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国民的マンガ『名探偵コナン』に学ぶ、伊達男の流儀

劇場版『名探偵コナン隻眼の残像』が2025年4月に公開という話題で盛り上がる中、AdvancedTimeでは、愛すべき伊達男たちにスポットを当てる。『名探偵コナン』に学ぶ、伊達男の流儀とは──。

LIFESTYLE Mar 3,2025

ダンディズムとは、世情の流れに右顧左眄することなく、自分の信じる道を極めることである。紳士を形容するダンディという概念を発明し、体現したのは19世紀のボー・ブランメル。

ブランメルは、それまでの、男女を問わず華美に着飾るフランス宮廷由来の服装から、実用性を伴った、現在のスーツの原型の装いをみごとに着こなし、それを貫いたのだ。

ボー・ブランメル（1778～1840）イギリス。平民出身ながら、オックスフォード大学を卒業。現代の紳士服の基本となるスーツスタイルを確立した、稀代の洒落者。提供：Bridgeman Images／アフロ

現代にも通じる引き算の美学は、ブランメルが放ったとされる「行き交う人がキミのことを振り返るようなら、その服装はやり過ぎだ」というセリフに象徴されている。このブランメルの確立したダンディズムの概念は、時を経て、小説や映画作品などで表現されることで、現実にも影響を与えてきた。かつてのダンディズム・アイコンでもあった、ショーン・コネリーを始め、スティーブ・マックイーン、ジャン＝ポール・ベルモンドなど、時代を画期した男達の所作や心意気は、今も色褪せることはない。

左／ショーン・コネリー（1930～2020）スコットランド。007シリーズの初代ジェームズ・ボンドを演じ、原作の持つエスタブリッシュメントの世界に、男の色香をプラスした。写真：REX／アフロ　右／スティーブ・マックイーン（1930～1980）アメリカ。カウンターカルチャーに愛された、不屈の男を演じたらピカイチの名優。『華麗なる賭け』では、大富豪にして盗賊というアンチ・ヒーローを演じた。写真：ZUMA Press／アフロ

その系譜を受け継ぐ者として、『名探偵コナン』の主要登場人物、毛利小五郎を挙げておきたい。“愛すべき「かっこつけ」”とも称される、この登場人物の作中での所作は、“大人の男、かくあるべし”という作者のキャラクター造形力が遺憾なく発揮された、現代に於ける伊達男の理想型、とも言えるのだ。

ペンと紙によってレイモンド・チャンドラーが生み出した架空の人物、フィリップ・マーロウは、実在のダンディズム・アイコン達に引けを取らない伊達男として今も輝きを放つが、我らが毛利小五郎もまた、現代に即した“男の粋”を学ぶべきアイコンとなるだけの深みを持つ。

左／ジャン＝ポール・ベルモンド（1933～2021）フランス。アラン・ドロンと双璧を成す、フランスきっての伊達男。『勝手にしやがれ』などで見せるニヒルで自由な振る舞いの全てが、永遠のアイコンだ。写真：Collection Christophel／アフロ　右／レイモンド・チャンドラー（1888～1959）アメリカ。ハードボイルドの始祖の一人で、フィリップ・マーロウを生み出した作家。『さらば愛しき女よ』『長いお別れ』…、男が終生拘るべき矜持は、全て彼の小説の中にある。写真：mptvimages／アフロ

今や国民的作品ともなった『名探偵コナン』の世界には、古今の小説や映画のエッセンスを踏まえた、確固たる、ダンディズムの要諦が漲っているのである。

私立探偵毛利小五郎

元刑事の私立探偵。推理がイマイチのせいで流行らない探偵稼業だったが、コナンが来てからは「眠りの小五郎」として一躍名探偵に。お調子者で、酒やギャンブルを好むが、柔道と刑事時代に培った拳銃の腕前はピカ一。

『名探偵コナン』屈指の敏腕刑事・伊達男プロファイル

長野県警捜査一課警部大和敢助

過去捜査中に雪崩に巻き込まれ、隻眼となり杖をついている。見た目と口調のせいで悪人と勘違いされることもあるが、人情に厚く、かなりの切れ者でコナンに引けをとらない推理力。諸伏高明とは小学生からの同級生であり、ライバル。35歳。

長野県警捜査一課警部諸伏高明

『三国志』など中国の古典を引用した表現を好み、あだ名は「コウメイ」。一流大学法学部をトップで卒業するも、ノンキャリアで県警本部入りした変わり者。大和が行方不明になった事件を強引に捜査したせいで一時は所轄にいたが、自力で捜一へ復帰した。

毛利小五郎と長野県警が大活躍！劇場版『名探偵コナン隻眼の残像』

果たせなかった約束と、隻眼に宿った残像。氷雪吹き荒れる山岳で、白き闇の因縁の幕が切って落とされる―。劇場版『名探偵コナン』シリーズ28作目、今回は長野県の雪山で起きた過去の事件と現在の事件が絡み合う。大和敢助の隻眼の秘密が明かされるのか―？警察組織を取り巻く重厚なミステリーに乞うご期待！ 2025年4月18日（金）公開

世界的大ヒットミステリーマンガ『名探偵コナン』

高校生探偵・工藤新一は、幼なじみの毛利蘭とデート中、黒ずくめの男達の怪しげな取引を目撃し、毒薬を飲まされる。一命をとりとめたものの、新一は子供の姿になってしまった…！生存が組織に知られると周囲にも危害が及ぶため、彼は「江戸川コナン」と名乗り、自分を襲った黒ずくめの組織の情報を摑むため、父親が探偵稼業を営む蘭の家に転がり込み、次々と難事件を解決していく。

初出：2025年2月22日発行『AdvancedTime』25号。掲載内容は原則的に初出時のものです。