バッファロー・トレース蒸留所のプレミアムバーボンを飲み比べる、至高のテイスティング会

芳しき“命の水”、ウイスキーの嗜みVol.6

バーボンウイスキー界のロマネ・コンティ――そう例えられるラグジュアリーなバーボンウイスキーがあることをご存知だろうか。アメリカ最古の蒸留所のひとつ、バッファロー・トレース蒸留所で造られている『パピー ヴァン ウィンクル』だ。アメリカでも入手困難で、オークションを賑わせている。そんなプレミアムバーボンの銘柄を数多く擁するバッファロー・トレース蒸留所が250周年を迎えるのを記念して、バーボンウイスキーに精通したバーテンダーの解説を聞きながら、バッファロー・トレース蒸留所のプレミアムバーボン6種類を飲み比べる、至高のテイスティング会が開催された。オークションアイテムを飲む――それこそが、究極の贅沢なのではないだろうか。

LIFESTYLE Oct 17,2024
バッファロー・トレース蒸留所のプレミアムバーボンを飲み比べる、至高のテイスティング会

世界が注目する“プレミアムバーボン”とは?

プレミアムバーボンの画像
今回のテイスティング会で飲まれた、バッファロー・トレース蒸留所のプレミアムバーボン。ボトル総額は96万円だ。

日本では、バーボンウイスキーというと武骨でワイルドなイメージをいだく方が多いかもしれない。しかし、バーボンウイスキー発祥の地・アメリカでは、1990年前後から、5年以上の長期熟成品や、原料と製法にこだわった少量生産のバーボンウイスキーが登場し、そのエレガントで洗練されたフレーバーからプレミアムバーボンとして人気になっていく。

1996年には、アメリカで、スピリッツのテレビCMの自粛が解禁。アメリカのバーシーンでスピリッツを使用したカクテルが存在感を増していく。独創的なカクテルを作りだす“ミクソロジスト”として脚光を浴びるバーテンダーも登場。それに呼応するかのように、スムースで華やかなフレーバーのバーボンウイスキーが増え、プレミアムバーボンとして浸透していった。

2010年頃には、世界でも、カクテルでバーボンウイスキーを愉しむトレンドが定着する。『DRINKS INTERNATIONAL』(英国の飲料業界誌)が毎年発表している「The World’s 50 Best Classic Cocktail」(世界でもっとも売れたクラシックカクテル)TOP50のランキングでは、2021年まで、7年連続1位が、バーボンウイスキーベースのオールドファッションドだった。

原料と製法にこだわった少量生産のプレミアムバーボンには、世界中のコレクターも夢中になっている。今回のテイスティング会の目玉である『ダブル イーグル ベリー レア』は、2022年のサザビーズのオークションで16,250米ドル(当時の為替レートで約222万円)で落札。2020年4月から2024年9月の間に、サザビーズで米ドルで落札された『ダブル イーグル ベリー レア』は9本で、8,125米ドルから16,250米ドルと金額に幅はあれど、一次流通価格を上回っており、コレクター垂涎のアイテムであることがうかがえる。

また、2023年のサザビーズのスピリッツ部門の銘柄別の落札金額では、『マッカラン』や『山崎』に続き、第5位にバッファロー・トレース蒸留所で造られている『パピー ヴァン ウィンクル』がランクインしている。

世界では、プレミアムバーボンは、ラグジュアリープロダクトとして存在感を示しているのだ。

松山謙氏と石田卓生氏の画像
左/TOKYO Whisky Libraryにてゲストスピーカーを務めた、『Ken’s bar 京橋本店』オーナーの松山謙氏。 右/BLUE NOTE PLACEにてゲストスピーカーを務めた、『GEMOR』オーナーの石田卓生氏。2023年、ケンタッキー州の定める栄誉称号『ケンタッキー州名誉大佐』に就任。

2日間に分けて開催されたテイスティング会には、バッファロー・トレース ディスティラリー マスターを務める松山謙氏と石田卓生氏がそれぞれ登壇。松山氏は「2010年頃から、アメリカでプレミアムバーボンブームが起きているのを肌で感じた」と言う。松山氏は2005年にバーボンウイスキーに特化したバーを開業。以降、毎年、ケンタッキー州の蒸留所を訪れてきた。2010年頃から、バーボンウイスキーの価格が1年で倍になるという勢いに驚かされたという。バッファロー・トレース蒸留所のプレミアムバーボンは徐々に入手困難になり、現在では、蒸留所併設のショップのオープンに合わせ、全米から人が押し寄せてくるほどの過熱ぶりだ。

2021年にはネットフリックスで、バッファロー・トレース蒸留所が舞台となった事件のドキュメンタリーが配信。プレミアムバーボンブームは、一部の愛好家だけでなく、世界で社会現象になっているのだ。

松山氏がオーナーバーテンダーを務める京橋にある『Ken’s bar』では、アメリカや韓国から、貴重なプレミアムバーボンを飲むために来日するお客様が目立つ。石田氏がオーナーバーテンダーを務める愛知県豊橋市にある『GEMOR』は、お客様の約30%が海外からの訪日客だという。

会場の様子
会場となったTOKYO Whisky Libraryは、1,300種類のウイスキーが並ぶ。
会場の様子
会場となったBLUE NOTE PLACEは、生演奏を聴きながら食事とお酒を愉しめる空間。煉瓦が積み上げられた外壁がバッファロー・トレース蒸留所の熟成庫の雰囲気に似ているという。

アメリカ最古の蒸留所のひとつ、バッファロー・トレース蒸留所

バッファロー・トレース蒸留所の画像
バッファロー・トレース蒸留所

プレミアムバーボンの銘柄を数多く擁するバッファロー・トレース蒸留所の起源は1775年に遡る。幾度かオーナーが変わり蒸留所の名称も変更されてきたが、1920年から1933年まで施行されていた禁酒法の時代も、薬用としてウイスキーの製造を認められていた4つの蒸留所の1つとして、ウイスキーを造り続けてきた。1992年にサゼラック社がオーナーとなり、1999年にバッファロー・トレース蒸留所に名称を変更した。

バッファロー・トレース蒸留所は、ケンタッキー州北部の、東京ドーム34個分に匹敵する広大な敷地に建つ。敷地の西側はケンタッキー川が流れており、かつては野生のバッファローが季節ごとに移動する際のルートになっていたことから、バッファロー・トレース(バッファローの通り道)という蒸留所名になった。バッファローはアメリカ人にとってノスタルジーを感じる存在でもあり、蒸留所の歴史を感じさせるネーミングだ。蒸留所は、アメリカ合衆国国定歴史建造物に指定されている。

バーボンウイスキーは、原料の穀物のうち、トウモロコシを51%以上用いることが法律で義務づけられている。他、ライ麦や小麦、大麦麦芽を混合し、その混合比率をマッシュビルという。バッファロー・トレース蒸留所では、ライ麦の変わりに小麦を用いたタイプ、ライ麦比率の低いタイプ、ライ麦比率の高いタイプ、ライ麦を51%以上用いたタイプ(ライウイスキーに分類される)の4種類のマッシュビルでフレーバーを造り分け、約250年という長い歴史のなかで受け継がれてきた20以上のブランドを展開している。

バッファロー・トレースの画像
ウェルカム・ハイボールとして振る舞われた『バッファロー・トレース』。バッファロー・トレース蒸留所のプレミアムバーボンのエントリー銘柄で、アメリカでは1人1本の購入制限があるという人気商品だ。ミカンのような柔らかい甘みとバニラのバランスが秀逸で、バーボンウイスキーにありがちなケミカルな要素は気にならない。エレガントな印象のプレミアムバーボンだ。
次のページ
至高のテイスティング会、開幕!ウィーテッドバーボンの金字塔『オールド リップ ヴァン ウィンクル 10年』

SHARE

AdvancedClub 会員登録ご案内

『AdvancedTime』は、自由でしなやかに生きるハイエンドな大人達におくる、スペシャルイシュー満載のメディア。

 

高感度なファッション、カルチャーに溺愛、未知の幅広い教養を求め、今までの人生で積んだ経験、知見を余裕をもって楽しみながら、進化するソーシャルに寄り添いたい。

何かに縛られていた時間から解き放たれつつある世代のライフスタイルを豊かに彩る『AdvancedTime』が発信する情報をさらに充実し、より速やかに、活用できる「AdvancedClub」会員組織を設けました。

 

「AdvancedClub」会員に登録すると、プレゼント応募情報の一覧、プレミアムな会員限定イベント、ブランドのエクスクルーシブアイテムの紹介など、特別なコンテンツ情報をメールマガジンでお届け致します。更に『AdvancedTime』のタブロイドマガジンのご案内もあり、送付手数料のみをご負担いただくことでお手元で『AdvancedTime』をお楽しみいただけます。

登録は無料です。

 

一緒に『AdvancedTime』を楽しみましょう!