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“自然”と“愛”を豊かに表現する盤上のマチエール

ヴァンクリーフ＆アーペルの創造性を支えるサヴォアフェール

「ポエトリーオブタイム（詩情が紡ぎだす時）」という哲学を掲げた時計作りで独自の世界観を築くヴァンクリーフ＆アーペル。卓越した数々のサヴォアフェールを融合して芸術性を高め、優美な時を表現する。

FASHION Nov 10,2025

ベリーの瑞々しさを再現した独自のエナメル技法
一日に2度ドラマチックに動き出す恋人たちのダンス
- レディアーペルバルデザムルーオートマタウォッチ

詩情豊かな時を刻むため、ヴァンクリーフ＆アーペルのインスピレーションの源になっているのが、“自然の生命力”と“愛”という2大テーマだ。複雑機構、プレシャスな素材、エナメル技法といった伝統技法のサヴォアフェールを駆使して、時の流れにドラマチックな物語を生み出している。

そのひとつが盤上に自然の生命力を与えた「ペルレエクストラオーディネールフリュイアンシャンテ」ウォッチ。この2本の時計に瑞々しい質感をもたらしているのが、ラズベリーとブルーベリーを立体的に表現したエナメル技法だ。時計でエナメル文字盤といえば、フラットで光沢のある滑らかな表情を思い浮かべる。しかしヴァンクリーフ＆アーペルは独創的なエナメル技法の「ファソネエナメル」を開発し、繊細な工程と慎重な温度管理によってボリューム感と透明感を出すことに成功した。画家のフィンセント・ファン・ゴッホは絵の具を厚塗りして平面的な絵画に存在感や重量感を与えているが、メゾンのエナメル技法もその「マチエール」と呼ばれる手法とよく似ている。

もうひとつはメゾンの起源である「愛」をテーマにした「ポエティックコンプリケーション」の新作だ。舞台は19世紀のパリ郊外で人気を博した賑やかな野外ダンスカフェ、ギャンゲット。星明かりと外灯に照らされた石畳の広場で、男女がダンスに興じ、キスをする。そんな情景をオートマタと呼ばれる機械式のメカニズムとエナメル技法で表現した。こちらもマチエールの一種ともいえる恋人たちのレリーフは、可動する連結部分を備え、お互いを引き寄せる動作も自然な動きを実現している。

自然や愛から豊かな感性を得るヴァンクリーフ＆アーペル。サヴォアフェールを磨き、芸術性を高めることで、メゾンは時計に情感たっぷりの命を吹き込むのである。

ベリーの瑞々しさを再現した独自のエナメル技法

ペルレエクストラオーディネールフリュイアンシャンテフランボワーズウォッチ

ゴールドビーズで縁取られたペルレウォッチの文字盤には、ファソネエナメルによるプチプチしたラズベリーの実を配置。その周囲をダイヤモンドがあしらわれた羽を持つホワイトゴールド製の妖精たちが戯れる。彫金を施した葉っぱは、ミニアチュールペインティングを施し、文字盤に奥行きを与えている。時刻調整は裏蓋中央に備わっているプッシュボタンで行う。

ペルレエクストラオーディネールフリュイアンシャンテミルティーユウォッチ

ファソネエナメルで造形した本物と見紛うブルーベリーをセッティング。エナメルを立体的に成形し、表面の窪みまで忠実に再現した。妖精を表現する彫金、ジュエリーセッティング、2種類のエナメル技法など、高度なサヴォアフェールの融合で作品が出来上がっている。ケースバックには蝶の繊細なエングレービングが施されている。

文字盤を物語に仕立てるサヴォアフェールの表現力

写真右・中央／ラズベリーとブルーベリーをエナメル技法で制作中の画像　写真左／妖精のレリーフの画像

デザインの要となっているのが、メゾンが16カ月にもおよぶ研究開発の末、メソッドを確立したファソネエナメル技法によるラズベリーとブルーベリー。エナメルパウダーを慎重に型に注ぎ、厳密な温度管理で2回焼成（写真右・中央）してベースを製作。その後、研磨や彫刻を施し、最後に高温で熱すると、前例のない立体感と透明感のあるエナメルの造形が完成する。妖精のレリーフ（写真左）はジュエリー専用の精密な道具を用いて手作業で彫金し、シルエットには丁寧にポリッシュ仕上げが施される。