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希少性の高い天然石をダイヤルに採用したモデルが今年は顕著に増えている。素材そのものを個性として前面に打ち出し、石ごとに異なる表情を宿す時計に注目したい。
文字盤は時計の顔だ。近年の塗装技術の進化により、ニュアンスカラーやグラデーションダイヤルなど多彩なカラー表現が可能となってきた。加えてギョーシェ装飾は陰影による視覚的な奥行きを与え、文字盤表現により深みを与えている。
一方で、素材そのものの個性を前面に打ち出す流れが強まっている。これまでも隕石、マザーオブパール、オニキスといった素材はしばしば用いられてきたが、今年はより模様の個性が際立つ天然石の採用が目立った。グリーンマラカイト、ブラッドストーンジャスパー、ソーダライト、ライトグリーンアベンチュリン、ピーターサイトなどだ。これらはダイヤモンドなどの透明な宝石と比べ、いずれも不透明なハードストーンに分類され、内包物や層状構造が織りなす有機的なパターンを特徴としている。天然素材ゆえに個体差が大きく、同一パターンは存在しない。石ごとに異なる色彩とパターンが、時計に固有の表情を与えてくれるのが最大の魅力だ。また希少性の高さも天然性を語る上で欠かせない要素になっている。
多く見られたのは時計では定番色であるブルー、グリーン系だ。しかし、塗装技術が進化しようとも、再現しえない色の深みと揺らぎこそが、天然石ダイヤルならではの価値を物語っている。
オーデマ ピゲは天然石を文字盤にしばしば採用する。新作でもオニキスをはじめ、日本限定モデルでは、「CODE 11.59 バイ オーデマ ピゲ」コレクションのグリーンマラカイト、ソーダライト、ターコイズ(国内先行)が見られる。どの部分の模様を生かして文字盤にするかなど、見た目以上に技術とセンスが問われるので、多くのモデルを世に送り出しているオーデマ ピゲには一日の長があるといえる。
本作ではタペストリーではなく、天然石のグリーンマラカイトを採用した。グリーンマラカイトとは、日本語で孔雀石とも言われ、鮮やかなグリーンに同心円状や波状の縞模様が特徴だ。その波模様は個体ごと表情が異なるため、自分だけの一本となる。強度はあまりないため、文字盤の厚さまで石をスライスするのは高い技術を要する。
ゴールドのブレスレット一体型のロイヤル オークのグリーンマラカイトモデルは、41mmケースサイズと37mmケースサイズの展開。軟質であるマラカイトはやや厚みを持たせる必要があるが、41mmケースモデルの本作ではケース厚は10.5mmに抑えられ、日常使いしやすい薄さに仕上げられている。

初代オイスターの誕生から100周年を迎えたロレックス。ダイヤルの12時位置に弧を描く小窓で曜日を表示する機構も持つ「デイデイト」も70周年を迎えた。このダブルアニバーサリーを記念し、ブランドを象徴するグリーン(やや淡いが)に、新素材の「ジュビリーゴールド」を組み合わせた新モデルが登場した。
2005年から採用されているエバーローズゴールド以来となる新しい新素材となる「ジュビリーゴールド」は、ロレックス独自のゴールド。詳細は明かされていないが、新しい18Kゴールドの合金であり、優しいイエロー、グレー、ソフトピンクのような色合いが特徴。光の加減によってイエローゴールドに見えたり、ローズゴールドに見えたりする。華美さを抑えた、控えめで上品なトーンのゴールドという印象だ。
文字盤は石英系のライトグリーンアベンチュリンを採用する。内包する微粒子がライトグリーンの表面に静かに輝き、やわらかな色味のジュビリーゴールドとの相性もいい。インデックスには、バゲットカットが施されたダイヤモンドをセットして格調高く仕上げている。

「ピアジェ ポロ 79」は1979年に誕生したオリジナルを復刻させたモデル。ダイヤルからケース、ブレスレットまでシームレスに続く横線のゴドロン装飾が特徴だ。登場した2024年にはジュネーブ・ウォッチメイキング・グランプリで、アイコニックウォッチ賞も獲得している。その最新作は文字盤に天然石を用いたプレシャスな1本だ。
ピアジェは天然石を文字盤に使うことを得意としてきた。これまでもタイガーズアイ、メテオライト、オパール、オプシディアン、ターコイズなどを用いている。「ピアジェ ポロ 79」で初採用となる天然石文字盤は、深いブルーに白い筋が美しいソーダライト。文字盤にはゴドロン装飾が横断しているが、ソーダライトの模様は繋がっているように仕上げられた。ゴドロン装飾部分のポリッシュの輝きとソーダライトのマットなブルーの対比は、他の天然石文字盤とはない表情を生み出している。また文字盤となる天然石のスライスにはある程度厚みが必要となるが、既存のゴールド文字盤のケースの厚みと同じく7.45mmの薄型ケースに収められているのも見事だ。
搭載されるムーブメントは、薄型ウォッチの象徴ともいえるマイクロローターを備える、自社製自動巻きムーブメントのCal.1200P1を搭載する。

「G.F.J.」は、天文台コンクール(精度競技)で勝つために製造されたキャリバー135を復刻し、搭載したゼニスの新コレクション。オリジナルは1950年から1954年までヌーシャテル天文台の腕時計部門で5年連続1位を獲得している伝説的なキャリバーだった。復刻したモデルは毎時1万8000振動というロービートながら、日差±2秒以内に調整されている。
その「G.F.J.」に、昨年のラピスラズリ文字盤に続き、今年加わったのはブラッドストーンジャスパー文字盤だ。ブラッドストーンジャスパーとは、深いグリーンに赤い斑点が特徴で、この赤い斑点が血に見えることが名の由来となった天然石だ。6時位置のスモールセコンドにはマザーオブパールを採用。天然の真珠貝らしく表面に“揺らぎ”を持ちながら、裏面を塗装することでブラッドストーンジャスパーと調和するグリーンに仕上げた。文字盤を囲む外周のリングには、ブリックギョーシェ模様とファセットカットされたゴールド製のインデックスを備える。
シーズルーバックからは、キャリバー135の動きと美しい仕上げを鑑賞することができる。

Hour(時)とMinutes(分)のイニシャルに由来する「HM」コレクションは、時分針のみのシンプルな薄型ドレスウォッチ。今年は天然石のピーターサイトを文字盤に採用した新作が登場した。
ピーターサイトは青を基調に、金、茶、赤が混ざる複雑な色調を持つカルセドニーの一種。繊維状構造が乱れることで渦状の模様を生みだし、それが最大の特徴となっている。その荒々しい模様から“嵐の石”とも呼ばれるという。文字盤には時分針とミニッツマーカー、ロゴのみの抑制されたデザインを採用し、ピーターサイトの気品を漂わせている。
天然石を文字盤に採用しながら、ケースは厚さ7.82mmに抑えた。ムーブメントには約90時間という長時間のパワーリザーブを実現したCal.A&S1001を搭載する。レッドゴールドケースモデルほか、ステンレススティールケースモデルも展開している。

STAFF
Writer: Katsumi Takahashi
Editor: Kyoko Seko
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