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ブランドにとって初の電動化モデル(ハイブリッド&PHEV)として、2022年に市販モデルが本国デビューを果たしたアルファ ロメオ『トナーレ (Tonale)』。サイズ的にはCセグメント(コンパクト)SUVに分類され、ブランド内ではフル電動(BEV)&ハイブリッドの『ジュニア』と、ガソリン&ディーゼルエンジンを搭載したプレミアムDセグメント(ミッドサイズ)の「ステルヴィオ」の中間に位置するSUVだ。日本仕様がデビューしたのは翌23年であり、それから3年経過してのマイナーチェンジモデルのお披露目ということになる。一見しただけではフロントセクションの化粧直し、つまりフェイスリフトだけで済ませているようだが、その進化の内容は足回りからパワートレインの見直しなど多岐にわたっている。そこには“アルファがアルファであるための進化”が潜み、我々を楽しませようと待ち構えているかのようだ。果たしてどんな味わいなのか?

アルファ ロメオが登場する映画は数多くあるが、その中でトップ3をあげるとすると何だろうか? アルファ ロメオ『スパイダー1600』が登場する『卒業』(1967)は主人公を演じたダスティン・ホフマンの出世作ということもあり、印象深い作品だ。イギリスの小説家フレデリック・フォーサイスの原作をもとに1973年に映画化された『ジャッカルの日』では、主人公のジャッカルが、白いボディが美しいオープンカーの『スパイダー』に乗って登場し、そのエレガンスが強烈に表現されていた。ちなみに劇中にはシトロエン『DS』といった個性派も出演しているが、その存在感に決して引けを取らなかったと思う。そして最近の作品とすれば2009年に公開されたミュージカル映画『NINE』だろうか。ここでも主人公が演じる映画監督の乗るクルマとして『ジュリエッタ スパイダー』がスクリーンを華麗に彩っていた。
他にも色々と思い浮かぶのだが、ではなぜアルファ ロメオが作品の中で重要な役割を担うことが多いのだろうか? 美しいスタイル、情熱的なエンジンサウンドと刺激的な走り……。そんなラテン的な明るさと同時に、その陰に潜む憂いや悲しさ、そして苦悩などを、主人公の代わりに表現する、まさに相棒のような役割をこなすことがある。これほど多彩な役割を果たせるクルマはそれほど多くはないと思う。
そして時代は流れて現在、アルファ ロメオのラインアップにはスパイダーもクーペもなく、「ジュリア クアドリフォリオ」というスポーツサルーン1台と、サイズの違うSUVが3台。少しばかり寂しい思いもあるが、それでもアルファ ロメオが仕上げたSUVならば、情熱と同時に独特の妖艶さやエレガンスを期待出来るはず。そんな思いを抱きながら、次々に投入されるSUVのニューモデルに触れてきた。
『ジュニア』『ステルヴィオ』、そして『トナーレ』とアルファ ロメオを名乗るSUVは幸いにして、どのモデルも走りは切れ味鋭く、そして佇まいにも独自のエレガンスが感じられ、期待を裏切ることはなかった。走りの仕上がりは「過去の名車との比較はさておき、立派にアルファ ロメオを演じている」と思えるのだ。そして今、その1台である『トナーレ』がマイナーチェンジを施され上陸してきた。
今回からイタリア語でハイブリッドを意味する「イブリダ」が与えられ、正式名称は『トナーレ イブリダ』となる。仕様は2タイプあり、エントリー仕様の「スプリント(599万円)」と、上級仕様の「ヴェローチェ(653万円)」が設定されているが、どちらもパワースペックは変わらない。なお、従来型でラインナップされていたPHEV(プラグインハイブリッド車)は現在、日本のラインアップにはない。 さて、外見上の変更点はフロントマスク周辺に限られているように見える新型『トナーレ』だが、走りはどのようにブラッシュアップされたのだろうか? 早速、上級仕様の『ヴェローチェ』のシートに体を任せ、箱根のワインディングへと乗り出した。




マイナーチェンジされた新型トナーレ最大の見所はフロントエンドのデザイン。アルファ ロメオの歴代モデルから継承される「スクデット」と呼ばれる“盾形グリル”と、往年の名車をオマージュした“フルLEDマトリックスヘッドライト”が作り出す表情には伝統と革新が息づいている。当然ながら従来モデルよりも存在感は格段に増している。
さらにデザインの変更は機能面での向上のためでもあった。スクデットの両側には新たに「アゾレ」と呼ばれる4つの開口部が設けられた。これはエアインテークとして吸気効率を高めるとともに、空力性能の向上も実現し、走行安定性に寄与している。この他にもバンパーのエアインテークを拡大して、ラジエーターの冷却効率も改善。フロントのデザイン変更は視覚的な変化をもたらしただけでなく、走りのパフォーマンス向上にも役立っていることになる。
そんなフロントフェイスの奥には、160馬力の1.5L直列4気筒 DOHCターボエンジンと20馬力の48V電動モーターを組み合わせた「ハイブリッドシステム」を搭載されている。このパワーソースのシステム合計最高出力は175馬力を実現しているものの、数値的には従来通りで改良前と同じ。しかし、エンジンとモーターの制御バランスの最適化や、可変バルブタイミングの調整、さらにトランスミッションには、高いギアへのシフトタイミングを早める制御を採用したことで、加速はこれまで以上に滑らかになっている。こうした繊細とも言える改良が加えられたことで、0-100km/h加速は従来比で0.3秒短縮され、8.5秒を実現した。大幅なパフォーマンスアップではないものの、アクセル操作に対するレスポンスは改善され、フィールは確実によくなっている。
この心地よさはステアリングを操作したときにも感じ取れる。クイックなギア比(13.6:1)のステアリングはレスポンスよくノーズを思った方向へと向けてくれる。よく調教された「ALFA デュアルステージバルブサスペンション」のお陰もあり、コーナリングではロール少なく、安定姿勢のままクリアしていく。「走り・装備・デザインのすべてが進化した」と評される今回の『トナーレ』だが、その中核にあるのは確実にこのハンドリング性能だ。加えて走行シーンによって好みの走りを選べる「ALFA DNA ドライブモードセレクター」を駆使すれば、安定かつ躍動的な走りが手に入るのだ。そしてその刺激的な走りを強烈に制御するのがブレンボ製の4ポッドキャリパーのブレーキシステムだ。エンジンに足回り、そして心強いブレーキシステムなどが一体となり、アルファ ロメオならではの官能的なパフォーマンスを実現しているあたりは、さすがという仕上がり。





未だに鮮度の落ちていない『トナーレ』の佇まいと細やかな進化を継続している刺激的な走り。そこには明確にアルファ ロメオならではの世界観があり、進化することも諦めていなかった。もしこんな『トナーレ』を映画に使うとしても、出来ることならカーチェイスで傷だらけになることだけは勘弁してほしいのだが……。
主要諸元 | アルファ ロメオ トナーレ イブリダ ヴェローチェ |
| 全長×全幅×全高 | 4,520×1,835×1,600mm |
| ホイールベース | 2,635mm |
| 最小回転半径 | 5.8m |
| 車両重量 | 1,600kg |
| 駆動方式 | 前輪駆動 |
| エンジン | 水冷直列4気筒DOHCターボ 1,468cc |
| 最高出力 | 117kW(160ps)/5,750rpm |
| 最大トルク | 240N・m/1,700rpm |
| モーター最高出力 | 15kW(20ps)/6,000rpm |
| モーター最大トルク | 55N・m/2,000rpm |
| 燃料消費率 | 16.6km/l(WLTCモード) |
| 車両本体価格 | 653万円~(税込み) |
AUTHOR
男性週刊誌、ライフスタイル誌、夕刊紙など一般誌を中心に、2輪から4輪まで“いかに乗り物のある生活を楽しむか”をテーマに、多くの情報を発信・提案を行う自動車ライター。著書「クルマ界歴史の証人」(講談社刊)。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。
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Writer: Atsushi Sato
Editor: Ryo Usami
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