ロータスの新たな物語を紡ぐのは「エレトレ」&「エメヤ」という2台のBEV

世界中のスポーツカーファンを熱狂させてきたロータス。日本市場に投入した「エレトレ」と「エメヤ」の2モデルから、私たちに見せてくれるロータス像とは。

LIFESTYLE Feb 10,2025
ロータスの新たな物語を紡ぐのは「エレトレ」&「エメヤ」という2台のBEV

1948年、ロンドンに創立されたイギリスの自動車メーカー、ロータス・カーズ(以下、ロータス)。創業者はイギリスの天才エンジニアにしてカーデザイナー、そしてレーシングドライバーとしても知られる「アンソニー・コーリン・ブルース・チャップマン」だ。一般的にはコリン・チャップマン(Colin Chapman)として知られる彼は、大学時代からのガールフレンドで後の妻となるヘイゼル・ウィリアムズから50ポンドを借り、ロータスを設立した。

以来、小さなメーカーながらもロータスから送り出される数々の『軽量ボディにしてハイスペックなマシン』は、世界中のスポーツカーファンを熱狂させてきた。同時にロータスの独創的にして革新的なテクノロジーは、自動車産業に大きな影響を与え、まさに名門メーカーと呼ばれるにふさわしい歩みを続けている。そのロータスが、バッテリーEV(BEV)にも注力し、プレミアムハイパーEVの「エレトレ」と「エメヤ」を日本市場にも投入。ピュアスポーツカーの名門が携えてきた2モデルは「電動車時代」に、どんなロータス像を見せてくれるのだろうか?

先頭がロータスのハイパーGT「エメヤ」、後続がSUVの「エレトレ」。どちらも電動車専業メーカーを宣言したロータスのピュアEVモデル。

「軽さは正義」にこだわる理由

創立者のコーリン・チャップマンは1949年に大学を卒業し、イギリス空軍に所属し航空機の技術を学んだ。その後、ブリティッシュ・アルミニウム会社に就職し、ここでアルミに対する知識も得たことで「軽量化による性能の向上」という考え方が「ロータスの進化」に多大なる影響を与えてきている。つまりロータスの歴史は「軽さこそ正義」と共にあった。これは当然のことで加速時も減速時もコーナリング時も軽量であるほど、制御は楽になり、エネルギーの消費も少なく済む。軽さは運転時のキレやレスポンスの良さを生み出し、エコにも寄与する。当然、スポーツカーやレーシングカーにとって「軽さの追求」は必須項目だった。

こんな話しがある。80年代後半から90年代初頭にかけてF1シーンを支えたナイジェル・マンセル(以下、マンセル)という英国人ドライバーを覚えているだろうか。一時期、ロータスにも所属していた彼は「F1四天王」などとも呼ばれていたが、全盛期の頃は身長180cm、体重80kgほどあったとも。標準的なサーキットでは1kg分の重量が1周あたり約0.035秒に相当すると言われ、体重以外のすべてが均等だったとしても、体重65kgのドライバーは体重75kgのドライバーより0.35秒速く走れることになる。

当然ながら軽量化を進めるレーシングチームにとって1gの軽量化も血のにじむような努力で行われていた。そんな状況でマンセルが属するチーム監督(多分、フランク・ウイリアムスか……)はマンセルに対して「1億円のボーナスをやるから10kg痩せてくれ!」と懇願したという。もちろんこれは笑い話というか都市伝説にも近い話しではあるが、筋は通っている。レースの世界だけでなく、ピュアスポーツカーの世界でも「軽さは正義」が動かしがたい現実である。

一方でBEVと言えば現状はまだ、重量のあるリチウムイオンバッテリーを搭載することが不可避だ。同クラスの車のガソリン車などとの比較で言えば、百kg単位で重くなることもある。そんな状況で、軽さを信条として歩んできたロータスがBEVをリリースしたのだから、多くのファンから驚きの声が上がった。同時に「ではロータスは、どんな“技”を見せてくれるのか?」という興味も湧いてきた。

その答えの第一弾となったのが2019年7月16日に登場した電動ハイパーカー「EVIJA(以下、エヴァイヤ)」だ。限定130台のプレミアムEVスポーツで、システム最高出力はなんと2000馬力、最大トルク1700Nm。1基が500馬力を発生するモーターを4輪に1基ずつ与え駆動する2シーターのBEVスーパーカーだ。ボディシェルはカーボンファイバー製で、車体中央部(ミッド)に出力2000kW、蓄電量70kWhのリチウムイオンバッテリーを搭載し、車重を1,680kgに抑えている。圧倒的な出力によって世間からは「ロータスとしては重い」と言われる重量を力業によって、0-100km/h加速は3秒以下、最高速は320km/h以上という動力性能を実現した。これがフル電動化に対する「ロータスの答えか」とも思ったが、もはや尋常ではないようなスペックが謳われていたわけだ。さらに価格は180万~200万ポンド(当時のレートは1ポンド約135円)と、すべてが非現実的な存在だった。

英国車初のフル電動ハイパーカーとして登場したLotus Evija(エヴァイヤ)。超軽量カーボンファイバー製モノコックの採用でBEVの軽量化を実現した。

このエヴァイヤに比べれば、プレミアムフル電動モデルとして登場してきたSUVの「エレトレ」と“ハイパーGT”の「エメヤ」は、ずいぶんと常識的で、身近な存在だ。

ドライバー以外の人の楽しみのために生まれたロータス

「ホテル・インディゴ」のエントランスにて。SUVのエレトレは実用的で多用途、かつ広々としたファミリー向けハイパーSUVとして開発。新たな市場開拓の尖兵とも言える。

エヴァイヤに次ぐBEVの第2弾とも言える「エレトレ」。当初は「ロータスのSUV」と聞いただけでも少々戸惑った。ロータス最後のエンジン車と言われる「エミーラ」のV6ファーストエディションを味わった直後と言うこともあり、内心では「SUV、それもHEV(ハイブリッド)でもPHEV(プラグインハイブリッド)でもなく、一気にBEVのスーパーSUVなのか……」という気持ちだった。

一方でロータスは「アグレッシブなスタイルだけでSUVでも走りはまさに“ロータス”」と自信に満ちたコメントで、パフォーマンスへの期待も自然と高まっていく。今回ステアリングを握ったトップグレードの「エレトレR」は、最高出力918馬力、最高速度は265km/h、0-100km/h加速が2.95秒、そして一充電走行距離は490kmで、価格は23,243,000円。

それではロータス史上もっとも大きく、もっとも重量のあるボディを走らせる感覚はどんものだろうか? 

印象的なフロントグリルを含む「アクティブ・エアロダイナミクス」は航続距離と効率を最適化し、さらに優れたドライビング体験と高速安定性を実現するダウンフォースを発生させる。

「素性の良さ」は公道へと走り出してすぐに感じ取れた。さすがに車重は2.7トンあるため、軽々という動きではないが、それをカバーするかのようなトルクの立ち上がり方には、スーパースポーツらしい切れ味がある。高速道路の合流で試しにフルスロットルを当てると、意識が薄れるほど強烈な加速を見せてくれた。それに加えサスペンションの剛性感の高さを感じさせる足回りの味つけや、クイックなステアリングフィールは、重心が低いと言うこともあるが、ゆったり走っても、スポーティに走ってもSUVにありがちな足高感がほとんどない。体はつねにフィット感のいいシートにしっかりと収まり安定感、安心感を存分に得ながらのドライブが続く。これならばドレスアップしてホテルのエントランスにもためらいなく滑り込める。

ラグジュアリーで広々としたキャビンはパフォーマンス重視のテクニカルデザインを採用。インフォテインメントやコネクティビティ、そして厳選された最高級の素材や仕上げが融合している。
左/リアシートの乗員はHDタッチスクリーンを操作することで空調設定、座席調整、環境照明、およびメディア再生を操作が可能。足元も広々としていて居住性も良好。 右/ラゲッジルームは5人乗車時で688L(4人乗りは611L)、リアシートを倒すと最大で1,532Lを実現。なお「エレトレ」の車名は東欧の言語で「Coming to Life(命を吹き込む)」を意味する。
主要諸元エレトレR
全長×全幅×全高5,103×2,019×1,636mm
ホイールベース3,019mm
車重2,715kg
最小回転半径データ無し
最低地上高194mm
トランスミッション2スピードトランスミッション
駆動方式AWD(オールホイールドライブ)
モーターデュアルモーター
最高出力675kW(918ps)
最大トルク985N・m(100.4kgf・m)
一充電辺り航続距離410-450km(WLTP) 
車両本体価格23,243,000円~(税込み)
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ロータスが存続し、より成長するための電動化なのだ

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