鰆の塩漬けのだし茶漬け

食のお宝探し vol.03

福岡県・志賀島では、お正月の三が日、毎朝、お雑煮を作り、おせちよりも先に、まずはお雑煮から食べる。メインの具材は塩漬けの「鰆」。九州では、塩漬けの「鯖」を使ったお雑煮もあるけれど、新鮮な鰆が大量に獲れる志賀島では、鰆の塩漬け入りが定番。 塩漬けにした鰆を、切り身にして塩抜きし、湯がいたものが、特徴的なアクセント。

LIFESTYLE Apr 8,2022
鰆の塩漬けのだし茶漬け
鰆の塩漬けの食材の画像

志賀島のお雑煮は、塩味のきいた豚肉で食べる、野菜たっぷりのポトフと似たようなコンセプトだと思う。あっさりした見た目からは想像もつかない、静かな抑揚のあるこの一品は、すべてが完璧なバランスでお椀の中で共存しているので、ほかのどんな具材にも置き換えがたい。お正月だけではなく、日常的にも食べたいと思う料理だが、たとえば、お餅を「焼きおにぎり」にスイッチして、だしをかけて食べる、お茶漬け風にするのはどうか?

新鮮な鰆の切り身を用意し、バットに並べ、粗塩をたっぷり、鰆が埋もれるくらい全面にかけたら、バットに傾斜をつけて、ひと晩置く。次の朝にはバットの縁に、大量のドリップがたまっているのでこれを捨て、塩がついた状態の切り身を網にのせ、光が燦々とふりそそぐ窓際などで、太陽が沈むまで干す。半日経ったらひっくり返し、両面がかちかちになったのを確認できたら「即席・鰆の塩漬け」のできあがり。市販のだし、または昆布・煮干し・干し椎茸でだしをとり、大根・焼き豆腐・かまぼこ・ちぎったケール(おばあちゃんのかつお菜と同じく、いいだしが出る!)を加えたら、ひと煮立ちさせ、器に盛った焼きおにぎり、塩抜きして湯がいた鰆に、だしごと注ぐ。全体を崩しながら食べると、かりかりのお米、だしと鰆の塩っけが混じり合った、絶妙な味わい。咲子さん、こんな楽しみ方も、いかがでしょうか?

KAORU×おばあちゃんの食の往復書簡

志賀島のお雑煮の画像

九州の地元で暮らす、田中咲子おばあちゃんが教えてくれた、三が日の定番「志賀島のお雑煮」。昆布・煮干し・干し椎茸でとっただしに、大根・焼き豆腐・かまぼこを加え、ひと煮立ち。湯がいた鰆を加えて、最後にかつお菜を、さっと火を通すようにして加える。その名の通り、かつお菜からは鰹のようないいだしが出るので、こちらも必須の具材。餅は丸餅で、これは昔、家でつき、丸めて保存していたものを、お雑煮にも使っていた名残。餅を鍋に入れるとき、だしに使った昆布を鍋底に敷き、くっつきを防ぐのも知恵。お椀に盛り付ける際には、底に大根を敷き、その上に餅をのせ、他の具材を。鰆を少しずつほぐしながら、餅にからませて食べる。

PROFILE
フードディレクター
KAORU

広告や雑誌などでフードスタイリングを手がける。写真の上に食品をのせ、撮影するシリーズ作品「Food On A Photograph」プロジェクトではN.Y.と東京の2都市で展示を開催した。

初出:2021年12月19日発行『AdvancedTime』10号。掲載内容は原則的に初出時のものです。

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