険しい山道を走るラリー・モンテカルロ(1911年~)だ。
映画「男の女」でジャン・ルイが参戦していたのもこのラリーで、アンヌからの愛の電報を受け取った彼は、モンテカルロのパーティ会場を抜け出し、泥だらけのラリー車両に乗ってパリへ走る。スピーディーなラリーがゆっくりと流れる大人の恋を強調する、印象的なシーンだ。
2022年は日本で12年振りとなる世界選手権も開催され、大いに賑わいをみせたラリー。今回、記者が体験したのはそのような本格的な競技ではなく、クラシックカーから現代車まで、英国ブランドの車両が集まって東京~富士~箱根~横浜みなとみらいを2日かけて走るイベント「THE GREAT BRITISH RALLY IN TOKYO 2022」(以下、「GBラリー」)。モータースポーツで培ったテクノロジーを投入した、モダンなスポーツカーで知られるマクラーレンより車両を提供いただき、編集担当と2人1組で参戦した次第だ。
もともと「GBラリー」は10年に一度の開催を予定していて、本来なら第2回は2024年だが、2022年は英国エリザベス女王が在位70周年を迎えるプラチナジュビリーであることから、2年前倒しとなった。しかし、その後9月に女王が崩御。英国大使館とともに準備を進めていたラリー実行委員会は、チャールズ国王が率いる英国の新時代の幕開けを祝う催しとして決意も新たに開催することとなった。
11月も終わりに近づいた秋晴れの早朝、東京・千鳥ヶ淵の英国大使館に集まったのは年代も様々な英国車70台。といっても、いきなりスタートということはなく、英国式庭園を眺めながらのブレックファストで始まるのが、いかにも貴族的だ。
その後、英国大使をはじめとした関係者、後援団体のスピーチを受けて出発。われわれも広い荷室を備え、普段使いのしやすさと快適性を高めた「マクラーレンGT」に乗り込み、声援を受けながら英国大使館の門をくぐった。
「マクラーレンGT」には、モータースポーツのDNAが宿っている。強固なモノコックシェル構造の車体は軽く、最適な重量バランスを誇り、正確かつエモーショナルな走行フィールが楽しい。それでいて上述したようにグランドツアラーとしての資質を高め、日常的なスピードでも軽やかに駆け抜ける。実に現代的なスポーツカーなのだ。時代に即して“開かれた王室”を体現したエリザベス女王に敬意を表す意味でも(もうひとつの意味は後述)、「女王陛下のGT」と称したい。
「GBラリー」はナビゲーターがコマ地図に従ってドライバーにルートの指示を出したり、タイムトライアルやPC競技(決められた区間を設定された時間で走る)はあるものの、競うことよりも楽しむことを重視したイベントだ。1日目のコースは東京から神奈川県の相模湖をめざし、そこからは2021年の東京オリンピックでのロードバイク競技と同様、道志みちから山中湖に向かって富士スピードウェイに至る。
峠主体のコースは季節がら景観も素晴らしく、コクピットからの視界に優れ、さらにオプションのパノラミックガラスルーフも装備された「マクラーレンGT」でのツーリングは、スポーツカーの存在意義を実感するのに十分なラグジュアリー体験だった。速く走ることだけがスポーツカーの魅力ではなく、あらゆるシーンにおいて、充実した心で満たされるということを。そして、マクラーレンのロードカーには大人の願望に応えるだけの余裕がある。
STAFF
Photo: McLaren Automotive,Great British Rally
Special thanks: McLaren Tokyo
Writer: Kaori Sakurai
Editor: Atsuyuki Kamiyama
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