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先般パリ・メンズファッションウィークにて発表された、“ベルルッティ”の2024年秋冬コレクション。オーセンティックなスタイルに、クラフツマンシップや個性を感じさせる素材や色を採用した、絶妙なバランスのワードローブが提案されていた。さらには往年のスタイル「ラピエセ・ルプリゼ」をフィーチャーした限定コレクションも登場。
今年は1月16~21日の期間で開催された、2024年秋冬パリ・メンズファッションウィーク。世界のメンズファッションシーンに最も影響力を持つといわれ、各国からデザイナーやブランドが集い、次の秋冬に向けた装いを、ファッションショーやプレゼンテーションなど、さまざまな形式で提案していた。
フランス・パリにて1895年に創業し、現在も4世代続くブーツメーカーである“ベルルッティ”。2011年からはレディトゥウエア(プレタポルテ)コレクションをスタートしているが、今回のファッションウィークではプレゼンテーション形式で、2024年秋冬シーズンのコレクションを発表した。
“ベルルッティ”のレディトトゥウエアコレクションは、ブランドのルーツである靴づくりの中から導かれたアイコンや意匠が特徴。例えばブランドを代表する革である「ヴェネチアレザー」、手作業によって革に独特な色づけを行う「パティーヌ」、18世紀のカリグラフィを革表面の文様とした「スクリット」など。それらは革製品だけに限らず、色やデザインモチーフとしてさまざまな形で盛り込まれている。
今回の“ベルルッティ”レディトゥウエアコレクションでは、オーセンティックなスタイルが、高度なクラフツマンシップに根ざした素材や色を使い表現されている。鮮やかなオレンジカラーのスエードを使ったジーンジャケット(Gジャン)、コットンシルクのデニム素材を使ったセットアップ、パティーヌ仕上げによる独特なブルーのレザーブルゾンなど、一見トラディショナルともいえそうなカジュアルアイテムが、色や素材づかいによって、新鮮でエレガントなバランスになっている。また使われているレザーはファブリックのように軽量なものが選ばれている。
さらに冬のワードローブとして提案されているのは、寒い季節にふさわしいデザインの中に、“ベルルッティ”の職人的な美意識が盛り込まれたアイテム。例えば明るいブラウンスエードを使ったボンバージャケットは、シアリングの襟裏にスクリットレザーが配されている。同じく襟にシアリングがあしらわれたレザーライダースは、深みのあるバーガンディカラーが個性的。インナーにピンクのコーデュロイシャツを組み合わせた、同系色のコーディネイトが提案されていた。
“ベルルッティ”で近年充実しているのが、バッグのラインナップ。今回のコレクションにおいては、素材づかいやディテールに、より特徴のあるアイテムが見られる。秋に向けたアクセサリーのひとつであるレザーブリーフケース「エミーオ」には、ホーン素材のロックが採用されている。また冬のアクセサリーの提案として、トートバッグ「トゥジュールXL」にはジャカードスクリットのウールブランケット素材を使用。バッグのエッジはブランケットに使われるステッチで仕上げられていて、リラックスした雰囲気が魅力だ。
そして“ベルルッティ”のメインアイテムである靴は、トレイルシューズから着想されたスニーカー「スカイライニング」が新たに登場。レザー、メッシュ、スエードなどの異素材をミックスし、大胆なステッチが配されている。ソールにはヴィブラムソールを採用して、パフォーマンスギアの要素も盛り込まれている。また厚みあるラバーソールにドレスシューズのアッパーを組み合わせた「アルト」シリーズには、ローファータイプ「アンディ」のシルエットが加わっている。
また一方で、2024年の秋冬からは、限定コレクションとして「ベルルッティ・エディション」ラインがスタートする。“ベルルッティ”の歴史に根ざしたこのラインは、同ブランドの高度なサヴォアフェール(匠の技術)を味わえるものとして、限られたブティックで展開される。その最初のストーリーとして取り上げるのは「ラピエセ・ルプリゼ」。2005年に当時の当主オルガ・ベルルッティが、大切な品物を修繕して使うという意味の言葉から名付けたコレクションである。それはパティーヌレザーとスクリットレザーをハンドステッチでパッチワークし、さらにハンドペイントで仕上げられていた。
この「ラピエセ・ルプリゼ」に関して、マダム・オルガは次のように語っている。「かつて16、17世紀には、人々は新しい衣服をまとうことはありませんでした。生地は一生をかけて使えるくらい丈夫でなくてはいけませんでした。侯爵であろうと農民であろうと、男性のスーツは修正や修繕の痕跡をとどめたものなのです。それは勇敢の証だったのです。一部のエレガントな英国の紳士、芸術家、エキセントリックな人々が、この習慣を続けてきました。そして1960年代になって、アンディ・ウォーホルは私に尋ねたのです。『ローファーの右足にだけパッチを当てたいんだ。人に見えるように、あくまでアンディ・ウォーホルらしく!』と」。
今回の「ラピエセ・ルプリゼ」、シューズに関しては、スリッパ、オックスフォード、ローファー、ダービー、モンクストラップそしてブーツが、ステッチディテールのあり/なしで展開され、両足それぞれにステッチの有無を選べるようになっている。さらにライニングの色にあわせたシューツリーが付属。また「アンジュール」「エミーオ」「トゥジュール」といったバッグと、いくつかの革小物も展開される。そしてパティーヌのバリエーションはサンテミリオン、アシッド・グリーン、ルナ・ピエナ、ヴィゴーニャ、アイス・ゴールドと、これまた多彩に提案される。
STAFF
Writer: Yukihiro Sugawara
Editor: Atsuyuki Kamiyama
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